マクアの正体
「クソッ!クソがッッ!舐めんじゃねェ!!」
カーサルがそう喚いても、二人は手加減を止めない。
カーサルとて理解しているのだ。バケモノと少年は自分を容易く殺し得ると。
だからこそ、手を抜かれ、生かされているというこの状況はカーサルの矜持を酷く傷付けた。
ましてや、カーサルは二人が律儀に依頼主の言葉を守っているだけであることを知らない。目的も分からない延命はただの恐怖だった。
しかし、その恐怖は呆気なく終わる。
「お二方!もう大丈夫です!替わります!!」
見ると、そこにはコミを助け出したマクアがいた。
ぐったりとしているが意識はあるコミを壁に凭れかからせたマクアは、カーサルをキッと睨む。
「俺が嫌いなら、俺だけ狙えば良いじゃないか!!コミを傷付けるなんて……もう許さない!!」
「一度だって許さなくて良かった!!そういう自己犠牲精神、昔っから俺ァ反吐が出たぜ!!」
そのとき、バサッと何かが羽ばたいた。
マクアだった。
マクアが漆黒の羽を広げて、空を飛んでいた。
「アーアー気持ち悪ィ!生まれながらにしてヒト型の異形が!!テメェの両親も気味悪がってすぐに捨てたってなァ?」
「どれだけ煽ったって無駄だよ。もう、君たちのことを同族なんて思わない……!俺を愛してくれたのはコミだけだ!!俺は人として生きていく!!!」
マクアの手の平に浮かぶ火の玉を見た途端、カーサルに緊張が走る。
(あれは駄目だ。今までも駄目だった!なら、消耗してる今食らえば──クソッ!)
咄嗟に逃げようとしたカーサルをバケモノが弾き、マクアの前まで飛ばす。
大きさとしてはさほどない火の玉をマクアが放った。
「ざけんな──!ァ──」
火の玉がカーサルに触れると、全身が燃え上がる。轟々と勢い良く燃える。
燃えて、燃え尽きて、後には灰が残った。
カーサルは完全に滅された。
マクアは人間に黒い羽が付いただけの悪魔。悪魔目線からしたらマクアが異形。だから悪魔から迫害されてた。その末に心優しいコミに出会って愛を知り、人間と生活することになった。幸い、マクアは悪食で人の料理を美味しく感じるタイプだったから人として生きるのに苦はなかった




