博士とは
「まっっっったく話が見えてこないんだけど???」
「きみは博士の関係者ではないのか?」
「うん、まず『博士』って誰?」
「博士とはぼくが所属している…いや、していただな。所属していた組織で雇われていた科学者だ」
「クソマッドだぞ」
「ゴミ野郎だ!」
「飴と鞭の使い分けができる分、タチが悪ぃんだよ」
「正直、死んだ方が良い!!」
バケモノと男が交互に罵倒する。共通認識のような口振りに疎外感を抱いた少年はイラッとした。
「それで?その組織ってのは?」
「良くある裏組織だ。違法な武器や薬物、人身売買、禁術の研究・行使とやりたい放題だった。前は東の地域を拠点としていたのだが…ある事件で壊滅してな。残党が今はこちらで活動している」
「事件って…?」
何だか、嫌な予感がした。
「ぼくも詳しくはないが…どうやら、その博士が造った悪魔が暴走したらしい」
「悪魔を…造る…?」
「そうだ、博士は悪魔製造の第一人者だ。…とは言っても、あのような狂ったことをしているのは彼くらいなものだから、言い難いがな」
「あーっと、少し良い?」
「?あぁ…?構わない」
「良し、じゃあちょっとこっち来て」
話を中断させた少年がバケモノを手招き、耳打ちする。
「──もしかしてさぁ、アンタ、その博士に造られた悪魔だったりする?」
「ア?言ってなかったか?」
「バーーーーーーーーーーーカッッッッ!!!!!!!!」
バケモノの耳元で少年が叫んだ。仮にも記憶を取り戻す手伝いをしてやってるのに、何故報告しないのか。少年は激怒した。唐突な爆音にも少しびっくりした程度の反応をするのも少年の怒りを増させる。『聖水』を投げつけるのはかろうじて堪えた。
むしろ男の方が驚いているまである。話を切ったことと急に声を上げたことの謝罪をした後、話を促した。
「本題に入ろう。ぼくはパッシ!『魔法使い』だ!かの組織で奴隷にされ、使い潰されそうになったところを命からがら逃げてきた。でも、無事に逃げ切れたとは思えない。自分で言うのも何だが、ぼくの利用価値は高い。追手を撒き続けるのにも限界がある。そこで、組織を潰すのに協力してほしい!」
「そこまで僕らを信頼する理由は?」
「博士の造った悪魔憑きを倒せているからだ!あれは博士曰く失敗作らしいが、強さで言えば十分に兵器として運用できる。組織は悪魔憑きを多く保有し、他にも様々な技術者や魔法使いを抱えている!対抗するためには、悪魔憑きを容易く倒してみせたきみたちの力が必要だ!!」
「そこまで買ってくれてるとはね……あのさぁ、何も言わずにこれ被ってくれない?そしたら協力してあげるよ」
少年がそう言って手渡したのは『聖水』だった。
「あぁ、確認か。もちろん、良いとも!」
心得たように『聖水』を頭から掛け、水滴を素手で払って見せた。
「これでどうかな?」
「…うん、特に妙なこともしてないっぽいし、本当に人間みたいだね。分かった、それなら断る理由はないよ。協力しよう」
「ありがたい、よろしく頼むよ!」
少年とパッシは握手を交わし、作戦に協力することとなった。
魔法が使えるのは悪魔と魔法使いだけなので、警戒心の強い聖職者との間では、初手チェックは常識
魔法使いは魔法が使えることからよく悪魔と混同されて迫害される。社会的地位が低いから、非合法組織の奴隷にされたり、犯罪者になったりする。そして魔法使いそのもののイメージが悪くなり、社会での肩身が狭くなり、居場所がなくなって──以下、無限ループ…




