ヒーローテスト 5
どしん、っと、ベッドに腰かける。
真由は、もう一度、一通りポーズをしてみたが、結果は、
ー無理!ー
バタンと、仰向けにベッドに寝転んだ。
「はぁ。ヒーロー並みの運動能力、無理!」
横になりながら、
「だいたい、わたしが、我、見参!みたいに、、、。」
>能力上昇。
ーえっ?ー
>解除。
「、、、。我、見参。」
>能力上昇。
ー、、、。ー
>解除。
真由は、ゆっくりと体を起こして、ベッドから立ち上がり、
「我、見参。」
>能力上昇。
ー、、、。ー
>解除。
ーえっ。ほんと?今、間違いなく、一瞬だけど体が軽くなった。ー
真由は、確かめようと、体を動かしてみる。
「あっと、何か言わないと。て、言うか、キメ台詞を言わないと駄目なのね。多分。とっ、そうね。とりあえず。」
何となく拳を握って、素人丸出しに構えてみる。
そして、ちょっと小声で。
「必殺。パンチ。」
>能力上昇。
誰が見ても、ヘタレなパンチが突き出される。
動きも、特に早くもなく普通。
だが、真由にとっては、驚くほどの速さで体が動いた。
驚きで、パンチを放った状態で止まってしまう。
多少して、伸ばしていた腕が、疲労で震えてくると、真由に、思考が戻った。
ーほんと?これ、本当なの?ー
変身、解除、と、言う、瞬間着替に、適当なキメ台詞による、能力上昇、どう見ても、普通ではない。
「つまり、わたし、本当に、変身ヒーロー、になったの?!」
真由は、呆然と立ち尽くした。
「真由ーー。いるでしょーー。おかーさん帰ったわよーー。晩御飯作るの手伝うから、お願いーー。」
由香里の声に、動きが戻る真由。
「はーーい。行くから、待ってーー。と、まだ制服。着替えないと。」
慌てて着替えようとするが、止まった。
「変身。」
ジャージ姿。
念のために、軽く、服装を確認する。
「予想通り。これ、便利ね。」
ニンマリと笑ったところで、
「真由ーー?」
再び、由香里の声が聞こえた。
「ごめーん。今行くからーー。」
真由は、急いで部屋を出ると、キッチンへ向かった。
真由が、教室で放課後の行動を考えていると、鈴美の声が聞こえた。
「真由。おはよー。調子はどう?」
顔を向けると、鈴美がカバンの荷物を机に押し込み、歩いてきている。
「ん。ありがと。大丈夫だよ。」
ーおまけ付きみたいだけど。ー
続きは心で言って、笑顔をつくると、鈴美は、前の席に座り込んだ。
「なら、いいんだけど。でさ、真由。」
乗り出すように、真由を見つめる。
「えっ?なに?」
引きながら真由が答えると、ニッ、と、笑って鈴美。
「実はさぁ。試作のパンを持ってきてるんだよね。」
ピンときた真由は、表情を強張らせた。
「へっ、へぇー、そうなんだ。」
声も硬くなっているが、鈴美は、無視して、ニコニコと話を続ける。
「そう。真由にも試食してもらおうと、ちゃんと二つあってさ。昼に食べてみる?」
「その前に、誰が作ったの?そのパン。」
「えっ。私。」
あっさりと、自分を指差す鈴美。
「そっか。味見してみた?」
真由は、無理に笑顔をつくって聞いた。
僅かに間をおいて、鈴美の目線は向こうに。
「まだ。」
「どんなパンか、聞いてもいい?」
畳み掛けると、鈴美は、不貞腐れたようにぼそぼそと答えた。
「いっ。いいけど。」
「どんなパン?」
「その。」
「うん。」
「食べてお楽しみじゃあダメ?」
「駄目。」
観念した鈴美は、少し上ずった声で答えた。
「大根おろし混ぜマヨネーズ、醤油入りパン。」
間が空いて。
「えっ?」
「大根おろし混ぜマヨネーズ、醤油入りパン。」
「本気で言ってるの?」
「うん。」
鈴美は、気になっていたことを言い切ったおかげが、表情が軽くなって続けた。
「でさぁ。1個、全部上げるから、出来れば真由のお弁当のおかずを少し分けてほしいなーって。ダメ?」
拝むように片手を上げ、頼んでくる鈴美に、真由は、頬をかいた。
「わっ、わたしさぁ、昨日の晩御飯に、おかーさんが唐揚げが食べたい、って、言うから、作ってさ、それを持ってきてるんだよね。」
鈴美の瞳がキラキラと。
「ほんと!流石、お料理上手の真由さん。私も真由さんの作った唐揚げ食べたい。て、言うか、私さぁ、そのパンしか持ってきてないの。ねっ。お願い!」
「でっ、でもさぁ、そのパン、大丈夫なの?」
「大丈夫だと思うよ。多分。て、言うか、一人で食べるのは不安、って、言うか。真由。お願いー!」
必死な表情で、本音を漏らす鈴美に、真由は折れた。
「しょうがないわねー。」
ー何か、面白そうな組み合わせだしね。ー
「真由ー!ありがとー!」
歓喜を上げる鈴美を眺めながら、真由は、こっそり、肩を竦めた。
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