第47話 試されています!
固いかぼちゃは調理できなかった、ってカナは言っていた。
まあ基本的に、ハサミで調理していたのならそうなるのか。
だったら柔らかくなるまで、切ろうとしないのが正解だね。
寸胴鍋にかぼちゃを丸ごと4個、入るだけ入れて、一番底のかぼちゃが、半分ぐらい浸るように水を入れた。
フタをして蒸し煮をしましょう。
「蒸気が出たら、火を弱めます。じっくりと中まで火が通るように。空焚きに気をつけて。たまに水を足してもいいから」
料理の説明なら、つっかかることなく話せるみたい。
蒸気に甘い匂いが混ざってきた。
そろそろいいかな? 串を出してかぼちゃに刺した。
うん、柔らかくなったよ。
「刺してみて。ほら、中までスッと入るでしょ」
カナは驚いたように二度、三度と
刺した。
「鍋を火から下ろして、冷ましましょう。火傷しないようにね」
うん。蒸し煮は危険が少なそう。これはカナにやってもいいって許可を出してもいいかな。スープは作っていたみたいだし。
そんなことを考えていたら、神父様が私の名前を呼びました。
「ルツィナ様、こちらが食材を寄付してくださるディアマント様です。ディアマント様、こちらが孤児のために料理を教えてくださるルツィナ様です」
は、はあ。
「おや、あなたは……失礼、人違いをしました。私は、宝石商を営んでいるディアマントと申します」
「おっ、お弁当屋の、ルツィナ……で、す」
(バレて無さそうね)
そうだね。ああ、心臓に悪い……。
「ルツィナ様、豆以外に何をいただいたらよいのか、私にはわからないので相談してもよろしいですか?」
そっ、そうですね。神父様に任せたら大変な事になりそう。
「私も、料理は料理人に任せきりなので。孤児は豆を食べていれば大丈夫と伺ったものですから、まずは豆を送ったのですが、足りなければ仰ってください」
あっ、いい人っぽい。
(あたしと契約したからね。ひどい扱いだと思われて契約破棄されたくないんでしょ)
なるほど。カナは、何が欲しいのかな?
「カナ……何、欲しい?」
「わたくしですか? えっと……ミルク…、とお肉です」
ああ。ミルク煮作った時、大声あげていたよね。
「新鮮な、ミルク。毎日6リットル。お肉、何でも、いいから……1キロくらい」
「ミルクと肉。肉は何でもよろしいのかな?」
「安い鳥肉で……いい、です。根菜類を……常備できるように、定期的に、ください。葉物野菜も……あれば……嬉しい、です」
貰いすぎ? でも11人分だから。
「あっ、調味料も……。塩、砂糖は、欲しい……です。たまに、バターも」
胡椒はさすがに贅沢だよね。バターも高いから、なくてもいいけど。
「さすがに多いですね。ルツィナさん。あなたは、それでどんな料理を作ることができるのでしょう」
えっ?
「私は訳あって、こちらの孤児院に一定の金額分寄付を行わなければいけません。あなたの仰る程度の食材を与えることは、別に大した問題ではありません」
ですよね。
「しかし、経営者として申し上げますと、欲しいというだけで申されることに対し、精査もせず払い続けると、大概大きな失敗を呼び込みます。次々と思いつきで増えていく今の状況は、予算の食いつぶしを招き、贅沢に慣れた後にまた、貧乏な食事に戻る。そんな未来が見えるのです」
ああ、そうなるかも。
「ルツィナさん。あなたがどれだけの料理人か、確かめさせていただけませんか?
私にここで料理を振舞ってください。その出来によっては、そちらの要求を認めましょう」
ええっ!
(おっ、料理対決! ルツィナ、やっちゃいな)
う〜ん。確かに宝石商さんから見れば、貧乏な若い私は信用ないよね。料理……。時間もないし……。そうだ!
「わかり、ました。少しだけ、お待ち、ください」
蒸し煮にしたかぼちゃを四つに切って、種とわたを取り除く。
半分は一口大に切り分け、塩を振る。
1つ目はこれで完成。
残り半分は、皮を剥きボウルに入れて潰す。砂糖、ミルク、バター、はちみつを加え、三分の一は小さな丸い玉にする。
三分の一はレーズンを入れ丸く成形。
残りは裏ごしし、特製の薬草スパイスを混ぜて、出来上がり!
(スイートポテトならぬ、スイートパンプキン?)
いけると思う。味見するよ。
(おいしい! さつまいもとは違うけど、これはこれでいける!)
うん。お塩をかけただけでも、甘みが十分引き出せているホクホクのかぼちゃ。
蒸し煮だからこその、味の凝縮感がよい感じになったね。
さらに、ルリに聞いた、野菜をスイーツに変えるテクニックを使えば、大地の恵みを最大限に引き出す、絶品スイーツの完成です!
「おや、いい匂いがするね。何をやっているんだい?」
あっ、魔道具屋のおばあさん!
「おや、ルツィナ、何か作っているのか?」
ギルド長まで! なんで?
「おや、ギルド長。昨日はどうも。それに魔道具屋のご長老。外で会うとは珍しい。お元気でしたか」
「あたしゃ、相変わらずだよ。あんたのとこの客が昨日来てな。まあ、そいつは後で話そう。それよりなんだい? この良さげな匂いは」
「ルツィナの料理の試食会? 私も参加してよいか?」
ああっ、なんか大ごとになりそうです。




