目指せ未来のパイオニア!
良い教え子(実験対象)が出てきたら、こねくり回したくなるのが教師(研究者)だからしょうがない。
自分も巨乳の家庭教師とメイドに教育して貰いたかったよ…
2週間後、目に隈を作ったアナトが、ヨシムネの部屋のドアを勢いよく開けた。
ヨシムネは驚いて茶を溢してしまい、溢れた茶をキャロラインが丁寧に拭いた。
「学習計画が出来ました!!」
アナトはハイテンションで完成報告をした。
「出来たんですか!?」
「ええ!出来ちゃいました!」
(出来ちゃったって一体どんな計画が出来上がったんだろう…)
「ぱっぱかぱーん!では計画を発表しまーす!拍手!」
ヨシムネとキャロラインはベッドに座りながら小さく拍手した。
「もっと大きく!」
アナトに促され、二人はわざとらしいまでに大きく拍手した。
「では1年目!」
「最初の半年は基礎教養をみっちり詰め込みます!これは今までの延長ですね」
「ですが、1ヶ月に2回は別の街へ社会見学に行きます!船も使いますよ!」
「ヨシムネ君は乗った事ありますか?」
「いえ、まだです。先生」
「ふふーん楽しいですよ、船は!ねぇキャロラインさん!」
「ええ…まあ…その…はい」
キャロラインは浮かない表情をする。
「…もしかして船にイヤな思い出が…?」
アナトがキャロラインに迫る。
「前、嵐に遭って大変な思いをしたので…」
「嵐!?上等じゃないですか!」
アナトはそのデカい胸を張った。
「嵐の時が一番船の事を学べるんですよ。ただ乗るだけだったら湖にボートでも浮かべてれば良いんです!」
(スゴい事言い出したぞ…)
「1~2年目は王国の各地を回って見たいと思います!」
「3年目からは一体どうなるんですか?先生」
「フフフ…よくぞ聞いてくれました…」
(あっ)
「海外ですよ!私が生まれたロイユブルグにも連れて行ってあげますよ!」
「えーっと…確か…聖都と呼ばれている所ですよね?」
「ええ!この世界最初の銀行が生まれた場所でもあります!」
「正直そういうのとは縁遠そうな場所だと思ってたんですけど…」
「ヨシムネ君はまだまだ子供ですねぇ。そういう場所だから生まれたんですよ」
「不思議だなぁ…スゴく気になる…」
「気になりますか~?」
「気になります!」
「それは後のお楽しみで!」
ヨシムネはガクッとした。
「無論、学問の講義や基礎・応用の練習は並行でやっていく積もりです!」
「船上で気象学の講義をするって最高に粋だと思いませんか!?」
「先生大分この国に毒されてますね」
「ははは!わかります?」
「わかりますよ。「粋」はこの国の首都で生まれた概念なんですから」
「キャロラインはその辺り先生や自分よりも分かってるよね」
「はい。祭り囃子が今も目に浮かぶようです…!」
「実験や魔導の練習もガンガンやって行きますよ!」
「先生は1級魔導技士の資格持っているんでしたっけ…?」
「はい!国際資格なんで何処に行っても通用します!」
「過去にエクサルミディオンに留学しててその時取った奴ですね。資格は食べていくには一番効率の良い手段ですよ?」
「…て事は資格に挑戦とか…?」
「うーん…それは5年目ですね。丁度その頃に契約更改なんで」
「ま!先の話です!まずは基礎!これが無いとどうしようも無いですから」
「それとキャロラインさんに頼みたい事があるんです」
「私にですか…?」
「はい。貴女は軍隊で格闘や護身の訓練を受けていましたよね?後はサバイバルや応急処置の方法とか」
「は、はい!ですが、それが何の役に…?」
「滅茶苦茶立ちますよ!貴女の知っている技能や知識をヨシムネ君に教え込んであげて下さい!」
「はい…!優しく教えますから!期待してて下さいね!ヨシムネ様!」
キャロラインは嬉しそうに鼻を鳴らしている。
(一体どうなってしまうんだ僕)
「さ!大まかな説明はこれで良し!早速今日の講義を始めますよ!」
「今日の講義は何ですか…?」
ヨシムネが恐る恐るアナトに質問する。
「数学です!数字は万物を弄くる為の便利な道具なんですよ」
「だから今日はベクトルについて説明します!」
「あの矢印みたいなヤツですか?」
「さては…ヨシムネ君…自主的に勉強してますね?」
「まあ…はい」
「えらい!君より10歳年上でも理解出来ない人は出来ませんから」
「…そんな難しい話なんですか?」
「いいえ。基礎教養の差がそれを引き起こしているんです」
「本来なら誰にでも分かりやすく、学問の体系化と教育及び普及を図るべきなんですがね…」
「引き算すらロクに出来ない大人が多いですから。嘆かわしい事です」
「…そこまで教育レベルの差って酷いんですか?」
「残念ながら。自分の名前と住所と生年月日が書けるって事すら結構な事なんですからね?」
「例えば、このイェン王国だと識字率は75%以上!これは世界トップクラスの数字です!」
(だから余り実感出来なかったんだろうか…)
「エクサルミディオンだけは例外的に95%以上です。というかそうでなければあの都市でまともな職業には就けませんから」
「一方大国の1つであるダラン帝国は識字率45%程度ですよ?」
「なのに経済的覇権に王手を掛けています。何故でしょうか?時間を取りますから、よーく考えてみて下さい」
「う~ん…」
ヨシムネは顎に手を当てて考え始めた。
(教育制度が貧弱…?いや、エリートはすごい優秀だって聞いた。教育機関が無償では無いから…?)
(いや…家庭教育もあるし、それは1つの原因ではあるけど最大の理由ではない気がする…)
(識字率…母国語…あっ!)
アナトは何か思い付いた様子のヨシムネを見て、更に笑顔になった。
「ダラン語を母国語としない移民の割合が、社会全体おいて高いから…?」
「何故なら、大量の移民を取り入れる事で国の経済を活発化させる方針を採っているから…?」
「ピンポーン!正解です!ヨシムネ君!」
アナトは軽く拍手をした。
「これは統計的なマジックですね。統計は事実の集合を表した物ですが、その《背景》までは教えてくれません」
「これを読み取り意味を見い出すのが《学問》なんです。楽しいでしょう?」
「はい!楽しいです!」
「ではウォーミングアップも終わった所で早速授業に入りましょう!」
「はい!先生!」
「よろしい!では…」
アナトは嬉しそうに魔導電光板を取り出し、講義を始めた。
アナト先生はアマネの母と同等かそれ以上の学術的エリートです
教育者としては圧倒的にアナト先生が上ですが
そんな人物を引っ張ってこられるのは流石商会の主でしょうか




