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第十八話

 「アイラ様、顔色が優れませんね。

  あまり意識だけ別の異空間へと飛ばすのは負担も掛かりますし、そろそろお戻りになった方がよろしいかと」

 「あら、心配かけちゃったわね。

  大丈夫って言いたい所だけど、待たせている人もいるし、戻った方がいいわね。

  それじゃあ最後に原石をオーダーしたいんだけど、私ってどれくらいの手持ちがあるのかしら?」



 「かなりお持ちですので、大抵のものであれば問題ありませんが、どの様な原石を御所望で?」

 「そうね、魔法と剣術に適性があるんだし、魔法剣士系の原石、それと膨大な魔力を消費しちゃうみたいだから、魔力を回復させたり出来る能力が欲しいわ」



 「承りました。

  お手持ちにかなり余裕があるので、グレードは最高級品で宜しいでしょうか?」

 「それでいいわよ!

  それじゃあ、意識を体に戻すけど、原石はいつ頃取りに来ればいいかしら?」



 「一週間後には確実に御用意出来ます。

  またのご来店、お待ちしております」

 「ええ、それじゃあ、またね」



 意識を元の体へと戻し、瞑っていた目を開くとカインと目が合った。



 「ただいま、まだ馬車の中なのね」

 「お帰り? まだ馬車の中って……アイラ様が僕にもたれかかって来てからほんの僅かしか時間は立っていないよ?」



 「あらそうなの? 

  そうだ、カインに聞きたい事が出来たんだけど、いいかしら?」

 「え? なんか……嫌な感じがするから断ってもいいかい?」



 「ダメよ! 少し前に私の事が月の精霊の様に感じたって言ってたわよね?

  カインの言う月の精霊ってどんなのかしら?」

 「ああ……月の精霊の事か。

  とても美しい少女の姿をした……精霊かな?」

 


 「美しい少女だからカインは委縮(いしゅく)していた?

  違う様な気がするわ。

  月の精霊について教えなさい!」

 「月の精霊……今では魔女と言う名称で呼ばれる事の方が多いかな……?」



 「月の精霊が魔女?」

 「そう、魔女は必ずナイトメアと言う悪魔を沢山引き連れて、災いをもたらすんだ。

  魔女の姿は一つでは無いんだけど、必ず美しい少女の姿をしている。

  神出鬼没(しんしゅつきぼつ)だし、滅多に出会う事は無いんだけど、出会うと大変な目に合うんだ」



 「カインは私の事をそんな恐ろしい魔女の様だって言ったのね。

  それで、出会うとどうなるのかしら?」

 「ごめん、でも、僕にとって出会ったばかりのアイラ様はそう思うのも無理は無いくらいの存在だったんだから許して欲しい。


  魔女に出会った場合の対処方だけど、まず気付かれない様にじっとする。

  そして、逃げ延びれたら魔女が出た事を報告する。

  でも、魔女に自分の事を気付かれてしまった場合は、即座に自殺する事を推奨されているよ。

  それくらい酷い目に合うって事だね」



 「とても危険で恐ろしい存在って事は分かるんだけど、戦うって選択肢は無いのかしら?」

 「魔女の討伐はとても難しいんだ。

  ガラティア辺境伯でも魔法の支援なしでは分が悪いと言われている程だからね。

  ただ、魔女を倒す為に特化した魔法があるから報告さえあれば、討伐隊が組まれて排除してくれる」



 「魔女討伐に特化した部隊?

  国の特殊部隊とかかしら?」

 「いや、公共団体と言った方が正しいかな。

  アイラ様の魔法の先生をしているアモンドが所属しているギルドがそうだよ。

  魔女討伐だけでなく、数ある魔法使いギルドの中でも最高位のギルドで、城内にも関係者は沢山いるよ」



 「ジャービス第二王子の研究塔に居る人達かしら?」

 「うん、他にも王族の護衛だったり情報の収集とかもやっているよ」



 さすが魔法使いね。

 数が揃えばなんでも出来ちゃうって感じ!

 家までの道のりはまだ遠いし、私も魔法の原石を磨き上げるとしますか。



 「カイン、歌は得意かしら?」

 「う……歌?

  人前で歌った事なんてないけど……」



 「なんでもいいから歌ってみて頂戴!

  私の魔法を試してみたいの!」

 「歌に関係する魔法?

  それじゃあ、少しだけ……」



 カインが何かを歌い始めたけど、酷いわね。

 声自体は悪くないと思うんだけど、音程やリズムがどうのこうのと言うレベルじゃ無いわ。

 リズムも音程もあっていないボヘミアンラプソディ―みたい!



 流石にこんの真面に聞いてられないから、文曲(もんこく)の魔法でカインの技量をアップさせてみる。

 すると、みるみるうちに音程もリズムも安定して、ちゃんと聞き取れるようになっていく。



 「なるほどね」

 「ん? もう魔法を使ったのかい?

  そう言えば、途中から自分の歌声がよく聞き取れる様になった感じがしたかな?」



 「ええ、魔法を使ったわよ。

  カイン、しばらく歌い続けてみて」



 カインが再び歌い始めると、魔法を掛けていないのに最初と違ってちゃんと音程もリズムも取れている。

 でも、魔法が掛かっている時程じゃないわね。



 再び魔法を掛けるとまた最初よりも上手に歌えている。

 この魔法凄いわね。

 その時だけじゃなく、本人の経験として効果が残っているのね。

 さらに魔法を掛け続ける事で、どんどん上達していく。



 ある程度の限界はあると思うけど、この魔法を磨き続ければ色々な面で凄い事が出来ちゃう!

 合唱団や演劇なんてのもいいし、無敵の軍隊なんてのも作れちゃうわね。

 まだまだ魔力には余裕があるし、尽きるまで何かしらの魔法を使っておきましょう。



 ◇



 屋敷へ戻るまで魔法を使いながら帰って来たけど、まだまだ魔力には余裕がありそうだし、魔法を使い続けながらまずは私室へと向かう。

 お父様への報告は着替えを済ませてからゆっくり話すつもり。



 先にカインをお父様の元へと送り、ダリアにただいまの挨拶をして服の着替えを手伝って貰う……

 なんだか部屋の外が騒がしい……



 ドタドタと大きな足音が私室の方へ近づいて来て、いきなり私室の扉がドン! っと開かれた!

 


 「アイラ様! 急を要する……失礼!」

 


 扉を開けたのはアモンドで、下着姿の私を見て顔を真っ赤にしながら背を向けた。

 別に減るものでも無いし、私は見られてもいいんだけど、アモンドには刺激が強かったみたい。

 ダリアが手早く私に服を着せて、「何事ですか? ドアをノックもしないで、ぶしつけにも程がありますよ?」と怒りを露にして声を張り上げる。



 アモンドは背を向けたままの姿でこちらへと声を掛ける。



 「申し訳ございません! ですが急を要する事態となってしまいましたので……」

 「アモンド、こちらを向いて話して頂戴。

  私はもう着替え終わっているわ」



 振り返ったアモンドはまだ顔を真っ赤にしている。

 息も切れているし、変態みたい。

 けど、凄く慌てている様だし、何かあったのかしら?



 「ダリア殿、自分はこれよりアイラ様を(さら)って遠くへとお連れします!」

 「私がそれを許すとでも?」



 「説明している時間がないのです!

  私の所属しているギルド、ヴァルボアがアイラ様を魔女として断定する事を決定いたしました!」

 「そんな馬鹿な事があってたまりますか!

  しかし……時間がないのですね?」



 「ええ、間も無く師匠がギルド幹部達を連れてここへとやって参ります!」

 「わかりました。

  行く当ては?」



 「ないので、とにかく遠くへ!」

 「なら東に向かってラルバ男爵を訪ねて下さい。

  必ず私も後からそちらへ向かいます。

  あそこならすぐに追手が来ることもないでしょうし……あの男がいるので安全でしょう」



 「分かりました!

  それではアイラ様、失礼致します!」



 アモンドは私をお姫様抱っこすると、玄関の方へと走りだした!

 何がどうなっているのか整理が付かないけど、大変な目にあっているのね私。



 それにしても抱き方が雑ね。

 スカートがダランと垂れているし、これだと下着が丸見えだわ。

 それに、ドタバタ走ってスカートを踏んで転ばないのか不安ね。



 まあ、私は丈夫だし放り投げだされても平気だと思うからいいんだけど……



 無事に屋敷の外へ出ると既に日は沈んで来ている。

 アモンドは先に私を馬に乗せて、その私を抱きかかえる様にして馬へと(またが)った。



 アモンドが手綱を握り、「ハァッ!」っと言う掛け声と共に馬が走り出す。



 あら? ちょっとカッコイイじゃない!

 意外に体力もありそうだし、身長も高くて素敵だわ!



 私はアモンドの顔を見上げているけど、アモンドにはまるで余裕が無いみたいね。

 真剣な表情で周囲を警戒しながら急いで馬を走らせている。

 少し落ち着いてからちゃんと話を聞こうかしら?

お願い。


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