第十九話
屋敷を出て外は真っ暗。
全力疾走していたから馬も疲れている様ね。
アモンドもそろそろ落ち着いたかしら?
「アイラ様! 丁度良い川の畔がありますね。
あそこで夜を凌ぎましょう」
アモンドはせっせと薪を作って火を灯す。
火起こしって結構大変な作業だけど、魔法が使えるから簡単ね。
ふうーっと大きく息を吐き出して落ち着いた様子を見せるアモンド……
じっと見つめていると急に眼が泳ぎ出して、あたふたしている。
「その……アイラ様、お腹は空いていらっしゃいますか?
急いでいたもので、食事の用意までは手が回りませんでした。
もし、空腹であれば近くで何か取ってこようと思うのですが……」
「一日くらい何も食べなくても平気よ。
明日にはラルバ男爵のお屋敷に着くでしょうし、問題無いわ。
それより、今日のアモンドはとてもかっこよかったわよ!」
「あはは、ありがとうございます」
顔が赤いわね。
きっと女の子に免疫がないのね。
揶揄って遊びたい所だけど、まずは今の状況をちゃんと確かめないと。
「アモンドも落ち着いた様だし、話を聞かせて貰おうかしら?
私が魔女と断定したって言うのはどういう事なのかしら?」
「それは……そうですねぇ。
一からお話致します」
アモンドの言う話しでは、私の素養があまりにも異質だった為ギルドへ報告したところ、しばらくしてから呼び出され、色々と質問を受けた。
そこには、アモンドの師匠を含め組織の幹部が数名と、魔女を処刑する為の異端審問官達も複数出席し、異様な雰囲気に満ちていたらしい。
そして、アモンドがマジックアイテムで見た私の属性を話し終わると、その場に居た人物達で色々な話し合いをした結果、私を魔女と断定する事を決定した。
本来魔女は異端審問官達によって儀式を行い魔女の正体を暴くと言うもののはずなのに、この会議で魔女と決定した事を不審に思いながらアモンドは声を殺し、平静を装いながらその話を聞いていた。
そして会議が終わった後、すぐにアモンドはその場から走り出し、現在の行動に出たって訳ね。
そう言う行動が出来る人って素敵だけど、環境によっては自らの首を絞めてしまうわ。
私の為に行動を起こしてくれたんだし、私がアモンドを守ってあげなくっちゃ!
「元々おかしいとは思っていたんです。
一度だけ異端審問に掛けられた魔女の処刑に立ち会った事があります。
自分は、とても……見ていられませんでした。
悲痛な声を上げ、火あぶりにされた少女の姿を……」
「泣かないでアモンド、あなたは悪くないわ。
でも、力の無かった事を後悔しなさい。
そして、無知であった事を反省し、その罪に苛まれなさい。
火あぶりだなんた恐ろしい話ね、きっとその少女苦しみや痛みはあなたの想像を絶する程のものだった事でしょう。
だから私はあなたを赦します。
強く自分を持って、成すべき事を成し遂げなさい!」
「その通りです。
あってはならない事だった……
恐らく、ヴァルボアは現在の地位を守る為に魔法の才能があり、人の上に立つような人物達を魔女と断定し、排除しているのでしょう。
今まで築き上げて来た地位を脅かしかねない魔法使いが現れれば、その立場を保てなくなりかねない。
それに、魔女と断定されるのは貴族が多いそうです」
話が見えて来たわね。
自分達の地位を守るために、才能ある若い芽を摘むだなんて最低なやりかた。
貴族が多いって事は貴族でも処刑する事が出来る権限なんかがあるのね。
お城にも沢山ヴァルボアの人が居るってカインからも聞いて居るし、罪に問うとしても厄介だわ。
たぶん、お父様でも私が異端審問の儀式が始まっちゃうとどうしようも無くなってしまう。
ダリアも本当なら私をアモンドに預けるなんて不本意だったと思うけど、そう言う事情があったのなら理解出来るわ。
「それで、ほとぼりが冷めるまで私は身を隠すって事?」
「ええ、バーンアストライド公爵には事情を説明しておりますので、きっとアイラ様が無事でいられるよう手筈を整えて頂けると思います」
「それまでに私が見つかったら異端審問に掛けられて魔女として処刑されちゃうってわけね」
魔女と断定されない様にするって結構難しいと思うんだけど大丈夫かしら?
お父様にも立場があるし、確かに異端審問に掛けられない限りはある程度優位な状況は作れるでしょう。
それに、形的にはヴァルボアのギルド員であるアモンドが私を拉致したって事になってるでしょうから、私が見つからない限りは十分な時間は稼げる。
ただ、それだけで反撃が出来るとは思えない。
待っているだけってのも性に合わないわ!
私達の方でも何か行動を起こしたいけど、ここで考えても何も思いつかないわね。
明日にはラルバ男爵のお屋敷へ辿り着くと思うし、その時ゆっくり策を練りましょう。
「アモンド、今日は開眼式とか色々な事があったし少し眠るわ」
「分かりました……
ア――アイラ様!?」
「何よ?
ベッドも寝床もないんだからこうやって寝るしかないじゃない」
隣に行って寄り添うとアモンドはあたふたしている。
私をここに連れて来るまでに散々スキンシップを重ねてきたはずだけど、無我夢中で気にしてなかったのね!
この反応、すごく可愛いわ!
「じ……自分はその、アイラ様に触れていい様な身分では無く!
その……い、いけません! いけませんです!」
「助けてくれた人に身分も何も関係ないわ。
今日は疲れたのよ、寄り添って安心させて」
「す……少し! 少しだけお時間を!」
そう言ってアモンドは木々のお生茂る森の奥へと走り去っていった。
初心なのね。
一体何をしに森の奥へ行ったのかしら?
しばらくしてアモンドが息を切らしながら戻ってくると少し落ち着いた様子で「お待たせいたしました。 それでは……お許しください」と言って私の隣に並んだ。
アモンドに体を預けると……なるほどね、やっぱり!
良い匂いだわ!
こういってしまうと偏見かもしれないけど、思春期の男の匂いよ!
それにしても今日は色々な事があって本当に疲れた。
ずっと魔法も使いっ放しだったし、意外に体格のいいアモンドに体を寄せると自然と瞼が重くなって深い眠りへと誘われた。
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