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鶴姫と景虎の国盗り経営録 ──戦国の怪物たちを円卓に集めたら資本で世界を取りに行った件  作者: みなと
第3章 戦準備編  ~荒浜の奇跡と、戦国を変える技術革命~

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36 岩を割ったら終わりだと思うなよ? 次は連射銃だ(700丁)

昨日の不動岩の回、たくさん読んでいただきありがとうございました

「不動岩」が真っ二つに裂け、土煙が収まっていく。重臣たちが腰を抜かし、輝虎がその破壊力に目を見開いている中、俺は煤で真っ黒になった弥次兵衛の元へ歩み寄った。

「見事だ、弥次兵衛。これで街道整備が実現出来る。……さて、荒浜に帰って、次のことを始めようじゃないか」

「……若様。その不敵な笑み、ろくな予感がせぇへんのですが」

 弥次兵衛が顔を拭いながら、警戒を露わにする。隣で柚子が「お父ちゃん、諦め。若様の目は、もう次の獲物を見てるわ」と呆れ顔で笑った。

 俺は周囲に聞こえないよう、弥次兵衛、権左、助蔵の三人を呼び寄せた。


「いいか。破岩杭で『回転』と『衝撃』の理論は証明された。次は、これを人が一人で持ち運べる大きさにするんだ」

「持ち運ぶ?…… 若様、まさか火縄銃にそれを?」

 助蔵が目を丸くする。俺は懐から、ニ通の図面を取り出した。

「そうだ。火縄銃と、短筒だ」

「また無茶なことを」

 俺は無視して条件を伝える。

「一つ、全天候型であること。 火縄を毎度つけるのではなく、火打ちホイールロックか、あるいは権左、お前が研究していた衝撃で発火する薬(雷汞の雛形)を使おう」

「二つ、連射可能であること。 銃身を束ねるか、回転させるか(リボルバー構造)、とにかく一発撃って終わりなんて勿体ないことは終わりにしよう。これが出来れば、一丁の銃の価値が三丁分にも五丁分にもなっていくんだ」

「三つ目。直進性、これが肝心だ。弥次兵衛、お前の得意な『施条ライフリング』を全ての銃身に刻むんだ。弾丸も丸玉じゃない、尖った椎実型(ミニエー弾)にするんだ」

 三人は絶句した。当時の常識では、雨が降れば鉄砲はただの杖だ。連射など夢のまた夢。ましてや、螺旋の溝を掘った銃身から尖った弾を飛ばすなど、狂気の沙汰だ。

「……若様。それ、戦の景色が全部書き換わってまうで」

 弥次兵衛が呟く。

「ああ、そうだ。雨の中でも、百間(約180m)先の敵の眉間を、三連続で撃ち抜く。そんな素敵な相棒(銃)を俺は作りたい」


 権左が火傷の残る顔を歪めた。口元が少し笑っている。

「……面白い。グレイン化した強力な火薬を、雨に濡れないよう金属の筒(薬莢の概念)に詰め込むってわけか。やってやる」

「助蔵、お前は銃身の強度だ。ライフリングの摩擦に耐え、連射の熱で曲がらない鋼を、燕三条の連中と練り上げろ」

「へっ、びた銭作りより千倍マシっすね。歴史に名を刻んでやりますよ」

 俺は、最後に弥次兵衛の肩を強く叩いた。

「弥次兵衛。お前が堺で追われたのは、時代が追いついていなかったからだ。だがここでは違う。俺が、お前の技術が世界一であることを世の中に分からせてやる」

「…………。若様、ほんまに人使いが荒いわ」

 弥次兵衛はそう毒づきながらも、その瞳にはかつてない程の熱い火が灯っていた。

「冬迄に完成させろ。そして、春迄に量産しろ」

「若様、何丁必要で?」

「七百丁」

「……」

 そのあまりの無理難題に皆が沈黙する。

「……銭は大丈夫ですかい?」

「ああ。これから唸るほどの金が入ってくる」

「……よっしゃ、腹くくったわ。すぐ荒浜戻んぞ。冬までに仕上げるさかいな!」

「「「おおっ!!」」」

 技術者たちの掛け声が、海風にかき消されていった。


春日山城

 直江景綱と山吉豊守を前に、破岩杭の大量生産の依頼を始める。

「そういうわけで、破岩杭は、山吉殿にお任せ致したい。こちらが、その設計書と解析結果です」

「……このような大事なもの、私に預けて良いのですか?」

「勿論。山吉殿は無闇に流布したりしないでしょうし、防諜も徹底されるでしょうから。それに、街道整備には早期に複数台を稼働させる必要があります」

「……ふむ」

 山吉は設計書をめくっていく。

「私は職人ではないのですが、そんな私でも出来る方法に見える。これは流布されたら、あっという間に模倣されるでしょうな。防諜を徹底させましょう。ただ……」

 そこで山吉は腕を組んで考え込んでしまう。

「ただ、この製造方法は分業制?ですか。これはうちの職人たちが望まないかと」

「それでしたら、俺が小机から連れてきた工程管理の責任者たちを派遣しましょう。彼らは小机で、初めに菜種の搾油機の規格化と量産化に成功した者たちです。嬉々として取り組むでしょう」

「そういうことなら、熟練の職人でなくても良い、と?」

「工程によってはお願いするかもしれませんが、そういう工程もあると思います」

 暫く考え込んだ山吉は、最後にこう答えた。

「最善を尽くしましょう」

「おお、ありがとうございます」

 俺は頭を下げてお願いした。

「しかし」

 そこで直江が話し出す。

「何台必要になりますか? 銭もかかるでしょう」

 俺は試算していた台数を答える。

「お館様がお求めの街道整備の為ですと、まずは百台は必要になりましょう。試作機の製造に五百貫(約六千万円)かかりました。同じ量の銭をかけるわけにいきませんが、材料費込みで一台五十貫はかかるでしょう」

「……火縄銃一丁で八貫から十貫かかるのにその五倍以上とは。それが百台で五千貫(約六億円)ですか。そのような銭の工面は無茶だ」

「いえ。銭は、まもなく工面致します。それがお館様と俺の約定ですので」

「……何を企んでます?」

 直江が疑わしく俺を見る。

「まもなく、商人たちが喜んで出してくれるようになります。暫しお待ちを」

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

不動岩で実績を示したことで、ここから資金繰りと連射銃計画が一気に動き出します。

続きを楽しみにしていただけたら、ブックマークで応援していただけると励みになります。

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