第50話 炊き込みご飯
とりあえず逃げられた。
無事にお家に着きました。
「あのままいたら、ずっとかぼちゃのおやつ作らせられたのかな」
想像したくないからっ! それに夕方には、心の友、え〜と……そう、シルルさんが来るからっ! おもてなしの準備しないと。
「そのために、朝から準備してただろ。ほら、新メニュー作るよ」
そうです。どうせなら、心の友と一緒に、まだ試していないルリのおすすめを食べたいと思ったのです。
お米は、吸水させています。そして、初めて使うシイタケの干物、ドンコと言うらしい……と、固くて大きい昆布を、少しだけ細く切ったものを水につけておいたのです。
「うん。ドンコはいい感じで戻っているね。ほら、水が透明な茶色になっているだろう。これが出汁だよ。お米をザルに上げて水切りして、鍋に移してこの出汁を張って」
いつもはそのまま炊くのですけど……。まあ、言われた通りにしましょう。
あれ? 少し少なくないですか?
「後で水を足して調整すればいいから。その前に味付けだね。味醂……がないから、砂糖一つまみ入れるか」
砂糖ですね。はい。
「塩一つまみ。しょうゆ、大さじ一杯」
入れました。
「じゃあ、水を入れて。いつもより少し多めがいいかな」
少し多め? どれくらいですか?
「カップ八割くらい。そう、そんな感じ」
柔らかくとかできるのですね。
「そうね。好みだから。ある程度は調整できるよ。まず、シイタケの軸を取って細かく切る。傘の部分はなるべく細く切り分けて、全て鍋に入れて。昆布も全部入れましょう」
えっ、混ぜて炊くのですか?
「そう。だから炊き込みご飯って言うの。まだまだいれるよ。ニンジン半分を細く短冊切りに。鳥肉の柔らかい所、ササミを茹でて、繊維を意識して細かく引きちぎって」
よくわからないですが、言われたまま、シイタケ、ニンジン、鳥肉、ジンジャー、タマネギを入れました。
「あとは普通に炊いたらいいから。おあげも欲しいけどないしな……」
おあげも? また不思議な言葉が……。大丈夫ですよね。まあ、失敗したらお肉焼いたらいいですし。
そうだ、スイートポテトも作っておこう。絶対に気にいるはず。
おイモを煮た時、なぜかサニーさんが現れました。
「ください。お願い……さっきのお菓子……」
えっ? 結構あげたよね。
「今日は来客あるから、来るなって言ったよね」
そうですよ。ルリ、言ってやってください。
「おいしかったの。おいしすぎて……」
「全部食べきったんだな」
「上司に取られた……」
ええっ? サニーさんの上司って……。
「横暴よ! そして、あちこちに配るから、もっともってこいって……」
え〜、作るのは問題ないけど、なんかやだな……。
「断る!」
「ええっ!」
よく言ってくれました。
サニーさん。サニーさんが食べる分なら差し上げてもいいけど、関係ない人の分は作る気ないの。
「えええっ! 天使の上司よ! 察して!」
あ〜……。でも、なんか、やだ。
「ビジネスライクに行こうか。ルツィナ」
ビジネス……。お弁当として? 売るのか。……それなら。
「じゃあ、あんたの上司に言いな。少しくらいなら売ってやるって。ただし、あたしたちが喜ぶもの限定。金なら使い切れないほどあるから現金以外で」
「何、その条件」
「問題ある?じゃあ、さらに上乗せ」
「え〜!」
ルリ、そんなに困らせなくても!
「サニーの労働環境改善。これも追加で!」
ルリがいい笑顔で親指を立てた。
「オッケー! 交渉してくるわ」
あっという間に、サニーさんは消えました。
ご飯、火を弱めて……。おイモを火から下ろして、今度はかぼちゃを蒸しますか。
細かく切って蒸せば早いよね。
◇
スイートパンプキンをこねていたら、サニーさんが帰ってきました。
「これ……これでいい? 頑張った……私やったよ」
私にビンを差し出しました。
なんですか、この薄い黄色がかった液体は……。
「これは! まさかっ」
「そう、あんたが日頃つぶやいているミリンよ! 欲しいんでしょ」
ルリがよくわからない歌を歌いながらくるくる回っています。そんなに嬉しいの?
「よしっ、よくやったサニー! 今作っているの食べてよし!」
あっ、勝手に! まあ、いいけど。
「んっ、なにこれ、さっきのと全然違う! 見た目似ているのに。おいしい〜!」
かぼちゃとさつまいも、材料が違うからね。
「で? どれくらい必要?」
「いくらでも! あればあるだけ欲しいって」
あっ、受けちゃダメなやつ。この間のお弁当100個みたいに、どんどん増えていく注文のやり方になるやつだ。
「毎日奉納すれば、ミリンは減っても補充するそうよ」
ルリ、どうする?
「そうだな。ミリンは切らしたくないし……。日替わりで一種類、15個を教会の祭壇に置くっていうのはどうかな。カナが作れるようになったら丸投げできそうだし」
15個なら大丈夫かな? 保存のギフト使えば作り置きしても大丈夫だし。神父様に頼んで毎日上げてもらえばいいだけよね。
「貴重なものだと言って押し通すわ。日替わりはいいアイデアね。あっ、もう少し食べていってもいい?」
もちろんです。じゃあスイートパンプキン包んで置きますね。
「明日の朝ご飯、期待しているからね〜! 今日の晩ご飯、私の分置いておいて。こっそり取りに来るから〜!」
包みを渡したら、慌ただしく消えてしまいました。
あっ、そろそろ来るかな。片付けないと。
レベルアップのおかげで、片付け早くなりました。
ドアをノックする音が聞こえます。
お片付け間に合いました。よかった。




