人はそれをバカ真面目と言う
埃っぽい廃墟に黒髪の可愛らしい女性が吊るされていた。
両手足を縛られ、下には鍋がグツグツと煮たっている。熱気に晒されているためか汗をダラダラと垂らしており、身体中の傷口から流れ出る血と混ざる。苦痛から身を捩り、荒い息を漏らした。
「コミ!!」
悲痛な叫びを上げたマクアの顔は青ざめ、コミに駆け寄ろうとする。
「来てはダメ!」
しかし、それ以上の悲痛な叫びがマクアの動きを止める。
そして、マクアが駆け寄ろうとしたちょうどその床部分を何者かが抉った。
半球のようなクレーターができ、立派であっただろう大理石の破片が飛び散る。
何者かなど、分かりきっている。
「カーサル──!!」
「久しぶりじゃねェかァ!!ハミダシモンがよォ!!!」
「御託はいい!コミを解放しろ!!!」
「ハ?ヤダ」
「ふざけるなっ!!」
「アァ?約束破って一人で来なかったのはテメェだろォ?」
「何が約束だ……!彼女をこんなにも痛め付けていたくせに……!!」
「ギャハハハハッ!!どうせ互いに約束なんざ守ると思っちゃいねェんだ!!そっちこそ、御託はイイから殺り合おうぜェ……!!」
「クッ──!すみません!カーサルの足止めをお願いします!」
マクアがコミの方へ今度こそ駆け出す。それを防ごうとカーサルは雷の槍を生み出すが、横から複数の氷の大剣が襲いかかる。範囲が広く、大きく飛んで避けざるを得なかった。
そこからはバケモノとカーサルの魔法勝負となった。
火を、水を、風を、土をぶつけ合い、所構わず破壊していく。もちろん、バケモノは依頼主に攻撃がいかないよう配慮している。
「彼は悪食じゃなくて一般的な悪魔かな。人間食べようとしてるし」
「あれ、食おうとしてるんじゃなくて普通に拷問目的だろ」
「そう?悪魔は人間を湯がいて食べるのが常識って本に書いてあったけど」
「どこの常識だよ。……人間かぁ…別に旨くもないし不味くもないんだよなぁ……」
「食べたことあるの?」
「ア??あぁ…どうだったっけ……?」
「アンタ、前々から思ってたけど、都合の悪いことを誤魔化してるだけなんじゃないよね??」
戦いながら軽口を叩き合う二人。何故こんなにも余裕なのか。
それは実力の差が圧倒的だからである。
バケモノの魔法はカーサルを翻弄しきっているし、火力もスピードもバケモノが上。さらには少年が試しに投げた『聖水』はカーサルの腕を完全に消したのだ。
ならば何故殺さないのか。それは依頼主が「足止め」を頼んだから。
少年は依頼主が依頼している以上、それに遵守しなければならない。
バケモノは少年を手伝う以上、少年が手加減すると決めたらそれに従わなければならない。
変なところで真面目な二人だった。
少年は悪魔絶対殺すマンだけど、自分の手で殺したいわけじゃない。結果的に悪魔が死んでれば良いって思ってる。バケモノに頼ったのもその考え。今回は依頼主がブチギレてて自分の手で殺したいんだろうなーって思ったから譲ってあげてる。生け捕りにしろって依頼だったら多分受けてない
「バケモノに防戦ってできるの!?」と思ったそこのあなたはバケモノを舐めすぎなので反省してください。バケモノは普段脳筋でお菓子が絡むと脳が溶けるだけで、バカってわけじゃないです。それが致命的?それはそう




