公開、ジャージ仮面(仮) 1
呆然と足を降ろして、自分の足を見た時、真由は、やっとスカートに気がついた。
「げっ。」
今更スカートを押さえて辺りを見回す。
ーふぅぅぅ。よかった。誰もいなくて。スカートのこと、すっかり忘れてた。ー
安堵に額を拭う。
どう見ても、異様な威力のキックの方が問題だが、真由にとってはスカートの方が問題。
誤魔化すようにパッパッと服のほこりを払う仕草の後、佇まいをなおして、辺りをもう一度、念入りに見回した。
ーほんと、誰もいなくてよかった。ー
「でも、流石にキックは駄目ね。」
腰に拳を当てて、少し考えると、真由は、もう一度、構えた。
もう一つ、気になっていることがあったからだ。
軽く息を吸って、小さい声で、
「必殺。パンチ。」
>能力上昇。
>肉体強化。
>制御補助。
普通程のパンチ。
もう少し息を吸って、普通に、
「必殺。パンチ。」
>能力上昇。
>肉体強化。
>制御補助。
かなりのパンチ。
大声。
「必殺!パンチ!」
>能力上昇。
>肉体強化。
>制御補助。
土ぼこりが舞い上がり、むこうの気の葉が揺れるパンチ。
ーやっぱり。ー
「叫びながら戦う、ってことじゃない!」
少し、埃が積もっているモニターに、電源が入り、コンソール画面が表示される。
>観察対象者が約52.2%で対応する事案が発生、観察を開始。
モニターに、監視カメラの荒い画像が表示され、壁際に立つ二人の女子学生に、男が二人近づいていた。
「もー。何で叫ばないと駄目なの、絶対おかしいよ。」
何度か試したものの、大声でないと威力が出ない(普通に言っても、相当な威力)ことに、真由は、口を尖らせていた。
ー架空の物語ならともかく、現実で叫びながらなんて、ー
「滅茶苦茶恥ずかしいでしょーー!」
思わず叫んでしまった真由は、荒くなった息を整えると、
ーはぁ。動いたこともあって、なんだか物凄く喉が渇いたよ。ー
「確か、こっちにちょっと安い自販機があったよね。」
真由は、少し寂れた方へ、路地を曲がった。
「近づかないでください。人を呼びますよ!」
曲がって少し、次の曲がり角が見えた時、そのむこうから声が聞こえた。
切迫した声の雰囲気に、思わず陰に隠れる真由。
息を整えてから、そっと、むこうをのぞいた。
「まぁそう邪険にしないでよ。俺らには君たちに用事があるのよ。」
見ると、男二人が、壁際に立つ二人の女子学生に話しかけている。
「私達には全く用事はありませんので。行こっ。」
一人の女子学生が、もう一人の女子学生の腕を引き、歩き出すと、男の一人が、前に回った。
「だから、俺らの方には用事があるんだって。」
ーもしかして、不味い場面なんじゃない?ー
「ですから、こちらには全くありません、大声出しますよ。」
気丈に話す女子学生の後ろに立った男が、手に持った木刀らしいものを肩に担いだ。
ー警察、警察を呼ばないと。ー
「いいぞ。この辺りは、ちょっとぐらい大声を出しても、誰も来ない。」
前の男が、肩を竦ませながら、二人の女子学生に向かう。
「俺達、ちょっと金に困っててさぁ。」
明らかに不味い、そして、警察は間に合わない、そう思ったとき、
「変身。」
携帯電話を取り出すことなく、真由は、四人の前に躍り出た。
「ちょっと!あなた達何やってるの!」
一声上げる。
ジャージ姿に、ピンクのマスク。
どう見ても、おかしな真由のいでたちに、四人が目を見張り、
しーん。
空白ができる。
しかし、真由の方は、気が気でない、なぜなら、
ーなっ、何で体が軽くならないの、全然、無理そうなんだけどー。ー
焦る頭で考える。
「とっ。そうだ、キメ台詞言わないと。」
同時、戻ったのか、木刀を担いでいる男が目を細めた。
「何だ?お前は、、、。」
「ジャージ仮面見参!」
男が口を開くのを無視、いゃ、この場の雰囲気を全く無視して、真由が叫び。
「、、、、、、。」
さらに、四人が白くなった。
>能力上昇。
>肉体強化。
>制御補助。
ーやった!体が軽くなった。これなら。ー
つかつかと、木刀を担ぐ男に向かって歩き出す真由。
「誰だか知らないけど、女の子を脅すなんて、よくないと思うわ!どお言うつもりなの!」
木刀を担ぐ男が、半身をひねって、女子学生の前にいる男を見た。
女子学生の前にいる男が頷く。
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