第十二話
ダリアに抱っこされたまま、半日掛かってようやくラルバ男爵の屋敷へ辿り着いた。
今までパーティーに参加してきた貴族の屋敷にくらべると見劣りするけど、大きな屋敷ね。
町はそれ程大きく無くて、田舎町って感じかしら?
屋敷の庭にテーブルや椅子が並べられているし、パーティーは外でやるみたい。
外でパーティーなんてしていたら、虫とか寄って来そうだけど……大丈夫かしら?
それに、もうすぐパーティーが始まるにしては静かすぎるわね。
他の貴族の人達は……屋敷の中かしら?
ここに居ても仕方ないし、ダリアに連れられて屋敷のドアをノックする。
すると、中から燕尾服を着た執事が出てきて、私達を屋敷の中へと招き入れた。
この執事の人……どうして鉄の仮面を被っているのかしら?
目の部分は塞がれているし、これだと前が見えないわよね?
不思議に思いつつも、執事の人に着いて行き、ラルバ男爵のいる部屋へ通して貰った。
ラルバ男爵は痩せ気味の背の高い男性で、長い白髪はオールバックにして綺麗に纏められている。
手足もスラっとしていて魅力的ではあるんだけど、ちょっと危ない香りのする人って感じね。
貴族風の挨拶をすると、ラルバ男爵も丁寧に返してくれた。
「我が屋敷へと着て頂き、ありがとうございます。 存分にパーティーを楽しんでください。 先に到着している方々はパーティーが始まるまで別の部屋で待機しておりますが、アイラ様が来られたので始めると致しましょう」
執事の人が部屋を出て行き、私達はラルバ男爵と共にしばらくしてから庭へ出ると先程まで居なかった貴族の人達が大勢いた。
屋敷から出て来た私達に向かって大きな歓声を上げてくれている。
服の感じから貴族と言ってもそれ程地位の高い人達って訳じゃ無さそうね。
中には普通の村民って感じの人までいるし、小さな子供達もいるわ。
色々な場所に設置されたランプに明かりを灯され、日が沈んで来ているけど十分な明るさがある。
何処からともなく料理が運ばれてくる……
屋敷の裏手から運ばれてくるようね。
下準備だけして、調理は屋敷の外で行っているのかしら?
ラルバ男爵が大きな声で挨拶を始める。
皆がその隣に立つ私に注目する中、執事の人がせっせと皆にグラスを配り、最後に私達の手にグラスを手渡してくれた。
ラルバ男爵が「乾杯!」と手を掲げたので、私もグラスを持ち上げて「かんぱーい!」と声をだしてからグラスに口を付ける。
あら? この飲み物すっごく美味しいわね。
色はグレープジュースっぽいけど、香りはライチに似ていて、後味に僅かな塩気の様なものを感じるわ。
味は優しい甘さで癖や雑味は無いし、今まで味わった事の無い不思議な飲み物。
「我が領地でのみ生産しているヨズの実のジュースです。 アイラ様のお口に合いましたかな?」
「ええ! すごく美味しいわ!」
「それは良かった。 この地でしか味わえないので、存分にお召し上がりください」
「沢山頂くわ! 他の貴族のパーティーと違って、護衛には町の人達も参加しているのね」
「ええ、ここはバイシタル王国でも最も東にある辺境の地ですので、兵士も少なく町で腕の立つ者達に警備をさせております。 実の所、アイラ様の様な大貴族の方が来ていただけるとは思ってもいなかったので、急遽招集して用意させました。 真面な身形も整えられず申し訳ない限りです」
「気にする事は無いわ。 それじゃあ、あの仮面を着けた執事の人も実はこの町の人だったりするのかしら?」
「あれの事はお気になさらないで下さい。 正直に言いますと、私にもあれが誰なのか分からないので……」
「ええ? どういう事?」
ラルバ男爵の話しでは、あの仮面の執事は三年くらい前、急に屋敷に現れてラルバ男爵に仕えると言って住み着いてしまったみたい。
最初は何度も追い払おうとしたみたいだけど、ラルバ男爵の兵士達では相手にならず、強引に屋敷に住み込んでしまった。
敵意は無いみたいだし、今の所は何の問題もないみたいだから気にしないでおいて欲しいと言う事だった。
仮面を着けている理由も分からないみたいだし、不思議な話し……三年前と言う事は最近この辺りで起きてるって言う子供が失踪する事件とは無関係だとは思うけど、好奇心は擽られるわね。
急に押し掛けてきて男が男に仕えているだなんて、とっても意味深!
やっぱりここに来て良かったわ!
刺激的な事が沢山起こりそう!
子供達の失踪に関してもラルバ男爵に聞いてみたけど、この事に関してはラルバ男爵も心を痛めているみたい。
原因は分からないみたいだけど、一つだけ分かっている事がある。
それは、失踪する子供は必ず一人だけ。
今まで一度もその日に二人が失踪したなんて事は無かったみたい。
私も解決に協力してあげたいし、後でダリアと相談して私を囮に使えば犯人を捕まえられるかもしれない。
ダリアは必ず反対するでしょうけど、私に甘いしなんとかなるわ!
ヨズの実のジュースを片手に、色々な人にご挨拶をする。
警備を担当している町の人にも声を掛けるとすっごく喜んでくれた。
感動して涙を流す人までいたけど、バイシタル王国の王家やお父様の事を凄く尊敬してくれているみたい。
貴族って国民から嫌われてるイメージがあったけど、バイシタル王国はそんな事は無いみたい。
ダリアにこの事を話すと、バイシタル王家やその周囲にいる上級貴族は国民を大切にしているからとても慕われているのだと言う。
分かりやすい例でいうと、ラルバ男爵も元々は平民で、優れた功績を称えられて男爵となり、この領地を与えられた。
ちゃんと能力を評価されるって、人としてとても嬉しい事だわ。
ただ、野心だけ大きくて、無能な人からはあまり良く思われていないのだとダリアは言う。
そして、当然だけど貴族の全てが国民から受け入れられているわけでも無く、中には嫌われ者や悪事を働く者もいないわけでは無いと教えてくれた。
貴族も人に違いないのだから当たり前の事ね。
ついでにダリアにさっき考えた囮の事を伝えると、当たり前のように却下されちゃった。
「ダリア、この町の人達が困っているのよ? 貴族としてそれを解決するのは当然の事なんじゃないかしら?」
「アイラ様はバーンアストライド公爵御令嬢ですよ? そんな危険な事をさせるわけないでしょう。 私がどうにか致しますので、アイラ様は気にせずにパーティーを楽しんでいて下さい!」
「私なら大丈夫よ。 それに、こう見えて私、結構野心家な所もあるのよ? 大人になれば重要な立場になると思うの。 だから、危険を冒してでも国民を助けたって言う実績が欲しいのよ。 私の大好きなダリアなら分かってくれるわよね?」
「いけませんよ……なんですかその目は……」
じっと潤んだ目でダリアを見つめていると、ダリアは折れてくれた。
「分かりました。 ただし、危険が及ぶと判断した時は覚悟してください。 私はアイラ様を守る為なら一切の迷い無く相手を叩き斬ります」
「覚悟ね。 わかったわ!」
覚悟と聞いて少し自分の考えが甘い事を改めさせられた。
間接的にも、直接的にも、人の死に関わる事をするのであれば、私もその覚悟を背負わなければいけない。
それに前世と違って今は貴族。
尚更それを考えなければいけないわね。
うん、わかってるわ。
前世なら似た様な事を考えすぎて自分の中に引き籠って鬱病になり、それを理由に逃げだしちゃったけど、今ならきっと前向きに考えていける。
色々な事を経験して強くなったんだもん。
ドンと来いよ!
パーティーが終わった後、ラルバ男爵に屋敷内にある今夜泊まる部屋へと案内された。
広々としていて、悪くない部屋ね。
ラルバ男爵が去った後、早速ダリアと共に行動する。
「少し散歩がしたい」とダリアを連れて、玄関に立っていた仮面の執事に伝える。
「女性二人だけで月明りの下、散歩されるおつもりですか?」
「そうよ。 この辺りはとっても空気が美味しいの! だから夜の空気も存分に吸っておきたいの! 駄目かしら?」
「滅多に現れませんが狼が出る事もあるんですよ? 女子供は真っ先に狙われます。 出来る事ならお部屋でお休みして頂きたいのですが……」
「まあ! 狼さんが出るのね! でも心配ないわ、だってダリアが着いて来てくれるんだもん」
「ええ、狼程度ならこの剣で叩ききります」
「狼は群れで行動するのですが……分かりました。 私もついて行きましょう」
あら? 通して貰えないかと思って最悪部屋の窓から外に出ようとも思っていたけど……一緒について来ちゃう事になってしまったわね。
まあ、外に出ちゃえばなんとかなるかしら?
隙を見て逸れる事が出来れば、囮作戦を決行できるわ。
懸念するのはこの執事、明らかに目では無い感覚で周囲の状況を理解しているところかしら?
どうにかして気付かれずに一人にならないと、散歩するだけになっちゃうわ。
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