悪魔憑き
「大分汚れてるけど…格好と袋の中身的に盗賊かな?」
少年は血で真っ赤に染まった服の切れ端とやけに重い袋を持ち上げた。
貧相な見た目に反して、革袋の中には宝石類が詰まっていた。略奪で得た物だろう。爆散して跡形もない死体からかろうじて形が残っている死体を見つけ出し、そう判断した。
「もう少し綺麗に殺せないの?」
「必要か?」
「いやまぁ、別にいいけど………ッ!?」
死体に近づいていた少年が異変に気づく。
(何か…動いてる…?)
「ヴァアアアア!!!」
「ハァ!?」
死体が跳ね起き、少年に飛び掛かる──より先に『聖水』を叩きつけた。
「ア゛ア゛アアァァ゛──」
「クソッ!悪魔憑きか…!?だとしても…ああもう!とりあえず、転がってるの全部に掛けるしか…!」
バケモノに散らばった肉や砕けた骨を集めさせて、『聖水』を掛け、血が染み込んだ土にも撒いた。
「こんなにする必要があるのか?」
「あるよ!!!悪魔憑きはほんっっっとにしつこいんだから!!!人だけじゃなくて物にも憑くから、殺しても血の一滴まで浄化しないといけないし!!!!放置してると土地そのものが不浄になって、悪魔が湧きやすくなるんだよ!!!!」
先ほどとは比べ物にならない勢いで熱弁する少年。盗賊の様子は村で迫害されていたとき、村人が悪魔憑きになったことが思い出された。あるとき、いつもの悪意ではなく理性を失ったような狂気を感じて『聖水』を掛けると、その村人が苦しみ出したのだ。
悪魔憑きとは肉体を持たない悪魔や精神を自在に操る悪魔が、何かに取り憑くことを指す。知性のある悪魔であれば体を乗っ取られるような感じだが、ほとんどが知性はなく、ただ暴れ回るだけの存在と化す。
そして、厄介なのは肉体に依らない存在であるが故の不滅性である。少年が言った通り、取り憑く先を変えた可能性を考え、周囲の全てを浄化しなければならない。家で悪魔憑きが現れれば、その家を『聖水』で浸せと言われるほどだ。
件の村人の際も憑いた悪魔から大義名分の元、存分に苦しめることができたので胸は空いたが、疲労が凄まじかったため何度も経験したい物ではなかった。
「──ってこと、分かった?」
「……」
「ちょっと聞いてる?」
「──俺、これ知ってる」
「…何が??この盗賊?悪魔憑きのこと?」
「こいつら、失敗作だ」
「……………ハ?」
おや…?バケモノの様子が……?




