依頼
磯の香りが鼻を掠める。潮風が髪を揺らす。
「港町とは言ってたけど…貿易港とはね」
二人は活気ある港に辿り着いた。人が多く行き交い、船から荷下ろし作業をする者やその場で交渉を始めている者もいる。
「もしかしてさぁ…アンタって海の向こうから来た?」
「それはねぇだろ。俺、空飛べねーし、泳いで来たなら騒ぎになってるはずだし」
「何でアンタのことなのに推測じみてるのさ」
記憶がないので当たり前だが、それでも少年は愚痴らずにはいられなかった。
「確かに、聞いてみてもアンタの目撃情報はなかったけどね」
バケモノ自身の記憶が宛にならないため、町に着く度聞き込みをしている少年。しかし、この辺りでは噂程度すら流れていないようだった。
「まぁ、消費したものの買い出しもしたいし、しばらく滞在しようか」
「お菓子を所望する」
「ハイハイ、分かってるよ」
バケモノは何でも食べることができる悪食だが、美味しいものを美味しいと感じる味覚はある。特に菓子には目がないようで、それを餌に言うことを聞かせることもできるのだ。
「宿は…手掛かりはなさそうだし、一泊くらいで良いかな。あの町じゃ結局休めなかったし、今度こそベッドで寝たい」
「体力ねぇな」
「あく…化け物と一緒にしないでくれる?」
人混みの中であるため「悪魔」という表現は避けた。町中に悪魔を入れるのは重罪であり、場合によっては死刑もあり得る。
「あの…」
おずおずとした青年に声を掛けられる。気配はなかった。先ほどの会話で何か感ずかれたかと少年は身構える。それにしては、一般人のような風体だが……
「エクソシストの方ですよね……?」
少年はさらに警戒を強めた。前の町の悪評がこの町にまで届いたのだろうか。であれば、自分たちを逃がした衛兵のエリアは捕えられたのだろうか。そこまで考えを巡らせた。
しかし、青年の口から飛び出したのは、ある種拍子抜けする内容だった。
「お願いです……!悪魔に連れ去られた俺の恋人を助けてください……!!」
悪魔は基本、人間が主食。その中で何でも食べる悪食とか、人間の作る料理が好きな変わり者がいる。悪食でも木とか土とか自然のものが好きだったり、魂とか魔力とかの概念的なものが好きだったり好みが分かれてる。『聖水』グビグビ飲むやつもいる。そんなんがいるせいで悪食は大体やべーやつ扱いされる




