第45話 頼まれごと
「料理を教えてあげてほしい」
神父様からも、料理を教えてほしいと頼まれてしまいました。
(ほれほれ、こんなに頼まれたら断われないでしょ)
そんなことない! 絶対に断りますよ!
(じゃあそう言ったらいいじゃん)
そ……そうだよね……
「あの……わたし……」
「まずは、これを召し上がっていただきたい。今朝の食事です」
はあ。スープすっかり冷めていますが……。
うっ!
(まっずい! どうしたらこんなことに?)
薄い豆のスープ。お肉がないから、ラードぶち込んだね。ちょっとでも冷めると殺人級の不味さ。脂ベトベトに固まっているし。温かくても……多分ダメなやつだ。
「これでもいつもより贅沢なスープなのですが……。とりあえずということで、宝石商のディアマント様からのご寄付の豆が届きましたので、少し多めに入っているのです」
(豆しか寄越してないのか、あの店主)
ルリが怒ってますが、しかたないです。
「他の……食材は?」
「は? 他の食材?」
「そうです。野菜とか、……お肉とか」
「ええと……とりあえず豆さえあれば栄養は取れますし、朝はずっと豆のスープを食べておりますので、私からお願いしたのですが。保存が効く豆がありがたいと」
(お前のせいかよ〜!)
ダメね。このままじゃ、永遠にこの食事が続きそう。
「昨日、ルツィナ様が与えてくださった食事のせいか、今日は子供たちがほとんど食べず」
でしょうね!
「カナが、『わたくし、ルツィナ様から料理を習わないといけませんわ!』と。『これこそが神の指し示してくださった、わたくしへの試練なのです』と、何か啓示でも受けたような盛り上がりを見せまして……」
(わからなくもないね。このスープじゃ……)
そうですね……。
「ですから、ぜひ、カナに料理を教えていただきたいのです!」
(断らないよね)
う〜、あ〜、もうっ! 断られるわけないじゃない。断ったら人でなしになるよ〜!
「わかり……まし、た。でも……」
「でも?」
「教えるにも、準備、が、あります。しばらく、は、見学、してもらう……で、いい、ですか?」
は〜。今はこれが精一杯。
「ありがたい! ありがとうございますルツィナ様。カナ、入って来なさい」
ドアがバタンと開きました。
「なんでしょうか、神父様」
「ルツィナ様が了解してくれた。料理を習える。しばらくは見学からだそうだが」
「本当ですか!」
って近い! 手を握らないで〜!
「ありがとうございます、天使様!」
天使様はやめて〜!
「では見学から始めさせていただきます。わたくし、天使様の隣から離れないようにいたしますので。よろしくお願いします!」
……ううう〜! 無理っ!
「あの……手、離して」
「ええっ!」
「料理、できない、から」
ああ。やっと離してくれた。
はあ。今日もチャチャっと作って逃げたいです。




