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第二十二話

 凄く暇だったわ。

 ネムはあれから他に仕事もくれないし、聖人アラジャに会いに行ったりもしたけど彼には記憶も無いし面白い話は聞けなかった。



 鬼についてネムに聞いてみたけど、子供達の失踪とは本当に無関係で、気にする必要は無いと言われてそれっきり……

 ただひたすら魔法の練習とネムから貰った剣を振り続けていたわ。



 ロキシーに原石を頼んでから一週間がたったし、朝一番で私はロキシーのお店へと着ていた。



 「アイラ様、頼まれていた品が出来ております。

  御拝見下さい」

 「あら、大きいのね」



 「最上級の原石になりますから。

  ですが――」

 「分かっているわ!

  仕上げるのは私!

  素敵に磨き上げてみせるわ!

  それはそうと、これは誰の思い出で買ったものなのかしら?

  誰の思いを背負ったのかちゃんと確認したいし、名前だけでも教えてくれないかしら?」



 「ん-……私は思い出の中身は確認は許されていないので、分かりません。

  ですが、アイラ様がお許しになるのであれば、どんな思い出だったのかを覗く事は出来ます」

 「いいわよ。

  見せて貰えるかしら?」



 そう言うとロキシーは私をお店の奥へと案内してくれた。



 映画館?

 

 部屋の奥にあったのは、古びた感じの映画館で大きなスクリーンと沢山の客席が用意されていた。

 その最前列に私とロキシーが座ると、スクリーンから映像が流れ始める。

 キョロキョロと見回してみるけど、やっぱりどう見ても映画館。



 もしかして、ロキシーも転生者なのかしら?

 でも、なんか違うのよね。

 この店の主人はロキシーだけど、さっきも思い出の中身の確認は許されていないって言ってたし、何かしらルールがあるみたい。

 オーナーは別に存在している?



 それとも、この空間を作り出したのは実は私だったり?

 けど、他にもお客が居たみたいだからたぶん違うわね。

 まあいいわ。

 今はスクリーンに映し出される映像に集中しましょう。

 


 ご丁寧に、映画が始まる前の予告の様なものまで作り込まれている。

 タイトルは……『ごめんね、と言うのが難しい』

 あら? シカゴの素直に慣れなくてかしら?



 あの名曲の直訳がタイトルだなんて、ちょっとだけ期待が持てるかしら?

 ってこれって映画じゃないのよね。

 面白い映画かどうか期待するとかじゃなくて、私はこの映画の主人公の思いを受け止めて背負いにきたのよ。



 面白さとか関係無いわ。



 本編が始まると、最初は分かりにくかったけど大雨の中を女性が赤ん坊を抱いて走っている。

 主人公は抱かれている赤ん坊ね。

 


 ちゃんと聞き取れないけど……追いかけてくるのは同じ町か村の人?

 赤ん坊の事を殺そうとしているみたい……

 惨い話、創作物の物語に出て来る忌み子って奴かしら?

 でも、この人達には現実に起こっている事……



 母親はしきりに赤ん坊に向けて「呪われた子なんかじゃない」と何度も訴えている。

 じっと母親を見つめる赤ん坊は泣き声一つあげずにただ、じっと母親の様子を見ているだけ……

 赤ん坊だもの、何も出来ないわ。

 あの日の私と同じように。



 ザザっと映像にノイズが走り、一瞬だけどはっきりと≪怖い≫と言う文字が映し出された。

 これって主人公の感情なのかしら?



 シーンが変わり、さっきの母親と共に狭い部屋で生活をしている姿が移り出される。

 どんどん月日が経ち、母親は日を重ねるごとに酒に溺れ、性格が荒んで行く……

 赤ん坊だった主人公にも辛く当たってるわね。



 そんな母親の姿を、主人公は見ない振りをしている。

 生活の為にこの母親は……体を売っているのね。



 またノイズが走り、≪不愉快≫≪理不尽≫≪悪いのは……≫と言う文字が映し出された。



 このままじゃ、親子揃って精神を蝕まれてしまうわ……見ているのが辛い。



 主人公は小さな体でもなんとか母親の手伝いをしたくて、不器用でも家事をしたり、弱った母親の介護を一生懸命熟している。

 でも……母親からは「役立たずのクズが!」っと罵られてしまった。



 ≪ここにも居場所は無い≫

 ≪何が?≫

 ≪どうして?≫

 ≪ワカラナイ≫

 ≪生まれて来たのが……≫


 ≪悪≫



 悲痛な言葉……主人公はすでに病んでしまっている。



 この母親も心が荒んでしまい、何もかもが不愉快になっているのが伝わって来る。

 大切な我が子が家事をしてくれたり、介抱してくれたりする事ですら、心の傷を抉ってしまう。

 そんな事をさせたくないんだって、そんな事をさせている自分が憎いって。

 そんな人の事を私は、向こうの世界で何人か見た事がある。



 私がそこにいれば……助けてあげられるかもしれないのに。

 残念だけど、これは過去に起こってしまった事。

 現実は変えられない。

 結末はハッピーエンドになってもらいたいものね。



 更にシーンが移ると「止めて!」と言ってロキシーと共に走って映画館から店へと戻った。

  


 「酷い……思い出でしたね」

 「ええ、でも続きはまた今度必ずみるわ……

  それが私が背負った責任ですもの」



 移り変わったシーンでは、朝目覚めた主人公の目に部屋の天井からぶら下がっている母親の姿が移り込んでいた。

 


 「主人公は……男の子かしら?」

 「きっとそうでしょうね。

  誰だか心当たりは無いのですか?」



 「わからないわ。

  そもそも私が出てきていないじゃない」

 「きっとあの続きにアイラ様が現れるのでしょう」



 「そうね。

  また今度きた時は最後まで見続けられる様に心構えしておくわ」

 


 盗賊だった人の誰かかしら?

 もしかしたらお父さんの過去?

 最後に映し出されたノイズ……



 ≪間違った世界を変えなければならない≫



 本当に誰なのかしら……

 続きにその答えがあると考えると、更に続きを見るのが恐ろしくなるわ。



 私に背負い切れるのか不安になる。

 けど、必ず背負い切ってみせる!

 今度来た時だなんて弱腰で私ったらどうするつもりだったのかしら!



 「ロキシー!

  やっぱり今続きを見るわ!

  戻りましょう!」

 「良いお覚悟です。

  それでは、先程の席へと参りましょう」

お願い。


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