第十五話
うぅーん、よく眠れた!
気持ち良くて体を脱力させたまま寝ちゃったわ。
でも……うん! 魔力の流れは感じる!
アモンドから受け取った本を見て魔法が使えるのか試してみる!
◇
片っ端から試してみたけど、属性系の魔法は全く使えないわね。
その代わり、属性魔法よりも下位に属している無属性魔法は全部使える様になったわ!
魔法としては大した事ないんでしょうけど、使えれば便利って感じの魔法ね!
小さな明かりを灯したり、周囲の温度を少しだけ下げたり上げたり、洋服を綺麗にする魔法や小さな火を熾したりも出来る。
他にも身体強化系の魔法もあるけど、剣聖シャルールと戦った時に無意識で使ったような感じのじゃなくて、準備運動の魔法版って感じかしら?
精神が落ち着いたり、体があったまった状態になる事が出来る。
そんな感じの魔法。
他にも色々あるけど、本に乗っている無属性の魔法はどれもこんな感じ。
部屋にあったレイピアを持ち上げてみる。
扱いにくいのは変わらないけど、以前持った時よりも少し軽く感じるわね。
魔法を使いながらレイピアを素振りしていると、ダリアが部屋の中へノックした後入って来た。
「寝巻のまま剣を握るなんて端ないですよ! 開眼式へ行くのでご準備を致しましょう」
「あらごめんなさい。 魔法の練習をしていたから気が付かなかったわ。 それはそうと、本に乗っていた無属性魔法は全部扱えるわよ! 見て貰えるかしら?」
「ああもう! 動かないで下さい! ご準備が整ったら拝見させて頂きます」
あら? 珍しく私に服を着せるのに手間取っている様ね……ってこれ着物!?
色は地味だけど振袖だわ……
「珍しい服ね? 伝統的な服なのかしら?」
「そうですね、勇者が成人の義を行う時に来ていた服と言う話しです。 その時に勇者は開眼したと言う話しなので、それにあやかり、開眼式ではこの服を着るのが風習となっていますね」
「それじゃあ、その成人の義が今では開眼式になったと言う事?」
「その通りです」
勇者は日本人の女の子……
ん-、私も勇者でしたって落ちは勘弁願いたいわ。
着付けが終わっみたいだからダリアに魔法を見て貰う。
私がいくつか魔法を使って見せると、最初は「お見事です!」と褒めてくれていたダリアが驚愕した表情を浮かべて本を確認する。
「夜通し魔法の練習をしていたんですか?」
「違うわ。 目が覚めてから順番に試していったのよ。 集中して魔法を使おうとしていたから少し時間は掛かっちゃったけど、全部試すのにだいたい一時間くらいかしら? 属性魔法に分類されている魔法は全部使えないみたい」
「話しぶりからして、無属性魔法は全てすぐに使える様になったと言う事ですよね……普通、無属性魔法でも一つ使える様になるには時間を要するものなんですが……それに、短時間で全部試して尚、魔法を使える余裕があると言う事は、魔力の量も桁違いですね」
「そうなの? 疲れている感じは全くしないんだけど」
「昨日魔法を教えに来たアモンド・スクライブでもマジカルデュレイション無しに全部試すなんて出来ないと思いますよ」
「マジカルデュレイション?」
「魔力を回復させやすい体質に身体を変化させる事です。 これも魔法なので魔力が尽きると使えませんが、短時間で魔力を回復させる事が出来るので、実質無限に魔法が使えるようになります。 デメリットとしては、マジカルデュレイション中は他の魔法が使えないので無防備になりますし、マジカルデュレイションを連続して使いすぎると、体に負担が掛かり過ぎると言う事ですね」
「当然のデメリットね。 この本にはマジカルデュレイションは書かれていないようね」
「理解しているとは思いますが、マジカルデュレイションを使いながらの練習は危険ですから。 マジカルデュレイションに関してはアモンド・スクライブに許可を得てから使う様にして下さいね」
魔法に関しては私ちょっと凄いみたい!
なんだか楽しくなって来ちゃったわ!
支度も出来たし、ダリアに連れられて屋敷の外へ行くと馬車の前でカインが待っていた。
ダリアは屋敷でお留守番。
寺院へはカインがエスコートしてくれる事となった。
「カイン! 私魔法の才能があるみたい!」
「それは素晴らしい。 けど、馬車の中では落ち着いて話そうか、舌を噛むと危ないからね」
寺院は馬車で行けばそれ程遠く無く、少しだけカインに魔法のお披露目をしている間に、辿り着いてしまった。
折角だし全部見て貰いたかったけど、開眼式が優先ね。
カインに手を引いて貰い、寺院の奥へと入っていく。
見覚えのある子供達が結構いるわね。
貴族のパーティーで会った子達だわ。
私を見るなり皆お供を連れて、順番に丁寧なご挨拶をしてくれる。
開眼式って集団でやる儀式なのね。
元々は成人の義らしいし、勇者が日本人なら成人式の感覚で始めた事なのかもしれないわね。
それに、女の子は振袖だし、男の子はやっぱり袴なのね。
勇者は女の子だったから振袖なのは分かるけど、男の子の袴は誰をモチーフにしたのかしら?
「ねえカイン。 ダリアから女の子の服は勇者が成人の義で着用したって聞いたから分るんだけど、男の子達の着ている服も偉人が成人の義で着用していたのかしら?」
「伝承では勇者には双子の兄が居てね。 最後の日まで勇者と共に魔王軍と戦った勇敢な戦士で、その方が着ていた服みたいだよ」
「そうなのね……」
勇者は私と同じ日本人で、異世界から転生してきたと言う事が分かっているから、感情移入してちょっとウルっと来ちゃったわ。
魔王軍と戦って双子の兄が死んでしまったら……きっとすごく悲しい。
それでも勇者は魔王を倒したんだから、すごく頑張ったんでしょうね。
カインとの会話を楽しんでいると、私の方へまた誰かが近づいてくる。
パーティーでは見かけなかった子だけど、凄く派手な振袖!
きっと貴族の中でも身分の高い子に違い無いわ。
「初めましてアイラ様。 まさか開眼式でお会いできるとは夢にも思いませんでしたわ。 私はリリティア・グランモール。 多忙故に、ご挨拶が遅れた事を深くお詫びいたしますわ」
グランモールって確かお母様の旧姓ね。
という事はこの子とは従姉と言う事なのかしら?
「そんなに畏まらなくても大丈夫よ。 それより、お母様と同じ姓を持っているのね!」
「アイラ様の母君イレーネ様の兄にあたるのが私の父、ヒルマ・グランモール。 爵位は伯爵ですわ。 ご挨拶はこれくらいにして、そろそろ開眼式が始まってしまいますので、後程」
「ええ、開眼式が終わったらゆっくりお話ししましょう」と返事をして、リリティアを見送った。
祭壇の様な場所の前で列が出来ているので、そこへカインと共に並ぶと、何故か列の後ろでは無く、どんどん前へまえへと通され、最前列へと来てしまった。
別に順番を待っていても良かったんだけど、お父様がこの国で二番目の権力者だから仕方ないわね。
しばらく待っていると、頭を丸めた僧を引き連れて、御主さんが出て来た。
勇者って仏教徒だったのかしら?
建物もそうだったけど、服装やスタイルも含めて日本のお寺に似ているわ。
御主さんが長々と挨拶をした後、いよいよ開眼式が始まる。
カインに連れられて祭壇の前までエスコートして貰うと……ええ!?
お焼香!?
テーブルの上に載っている数珠を左手に持つようにカインが教えてくれた。
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