ヒーローテスト 1
真由が、教室の扉を前に、立ち止まった。
ー一週間も経ってないけど、、、。ー
当然、問題なく精密検査を終えた真由は、次の日の今日、学校に来ていた。
何処ともかわらない普通の高校、そして、教室の扉。
とは言え、まだ、この高校に通うようになって、それ程ではない真由は、しっかりと絞められた扉の向こうがどうなっているのか読めない為、毎日でも扉を開けるときは緊張するのに、数日空いたこともあって、更に、緊張したらしい。
ー子供じゃないんだから。ー
何とかお腹に力を入れて、カラカラと扉を引き開ける。
教室は、まだ少し早い時間もあって、数人しか生徒の影はない。
妙に注目を集めることもなく、扉を開けれたことに、真由は、胸をなでおろし、扉を閉めて、自分の席へ向かった。
カラカラと、再び扉の開く音を聞きながら、机に荷物を押し込む。
「あっ!真由!」
声に顔を上げると、幼馴染の弥生 鈴美が小走りで来ていた。
「真由!交通事故にあったって、大丈夫?」
心配そうな声を上げながら、カバンを置くこともしないで、走り寄ってくる。
真由は、少し上にある鈴美の顔を見上げ、複雑な苦笑を浮かべ、
「うん。全く大丈夫。」
ー変な枠がみえるけど。ー
「ほんと?何か、微妙な感じだけど。」
腹芸なんぞ全く無理な真由の様子に、何かあることにあっさり気が付いた鈴美は、目を細くしながら、真由に顔を近づける。
「ほんとだよ。全然、全く、怪我はないの。」
半歩下がって、両手を振って真由。
「でも、車とぶつかったんでしょ?」
鈴美も半歩。
「そうなんだけど。わたしが飛ばされた先に、マットレス、があったらしくて、それに突っ込んだおかげで、全く、無傷。」
「へぇー。」
さらに下がった真由を追わず、鈴美は、目を丸くして体をおこす。
「それって、もの凄く、運が良かった、ってこと?」
「そ、そうだと思う。病院の先生も、こんなことは初めてだ、って。」
「だよねー。普通、ないよね。」
「あはは。」
適当に笑う真由に、鈴美は、肩を窄めたところで、ちょっと、首を傾げた。
「あっ。じゃあ、学校を休んだのは、念のためで?」
真由も、肩を窄める。
「んと。二晩ぐらい、気を失ってたの。」
「えっ。それ、本当に、大丈夫なの?」
「一応ね。精密検査は異常なしでさ。でも、その検査、二回もやったんだよ。凄い暇なんだよ。」
「へぇー。そうなんだ。」
そこで、真由が、目を伏せた。
「正直。ぶつかる時のことは、あんまり思い出したくないけどね。」
途端に、鈴美の顔色が変わる。
「ご、ごめん。変なこと聞いちゃって、そりゃあ、そんなこと思い出したくないよね。」
オロオロする鈴美に、真由は、慌てて声を掛けた。
「えっと。そんなに気にしないで、確かに、最初に思い出したときは怖くなったけど。怪我も痛いところも、なんにもないし、珍しいこと体験したなー、って、思いなおしたら、思ったほど気にならなくなってね。今は、かなり平気みたい。」
ー変な枠がみえるほうが、気になるし。ー
黙って、確かめるように、真由をみる鈴美。
気が済むと、ため息をついた。
「真由ってさぁ。そう言うところ、凄く強いよね。度胸がある、て、ことなのかな。」
「ん?そう?」
「だってさぁ。私なら、そんなところ思い出したら、足がぶるってたてなくなりそうだもん。」
鈴美は、言いながら、自分の足を叩いて見せる。
「そうかな?」
「普通は、そうだと思うよ。まぁ、でも、思い出したくはないだろうし、話題かえよ。」
「うん。助かる。何にする?」
「ふふっ。」
突然、鈴美の目に、悪戯っぽい輝きが見える。
「えっ。なに?どんな話題?」
どう見ても、自分が不利になりそうな話題に思え、真由は、両手を胸元に、焦って身を縮める。
「真由が、絶対、膝をつく話題だよ。」
鈴美が、真由の様子を面白そうに眺めながら、ニッコリと、ほほ笑む。
「えっ。えっ。全くわからないんですけど。」
真由は、さらに小さくなりながら、鈴美を見上げ。
鈴美は、ほほ笑を少し、意地悪く歪めると、
「あのね。今日、体力測定があるよ。」
「えっ?」
「忘れてたでしょ。いっつも、そんなときはテンション低いのに、そんな様子がなかったから、これは、絶対忘れてるな、って。」
「うそっ。」
「前から先生が言ってたよ。」
しれっ、と、舌を出して笑う鈴美を、真由は、目に写すだけだった。
「そっ、そんなーーー!!」
真由は、鈴美の予言通り、膝をついて声を上げた。
読んでいただき、ありがとうございます。
よければ評価をお願いします。




