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第二十三話

 映画館の席へと座ると、さっきの続きがスクリーンに映し出される。

 主人公はずっと部屋の中に閉じこもり、腐敗していく母親をただ眺めていた。

 


 食事もとらず水も口にしていない……

 大丈夫なわけないけど、ここからどうやってこの小さな主人公が生き延びていくのかしら……



 シーンが移り変わり、数日後、小さな部屋へ訪問者が現れた。

 無精髭を生やしただらしのない服装の男が二人。



 「すげえ匂いだ。

  ああ、首を吊っちまったか」

 「しょうがねえよ、あのお得意さん。

  すぐにぶっ潰しちまうからな」



 「まあ、金払いがいいから文句はねえ……ん?

  なんかガキがいるぞ?」

 「そう言えば仕事を探している時にガキを連れてたって聞いてたな。

  ガリガリだが母親似で肉つけりゃあそこそこ売れるんじゃねえのか?」



 「珍しい髪色だ。

  銀髪にそして赤い目か……いいじゃねえか。

  物好き達から人気がありそうだ」

 「立てるかガキ?

  駄目だ、反応がねえ死んじまってんじゃないだろうな?」



 「いや、生きている。

  担いで運んじまおうぜ」



 ≪奪うつもり?≫



 「お? このガキなんか言わなかったか?」

 「ちゃんと飯は食わせてやるから大人しくしとけよ」



 ≪なんの権限を持っている?≫

 ≪何故物のように扱われている?≫

 ≪母親は奪われた≫

 ≪誰に?≫

 ≪世界がそうした≫



 何かしら……

 スクリーンにはずっとノイズがはしっている。

 主人公の心の声……

 ≪怖い≫≪恐ろしい≫≪怖い≫≪恐怖≫≪怖い≫≪絶望≫≪怖い≫≪呪い≫≪怖い≫



 画面全体が恐怖の言葉満たされていく。

 嫌な事が起きるわ。

 きっとそう。

 私は胸を押さえながらスクリーンから目を反らさずに直視する。



 ≪扉≫

 ≪開いてはいけない扉≫

 ≪誰も望まない≫

 ≪自分自身ですら望んでいない≫

 ≪それでも……世界が変わるには……≫

 ≪扉は開かれた≫



 画面いっぱいだったノイズが更に増して……

 


 ≪十分に抗った≫

 ≪仕方が無い≫

 ≪結果としてこうなってしまった≫

 ≪俺は……いや私は? 僕は? 我は?≫

 ≪それでも、悪いのは全部僕のせい≫

 ≪だから変える、世界を≫



 スクリーンのノイズが消えて、さっきの男達が主人公を担ごうと歩み寄って来る。



 主人公は高らかと笑い声をあげた!

 あっはっはとあどけない子供の声は部屋中に響き渡り、急に大声で笑い声をあげた主人公に男二人の驚いた顔が映し出されている。



 「なんだ、気持ちの悪いガキだな。

  さっさと運びだしちまうぞ」



 男の伸ばしてきた腕を主人公は掴み取り、その男と視線が合う。

 


 「可愛い。 とっても可愛いよ。 僕が愛してあげる」

 


 主人公がそう言うと、掴んでいた男の手がみるみるうちに変化していき、人ならざる者の姿へと変貌してしまった……

 腰が抜けて、扉から這い出ようとしたもう一人の男もどんどん姿が変わっていく。



 何よこれ?

 こんな人知らないわ。

 この主人公は……私の、なんなの?



 主人公は部屋の外へ出ると、両腕を上げ、町を覆いつくす程の大きな壁を作りだした。



 ≪皆、みんな、みんな、みんな、僕が愛してあげる≫



 街にいた全て生物が異形の者へと姿を変え、ぞろぞろと主人公の前へと集まって来る。

 


 「我、ここに誕生せり。

  僕は新しい世界の王。

  君達を愛する一人の王。

  君達も私を愛して」



 主人公の声に答える様に異形の者達が呻き声をあげる。

 精神が壊れてしまっている?

 一人称がばらばらなのはどうしてなのかしら……



 「それじゃあ、最初のお願い。

  この町の東にある小さな村があるんだ。

  そこの人達を一人残らずに全滅させて来て欲しい。

  でも、あっさり片付けちゃダメだよ。

  三日三晩かけてゆっくりとゆっくりとゆっくりとゆっくりと……

  凄く時間を掛けて一人づつ丁寧に、出来る限り惨たらしく殺して欲しいんだ。

  そして、その後は三日三晩かけて祝杯を楽しんで、まるでそこでとても良い事が起こったかの様な祝杯と祈りを捧げて、歓喜の言葉で満たしてあげて」



 主人公がそう命じると、異形の者達はぞろぞろと東へと進んで行った。

 主人公も鼻歌まじりにその集団の後を歩いて行く。

 随分急展開だし、これって脚色されているんじゃないのかしら?



 こんな事が現実に起こっていたのなら大事件じゃない……

 


 またシーンが移り変わると、一転して今度はお城の中?

 主人公の視線から察するに、玉座に座っている感じかしら?

 王様だって言ってたし、お城を作ったの?



 それにしても……誰もいないわね。

 王様になったんだったら誰かしらが傍にいると思うんだけど?

 それにとても静か……これから何が起こると言うのかしら?



 とてつもなく大きな扉が開くと、主人公は無邪気な声で「お帰りなさい!」椅子から立ち上がり、扉の方へ駆け寄ろうした。

 入って来た人物を見て主人公は足を止める。



 剣を持った銀髪の髪に赤い目の女性……確か主人公の特徴もそんな感じだったわね。

 まさかの血縁者かしら?

 それにしてもボロボロね、服装の至る場所に血が付いているし、満身創痍にも見える。



 「ようやく……ようやく辿り着いたぞ……

  多くの犠牲を払い、私は今!

  貴様の前へと辿り着いた!

  もう、終わらせるぞ……魔王!」

 


 えっ!?

 魔王って何よ?

 主人公の事?

 まあ、魔王と呼ばれている事には納得はするけど、私に魔王なんて知り合いにいないわよ?

 それに、魔王を相手にしているこの女性ってもしかして、ロアナ?



 「人間……勇者?

  そう言えば来ているって聞いたような気がする。

  何度もその名前を教えて貰ったはずだけど、覚えていないな。

  たかが人間だと思っていたけど……素晴らしい。

  凄く素敵だ。

  美しい銀色の髪、そして真っ赤な瞳。

  凄く綺麗だ、僕と同じ。

  あはは、僕と同じだ!」

 「何を呑気な……いくぞ!」



 魔王は無邪気に笑い、勇者は向かって来る!

 手に携えた剣がどんどん近づいて……ええ? 嘘でしょ?



 身構える事すらせずに、魔王はそれを受け入れた。

 息が乱れる……けど、魔王の無邪気な笑い声が止むことはない……



 「あはは、可笑しい。

  僕と君は同じ特徴を持って生まれたのに、我は呪いの子として母親以外の誰からも愛されなかった。

  思い出した!

  勇者ロアナだった!

  ロアナ、君は実に普通だなぁ。

  だから、君は彼女の代わりにはなり得ない」

 「何を……言っている?」



 「僕は呪われているんだ。

  僕に向けられた全ての愛は呪いに変わる。

  そして、我が愛も全ては呪い。

  なんだっていいんだ。

  ここで死のうが、君を殺めようがどうだっていい。

  世界は僕の愛に満たされ、呪われていく。

  きっとそうなんだ。

  だからずっと考えない様にしていた。

  ずっとずっと扉の奥に閉じ込めていた。

  でも、もうこうなってしまったんだから仕方ないよね?」

 


 魔王はロアナをそっと抱きしめたけど、ロアナはそれを振りほどいて距離を取る。

 魔王が何を言っているのか分からなくて混乱している……

 私にも分からないわ。



 「眠たい……もう少しで、安らかな眠りにつける……

  お休み、ロアナ。

  最後なんだから言葉に出していいよね?

  本当は会って直接言うべきだと思うけど、もう終っちゃうんだし仕方ないよね……

  ごめんね、愛しているよ……アイラ」



 その名前が魔王の口から(こぼ)れた瞬間、ガバっとロキシーの方を向くと同じようにロキシーもこっちを向いて目が合った。

 その瞬間に背筋が凍りつく!

 怖いわ……どうして魔王が私の名前を……

 ロキシーも殆ど表情は変わらないけど、瞳が大きく開かれて驚愕した事を物語っている。



 スクリーンにはエンディングが映し出され、綺麗な曲が流れているわ。



 「一旦、落ち着かせて」

 「ええ、まずは店の方へ戻りましょうか」

お願い。


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