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第三話 クリスとエリのコンビ結成? 第四部 絵里の決心

前話の事件以来、絵里とクリスはすっかり友達になっていた。そんな中、絵里はある事件に巻き込まれる。クリスの助けを借りて、絵里は事件を解決できるのだろうか?

昨夜はいつもよりずいぶん遅く帰ったが、絵里は翌朝もいつもの時刻に起きて朝食の用意をしていた。

ケイタに手短に昨夜の顛末を伝え、店長が入院しているため今夜も帰りが遅くなると告げた。

ケイタが学校へ出かけると、絵里はクリスに会うためにケイタの部屋へ入った。

絵里は、自分なりに犯人が推理できたことをクリスに伝え、犯人が逃げ切れる確率と、自首した場合の処罰について相談した。

そして、以前岸田から教えてもらった、上飯田にある「岸田が開業した店」へと向かった。

その店は「しゃぶしゃぶ」ではなく「天婦羅」が看板の小さな店で、開店当初は評判も良かったと聞いていた。


時刻は9時半。予想どおり、岸田は従業員が来る前から、一人で店の前を掃除していた。

絵里が近づくと、岸田も絵里に気づき、掃除の手を止めて顔を上げた。

少しの間、二人は無言で見つめ合ったが、岸田は動揺しているらしく、目が泳いでいた。

絵里は落ち着いた口調で切り出した。

「岸田さん、お久しぶりです。その節は大変お世話になりました。こちらが岸田さんのお店ですね?素敵なお店ですね」

「いやあ、絵里さん……来てくださったんですね。ありがとうございます。でも開店にはまだかなり時間がありますし、従業員に辞められちゃって……掃除が終わったら一人で仕込みを始めなくちゃなんです。あいにくお構いできなくて、本当に申し訳ありません。日を改めて、ご家族でぜひいらしてください。サービスさせていただきますよ」

少し弱々しい声に感じた。


絵里は静かに続けた。

「お忙しいときにお邪魔してしまって、申し訳ありません。手短に申し上げます。

昨夜、お会いしましたね? サングラス越しでしたが、一瞬だけ目が合ったときに、岸田さんだと感じました。

あの時、私にケガをさせないように気を使ってくださって……ありがとうございます。

利き手と反対側からのスイングだったことが幸いして、店長は数日で退院できる見込みです。

私はあの時、走り去るあなたの後ろ姿をスマホで撮影し、警察に提供しました。

警察は『犯行の手口から、この店の内情をよく知る人物』と推理して捜査を開始していて、岸田さんにたどり着くのは時間の問題です。

どのような事情がおありかはわかりませんが、どうか今すぐ自首してください。

刑事の妻だから知っていますが、今の状況で自首すれば、うまくいけば“執行猶予付き”の判決になる可能性が高いです。

私は、あなたがとても誠実で優しいお人柄だということを、よく知っているつもりです。

そんなあなたを犯罪者にしたくないんです。どうか自首してください」

絵里は落ち着いた声で、一気に思いを吐き出した。


岸田は目を伏せ、数秒の沈黙のあと、震える声で言った。

「嫌だなあ、絵里さん……突然来てくれたから何事かと思ったけど、何か勘違いされてませんか?

何のことを言っているのか、僕にはさっぱりわかりません。それに昨夜は定時までここにいたので、黒川には行ってませんよ」


相変わらず、嘘のつけない人だった。

顔は紅潮し、目はさらに泳ぎ、心臓の音が聞こえてきそうなくらい動揺しているのが、絵里にはよくわかった。

もし警察に何か聞かれようものなら、嘘をつきとおすことなどできないだろう。

あの誠実で優しい人が、あんな犯行をするなんて――よほどの事情があったに違いない。

昨夜から張りつめていたものが一気に弾け、気がつけば絵里の目からは大粒の涙が流れ、無意識にお辞儀をしていた。

岸田を直視することができなかったのかもしれない。


「そうですよね……私がどうかしていました。変なことを言ってしまってごめんなさい。

私が今言ったことはどうか忘れてください。本当に失礼しました」

涙声のまま、くるりと向きを変えて足早に歩き去った。

その後ろ姿の肩は、大きく震えていた。

岸田は何も言わなかったし、追ってもこなかった。


絵里はいつもの時刻にファミレスに出勤した。

店には「店長の容体は軽く、脳の精密検査も異常なし。2〜3日で退院できそうだ」と連絡が来ていた。

店長が入院中のため、別の店舗から応援が来てくれたが、絵里の活躍も大きく、今日も大繁盛のまま閉店を迎えた。

帰宅は少し遅くなったが、日常が少しずつ戻りつつあった。

絵里は今日の行動を誰にも――クリスにさえ――何も話さなかった。

絵里の中では「岸田が犯人だという確信」と「岸田があんなことをするはずがない」という相反する思いがぴったり重なり合っていて、今日の自分の行動が自分自身よく理解できなかった。

「今日の私はどうかしていた」とだけ感じていた。

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