ヒーローテスト 6
放課後、真由は、滅多に来ることのない、駅裏の、寂れた公園に来ていた。
ーにしても、思った以上に美味しくて、ちょっとびっくりよね。ー
鈴美が試作で作った、大根おろし混ぜマヨネーズ、醤油入りパン、昼に食べてみて、二人で目を丸くして顔を見合せたのだ。
ー帰ったら、試してみよっと。ー
思いながら、公園を見回す。
普通の公園よりか広い敷地を持つこの公園は、その周囲に住宅が殆どなく、多少の大声を出してもそれ程迷惑をかける心配はなく、人通りもほとんどない。
真由は、黒枠にある、キメる 色々あり、を、試してみるために来ていた。
もう一度、公園の全体を見回す。
誰もいない。
犬の散歩をしている人ぐらいはいるかもしれない、と、覚悟していたが、本当に、無人の状態だ。
「よしっ、と。」
こぶしを握って、ちょっと、わかりにくい木陰に入り込む。
「それで、っと。」
真由は、カバンから紙袋を取り出すと、中を引っ張り出した。
それは、ピンク色の、ちょっと派手な装飾が施された、目の部分を覆う仮面。
「もう少し、地味なのがよかったなー。」
そちらの方が値段が高かった為、こちらにしたのだ。
「まっ、使うことはないだろうけど。変身ヒーローだから、一応ね。」
試しにつけてみると、存外、いゃ、かなりのフィット感があり、まず、外れる心配はないと思えた。
「うわぁ。なにこれ、わたし専用なの?まぁ、いいけど。」
視野も良好で、醜い感じも全くない。
「とりあえず、変身。」
ジャージ姿。
「あっと。マスク。と、あれっ?カバン、、、?あっ、靴も無いや。とっ。解除。」
制服に。
カバンと靴、そして、マスクが戻る。
「ちょっと、微妙ね、靴だけ残して変身とかできないのかな?」
黒枠が現れる。
>変身時のみ、変身前の服以外の装備を呼び出せるようにアップデートします。
>実行しますか?Y/N
黒枠に書かれた内容に、こめかみを押さえた真由は、
「イエス。」
>実行します。
「ねぇ、変更できるなら、変身ヒーローから、変身ヒロインにしてほしいんだけど。」
>アップデートを完了しました。
暫く真由は、黒枠を睨みつけるが、全く反応がない。
ーはぁー。まぁ、見えるのはわたしだけみたいだし、いいか。ー
頭をかきながら、変身ヒロインへの書き換えをあっさり諦めた真由は、もう一度。
「変身。」
ジャージ姿。
「とっ。靴、ないんですけ、、、。」
文句を言おうとしたところで、靴が足に現れる。
ー、、、。マスク。ー
マスクが目元を覆うのがわかる。
「どうも、装備の呼び出しは、念じるだけでいいみたいね。で。」
「解除。」
制服に。
靴とマスクはそのままに、カバンが現れる。
「あれっ?マスク、と、そっか。」
ー変身しているときにつけないと、消えないか。ー
真由は、マスクを外して、そっと、下に置くと、靴を残すように念じながら、
「変身。」
ジャージ姿。
「よしよし、ちゃんと靴履いてる。で、と。」
マスクを着け。
「解除。」
制服に。
靴はそのままに、カバンが現れ、マスクが消える。
「で。」
靴を残すように念じながら、
「変身。」
ジャージ姿。
靴も履いているし、マスクもつけた状態で現れた。
「よしっと、差し詰め、ジャージ仮面(仮)て、ところね。まっ、何に使うか知らないけど。」
真由は、両手を腰に、一旦、満足そうに大きく頷くと、
「解除。」
制服に。
ー流石に、変なマスクつけて、ジャージで立ってたら、変質者だもんね。ー
「とっ。そうそう、今はそっちじゃなくって。」
如何にも素人な構えをする真由。
「あっと。変身してないけど、と、そう言えば、変身してなくても、使えるみたいね。」
先日の様子を思い出し、
ーついでに確認。ー
ついでに覚悟を決めて、真由は、声を張り上げた。
「必殺!パンチ!」
>能力上昇。
ヘタレなパンチが、異様な速度で放たれる。
ーちょっ!ー
驚く間もなく、真由は、地面に転がっていた。
あまりの勢いに、上手く制御できなかったのだ。
幸い、上昇していた反射神経のおかげで、顔面から地面に突き刺さることはなかったものの。
「いったー。」
打ち付けた両手を、少しすりむいていた。
>肉体強化による防御力上昇補助を追加。
制服に付いた、土埃や葉っぱなどを掃いながら立ち上がる真由。
「あー、びっくりした、体がないかと思うぐらいに軽くなるし、速すぎて、ついていけなかったよ。」
>制御補助を追加。
「でも、、、。」
ー物凄いパンチだったよね。ー
今しがた、自分が放ったパンチを思い出し、戸惑うように頬をかく真由。
少しして、もう一度構えた。
じっくり時間をかけて深呼吸すると、真由は、自分がスカートをはいていることを忘れて、
「必殺!キック!」
>能力上昇。
>肉体強化。
>制御補助。
バンッッ!
どう見ても素人としか言えない動作でも、その動きは異様な速さで、音が出るほどになり、そのキックは、辺りの落ち葉やほこりを巻き上げながら、むこうにある木の葉を揺らした。
勿論、真由は、転倒などしていない。
「もしかして、物凄く危なくない?」
真由の頬を、冷や汗が流れた。
>ダメージコントロールを追加。
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