第53話 閑話 遭遇
【騎士団隊長】
ダンジョンというものは、なかなか興味深い。
普段は対人訓練を行っている我々からすれば、ここは闇底の異界。
冒険者という底辺職の荒くれものが、地上ではほぼ見ることのない、魔物という化け物と戦っている。
そして、魔物を倒すとなぜか宝物が顕現する。
それはコインであったり、魔石であったり、ナイフであったり。
話には聞いていたが、実際目の前で見ると驚くよりほかはない。
なぜ? 誰が? 何のために? このようなシステムを組んでいるのか。
ああ。答えは出ている。神だ。しかし、なぜこのようなことを神が行っているのか。
まあ、下々のものが王家に歯向かう鬱憤や不満、むだな体力やストレスをここで晴らしているのだとすれば、神に感謝をするべきであろう。
魔石は魔道具を動かす大事なエネルギー源でもあるしな。
今の王国では、魔道具なしには生活できなくなっているのだから。
【ヴィラ】
「ねえ、そろそろお弁当にしない?」
まだお昼にはならないけど、気楽な10階の調査。なによりこの間までは三食ルツィナのお弁当が食べられたのに、今はお昼のお弁当しか買えなくなったんだから。
ああ、はやく魅惑のお弁当が食べたい!
「まだ早いな。昼休みは12時~13時までと決まっている」
ああっ、騎士団はそうかもしれないけど! ダンジョンは休めるときに休むんです! 魔物は時間で休憩なんてさせてくれないんだから!
「ま、確かにまだはえーな。次のエリア調べてからでいいんじゃねーか」
氷剣のやつら~! あんたらもうこのミッションが終わったら、弁当買えないようにしてやる~!
こうなったらさっさと調査終わらせましょ。そして心行くまでお弁当を味わうのよ。
そう思ったとき、「うわ~! 助けてくれ~!」という、悲鳴が遠くから聞こえた。
【ボルク】
「ちっ、誰だ紛れ込んだやつ!」
そりゃ低層階じゃ物足りないのはわからなくもねえ。しかし、危険だからギルドが封鎖しているんだよ! 調査終われば入れるっていうのに!
俺たちは声がした方向へ急いだ。胸騒ぎが収まらねえ。ちょっと強い程度の魔物であればいいのだが。
通路の角を曲がって、広い草原のエリアに入った瞬間……。
遠くからでもわかるほどの、とんでもない魔物が目に飛び込んだ。
「……ボルク、あれ」
全員が魔物を見つめる中、シルルがつぶやいた。
「わかるか、バゥイ」
「わからないですね。ヤック、君は?」
「知らないな。しかし、ヤバいということだけはわかるよ」
氷剣にも情報なしか。騎士団は……役に立たねえな。
冒険者たちが、何とかしようとあがいているが……。無理だな。
見捨てるのは心苦しいが、俺たちが見つかる前にここから撤退するのが正解だ。
あんなヤツ、誰が倒せるっていうんだ。誰もいな……いや、赤いローブのルナ、ヤツなら! やはりここは撤退だ! ヤツに協力を求めて! まずはギルドに情報を届けないと!
「撤退、すぐにギルドに報告を!」 と言おうとした瞬間に、氷剣のやつらが飛び出して行った。
「待ってろ、加勢する!」
「立て! 逃げるぞ」
おいおい! どこまで正義感にあふれる熱血野郎どもだ! ちっ、今は合同での調査隊。見捨てるわけにはいかねえだろうが!
通路まで逃がせれば、あの巨体じゃ追いかけては来れないだろう。仕方ねえ、要救助者回収して戻るぞ!
絶望的な相手だ。みんな、倒さなくていい、命大事に。いくぞ!
俺はバゥイに指示をまかせ、救助者である冒険者のもとに駆けつけた。




