公開、ジャージ仮面(仮) 6
授業が終わって、カバンに荷物を詰めた真由が、鈴美に近づく。
「結局、休みの人も、怪我の人もいなかったわね。」
「そうだね。」
ー当たり前だけどね。ー
苦笑する真由に、鈴美が肩を竦める。
「どうする?神崎先輩、教えて欲しい、とか言ってたけど?」
「それよねー。どうしよう?でもさ、三年生の教室に行かないといけないんだよね。」
同級生の、他の教室でも入り難いのに、三年生の教室ともなれば、なおさら入り難い二人。
「おっと。それがあったかー。」
くっ、と、額に手を当て、俯く鈴美。
「そうなのよねー。」
真由は、ため息をつきながら肩を落とした。
「どうする?」
「どうしよう?」
二人は、そろって息を吐いた。
「でも、頼まれちゃったのよねー。」
困った表情で真由が頬をかき、鈴美が、両手を上げる。
「一応。引き受けちゃったしねー。」
もう一度、二人そろって息を吐いた。
「楽しみにしてるとか言ってたし、どうしようもないよね。」
「行く?」
顔を上げた鈴美に、真由は、弱々しく頷いた。
「うん。行こっか。」
「しょうがないよねぇ。」
鈴美も頷き、二人は、肩を落としたまま教室を出た。
カラコロと、真由が教室の扉を閉め、待っていた鈴美と歩き出そうとした時、神崎の声がかかった。
「丁度よかったか。朝は、騒がしくしてすまなかったね。考えてみたら、礼を言う側の、こちらに来てもらうのも悪いと気がついてね。」
片手を上げて、近づく神崎に、軽く頭を下げる二人。
「いぇ。」
「いつも騒がしいですから。」
彼女は、小さく頷きながら二人の前で足を止めた。
「それで、、。今日はどうだったかな?」
「すいません。誰も、、、。」
「怪我の人も?」
「はい。全く、、、。」
「そうか、、、。」
残念そうでにしながらも、少し、嬉しそうな目尻で、神崎が頷く。
「他のクラスはもう確認したんですか?」
鈴美が聞くと、
「幸いにも、誰も休むこともなく、怪我人もいなかったよ。」
「幸い?」
「皆元気なのは、幸いでいいと思うけど、、、。」
神崎の手前、どう答えていいのか迷う二人に、苦笑して答える神崎。
「幸いでいいよ。何しろ誰も欠けることなく、元気に学校に来ているのだからね。」
「でも、それだと誰だかわからないですよね。」
ー鈴美、そこで続けないでーー!話を終わらせてーー!ー
「確かに。だが、多少、嬉しくもあってね。」
「嬉しい。ですか?」
あわあわ、と、焦る真由をおいて、鈴美と神崎で話が進んでいく。
「あぁ。そうか、二人の教室では、何故、ジャージ仮面なる彼女が怪我をしていると思ったのか、話してないね。」
「そう言えば、聞いてないですね。」
ーそっ、それはっ!ー
真由は、頭の中で突っ込みつつ、引きつった笑みで固定化している。
「実は彼女、素手で、男の一人が持っていたと言う木刀を叩き折ってるみたいなんだ。」
「げっ。すごっ。本当なんですか?」
「あぁ。私も信じられなかったが、友人が、その折れた木刀を拾ってきていてね。信じざる終えなかった。」
「うわぁ。でも、確かに、それで怪我もしてない、って、言うのは考えにくいですね。」
ー止めてーー!わたしだって、後で驚いてるんだからーー!ー
白目を見せつつ、膝をつきそうになるのに耐える真由。
「でも、休んでいる人も、怪我の人もいないってことは、この学校の生徒ではない可能性もありますよね?」
軽く、首を振る神崎。
「それはないと見ている。この辺りに高校はここしかないし、友人が絡まれたのは、そこの駅裏だ、わざわざそこまでこの学校のジャージを着てくる意味がないからな。」
「それは、確かに、そうですね。」
「つまりだね。この学校には、素手で木刀を叩き折れる猛者がいる、ってことになる。」
「まっ、まぁ。そうなりますねぇ。」
「私は、こう見えて、戦うのが好きでね。そんな猛者が身近にいるかと思うと、、、。」
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