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初めての街巡り(中編)


ヨシムネは都市の北東から出させて貰った事が無かった。


それも裏通りや人が多すぎる場所には行かせて貰えなかった。


(それ程この世界は危険なのか??)


メイドのキャロラインに手を引かれ、まずは貴族と一部の富裕な商人が暮らすエリアを彼女の案内で隈無く探索する事になった。


彼女は今までに無いほど張り切った表情をしている。


(家事もそれくらい毎日張り切ってくれればなぁ)


ヨシムネは今まで見た事があるエリアから2区画ぐらい奥へ入った。


「ヨシムネ様。ここは高級肉料理の専門店で、ご主人様や奥様が偶に仕事でご利用になられます」


「せったい用?」


「はい。まだ小さいのに『接待』なんて言葉よく知ってますね…私が5歳の頃は美味しい物を食べる事で頭が一杯でしたよ」


キャロラインが少し驚いた表情をする。


「家庭教師からおそわったんだ」


(まあその言葉は元から知ってたけど…)


「…私もこれから家庭教師との授業に同席しても宜しいでしょうか?」


「良いけど…途中で寝ないって約束出来る?」


「すいません。出来ないですね。多分20分ぐらいで寝ちゃいます。ハイ」


彼女は頭を掻きながら恥ずかしそうに呟いた。


「それで次は何処を見て回る?キャロ?」


「装飾品市場へ行きましょう!今日は首都から商人達がやってきて、広場で金持ち相手に出店を開いて居る筈です!」


「…まさか最初からこれに行きたかった?」


「いいえ(キッパリ)」


「本当の所は?」


「アクセサリーが見たかったです…」


「最初からそう言えば良いのに」


「その……雇用主の息子ですからあんまり我儘言うのもアレかな…って」


「やっぱりメイドが好き勝手に主人を連れ回すのは…ダメですかね…」


彼女は苦笑いし、俯きながら手汗をエプロンで拭いた。


「今すぐ行こう」


「えっ」


彼女は面食らった表情になる。


「キャロはいつもメイドの仕事頑張ってるし、こう言う時ぐらいパーッと行かないと!」


「…はい!その言葉で元気百倍です!」


そう叫ぶなり、彼女は笑顔になり、ヨシムネを脇に抱えて市場の方へ駆けだした。


「わっ!ちょっ、キャロ!」


「しっかり掴まってて下さいよ!ショートカットします!」


「えっ?何?ショートカットって何!?」


「とぅぉりやぁーっ!!」


彼女は大きくジャンプして屋敷の塀に飛び移ると、さらに屋根へ飛び移って屋根の上を走り出した。


「とおっ!」


「うりゃ!」


彼女は次々と屋根を飛び移って行く。


(まるでヒーローアクション映画みたいだ!)


(それにしても…凄い身体能力だ。鬼族のハーフだって言ってたけど、ハーフでこれなら純血だと一体どうなるんだろう…)


(鬼族に喧嘩売るのはやめとこ)


「最後っ!」


キャロラインはそう叫ぶなり、低い建物の上に飛び移って屋上から飛び降りた。


「着地…成功です!(キラッ)」


ヨシムネは脇から降ろされ、辺りを見回した。


身なりの良い商人と高貴な生まれらしき人々の活気で溢れていた。


噴水の辺りにはシャキッとした、強そうな衛兵が広場に対して目を光らせている。


銀細工や金細工を並べている商人が声を張り上げ、女商人が真珠のネックレスを貴婦人へ懸命に勧めている。


「…すごい活気だね、キャロ」


「ええ。また来たかったんです。こういう明るい活気が何よりも好きなんです」


「高そうなお皿とか家具も売ってるね」


「はい。奥様は偶にこの場所へ来られていました」


「母さんが?」


「ええ。毎回では無いですが私も連れて来られて…それでここが好きになりました」


「そうだったんだ…」


「とても高くて手が出ない物が多いですけど…見るだけならって」


「何か買いに行こう。折角だから、いつも頑張ってくれているキャロに何かプレゼントしたい」


ヨシムネはキャロラインのメイド服の裾を引っ張った。


「えっ?良いんですか!?いいーんですか!?私タダのしがないメイドですよ!?」


「良いんだ」


「ヨシムネ様…」


キャロラインは涙ぐむ。


「ありがとうございます。このご恩と借りは一生忘れません」


彼女はヨシムネに対して深々とお辞儀をする。


そして服の裾で涙を拭った。


「さ!見に行こう!早くしないと日が暮れちゃうよ」


ヨシムネが感極まっている彼女に声を掛け、手を差し出す。


「…はい!」


キャロラインはヨシムネの小さい手を優しく握った。


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