そうだ!海外へ行こう!
「アイツ…遅いわね…」
アマネはコーヒーを砂糖でドロドロになるまで溶かしながら、呟いた。
「一体ナニしてんのかしら…」
その時、ヨシムネと2人の巨乳が身体から湯気を出しながらやってきた。
(うわ…2人ともえげつないスタイル…)
「ごめん!待った!?」
「まーちーました!」
アマネはヨシムネに近づき、彼の鼻額を指で突く。
「まったく良いご身分だこと…」
「ははは。申し訳なかったね」
「…次からは気を付けてね」
アマネはヨシムネから目を逸らしながら呟いた。
「わかった。ありがとう」
「…んもう、そう言われたら受け入れるしかないじゃない…」
アマネは薄い茶色の毛先をクルクルさせながら、恥ずかしそうに返答した。
「おやおやおや…」
アナトがヨシムネの後ろから彼女に顔を近づけた。
「えっ!?な、なにか…」
「幼いけど…良い筋肉してますねぇ~…」
「ちょっとこれを」
そう言ってアナトはアマネに何かを投げる。
アマネは難なくソレをキャッチする。
「加速石をこの距離でこうも簡単にキャッチするなんて…この娘スゴいよ」
アナトは感心したように頷いた。
「鬼族だってこの年齢でここまでの身体能力を持っている子は少ない…」
「貴女、本当にヒューマンですか?」
アナトが首を傾げた。
「…多分ソレは私の《スキル》が関係しているのかも…」
アマネがふと思い出したように返答した。
「それはどう言った?」
アナトが更に食いつく。
「《ばんにんてき》?って言う訳が分からないスキルなんだけど…鑑定不能って聞いたわ」
「鑑定不能って聞いておかあさんは心底ガッカリした表情をわたしに向けたらしいの…」
アマネの表情が僅かに暗くなった。
「ガッカリ!?とんでもない!!それは鑑定士の腕が悪いかヤブですよ!!」
アナトが乳をバルンと揺らしながら興奮し始めた。
「かつて中央大陸を20代後半で制覇した伝説の竜人が持っていたスキルです!!」
「その竜人が打ち立てた国は僅か数年にして滅んだ為、記録にはあまり残されていませんが…」
「アマネさんには紛れもなく、覇王の素質があります!」
「はっ、はおう~!?」
アマネはビックリして、後ずさりした。
すかさず、ヨシムネはアナトに質問する。
「先生!なぜ《万人敵》というスキルはそこまで知られていないのでしょうか?」
「…単純な事です。そのスキルを恐れた時の権力者達が、そのスキルを持つ者を探し出しては殺していたからです」
「…!」
「そんな事をやっている内に長い時が流れ…何時しか忘れ去られた、という訳です」
「…そこまで脅威だったのですか?」
「ええ。今中央大陸の遺跡からは当時の状況を裏付ける文書が、大量に発掘されています」
「当然、魔導考古学者によって《万人敵》というスキルの内容も明らかになりつつあります」
「…その内容って?」
ヨシムネは食い入るようにアナトの口元を見つめた。
「カンタンに言うと…『どんな相手にでも勝てる』。そういうスキルです」
「アマネさん」
「はっ、はい…」
「くれぐれもヨシムネ様やキャロラインさんと喧嘩だけはしないでください」
「えっ!?」
「戦えば必ず勝ちます。だけど、それは相手の犠牲をも伴う物です」
「ぎせい…」
「はい。中央大陸を統一したその竜人の覇王は戦い続けたが故に周りから誰も居なくなり…最後は自殺しました」
「そんな…」
「でも、貴女なら大丈夫です。すでにヨシムネ様やキャロラインさんが居ますから」
「…わたしは大丈夫…?」
「はい。貴女は敵を倒すのでは無く、友達や仲間を護る事を考えて下さい」
「まもる…」
「そうです。貴女の能力は最強の矛であると同時に最強の盾なのですから」
アナトは優しくアマネに語り掛けていく。
「盾…わたしは盾…」
アマネは自分に言い聞かせていく。
「貴女はとても素直で純粋で良い子なのですから」
アマネは少し涙ぐむ。
「大丈夫だよ、アマネ。もう僕たちは友達だろ?」
「ね?キャロライン?」
「はい!アマネはもう大事な友達です!」
「みんな…」
「…そこでアマネさんに1つ提案があります」
「?」
「一緒に旅行へ行きませんか?」
「旅行?」
「ええ。だけどタダの旅行ではありません。学ぶ為の旅です」
「学ぶため…?」
「はい。これから各地を旅する予定ですが…その中にはスキルの制御に関する専門家の所へ行ったり、古文書を保存している図書館へ行ったりもします」
「アマネさんがより良く生きる為のヒントが見つかるかもしれません」
「ヒント、ですか?」
「ええ。貴女は今の環境でずっと過ごしたいですか…?」
アマネはうつむく。
「…正直に言うと…今家にダレもいないの…」
「おかあさんは偶に帰ってくるけど、わたしとは話をしようともしないし…」
「…」
「だから、行きます。自分の未来をかえられるなら…旅にさんかしたいです」
「…良く分かりました。一緒に行きましょう」
「少々計画の変更はありますが、それも旅の醍醐味。楽しくなりそうです」
アナトはアマネに対してニッコリと笑いかけた。
「さ、準備を始めましょう。時は金なりです!」
ヨシムネとキャロラインはアナトの言葉に頷く。
「うん。そうだね。なんだかにぎやかな旅になりそうだ」
「はい…!私も楽しみです…!」
アマネは涙を拭きながら、満面の笑顔を見せた。




