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敵の様な相棒

「見えない仕掛けの方だそうです。あそこは犯罪被害者を匿う場所でしょう。快楽犯罪者は被害者への行為を繰り返し反復して喜ぶ性質があるでしょう。その時に被害者へと意識がむく。悪意の籠ったね。反対に回復しかけた被害者は加害者への恨みや恐怖で加害者へと意識がむく。そして互いに意識が繋がり合うが、その悪意は弱い方へ向かうのだそうです。回復途上の被害者の精神が加害者よりも弱いのは当たり前でしょう。」


「それで、ドリームキャッチャー。」


「えぇ。すぽんと悪意が病院に張られた網に嵌り、被害者に届くことは無いそうです。それだけでなく、捕まえた悪意から警察方の呪術者が辿って行方不明の犯罪者の居場所までも突き止められるという仕掛付きです。おとり捜査って奴ですね。馬淵の意識は悪意ではなく島根への慕情で、島根も馬淵の無事をずっと祈っていたと聞いていますから、その仕掛けに引き寄せられでしょう。ですが、互いに悪意の無い意識ですから、馬淵の前にまで現れたのかもしれませんね。」


「はは。知らなかった。僕は上に言われるままあそこに被害者を匿っていましたよ。現場の者に何も真実を与えないなんて、僕はどうしてこんな組織にいるのでしょうね。これも呪いなのかな。」


「事件内容どころか警察の秘密情報までも一般人に吹聴してしまう警官がいるからではないですか。」


「一般人?」


 気に障ることに、髙は俺の言葉を鼻で笑って返した。


「なんですか、その返しは。」


「いやぁ、百目鬼さんは既に公安で情報提供者として登録されていますからね。あぁ違う。協力者、か。いや、専属相談役だったかな。」


「お前は何をしちょるんだ!」


 俺は受けた衝撃をそのまま返すかのように目の前の男を叱りつけていたが、叫んだ言葉が仏門に下った時に捨て去った自分の過去の言葉だったと気が付き、大声を上げた自分に対して俺自身が歯噛みする羽目になっただけであった。


「――あなたは、俺に嫌がらせばかりだ。」


「あなたこそ、僕を傷つけてばかりだ。」


「え?」


 俺は髙の言葉に一瞬だけだがぞっとし、自分が間違っていたのかと周囲をわざとらしく見回した。


 髙の部下どころか警察官ではない俺は相模原警察署の相談室でも尋問室でもない地下の小部屋に髙によって閉じ込められており、掃除用具室というプレートの掛かったこの部屋は、相模原署どころか県警内で髙が認める警官以外が立ち入れない鍵の掛かった部屋である。


 一般人の俺が招かれて良い訳があるはずのない場所だ。


「ちょっと待って下さい。あなたを傷つけるって、俺が、何ですか?今のところ警察の秘密の部屋に押し込まれて聞きたくもない事件の全貌を聞かされている俺こそ可哀想でしょう。」


「あなたは!僕を刺し殺しかけた件を忘れましたか?」


「他の方法であの事態の打破が出来ましたか?」


 髙は普段の無害な男風の仮面を外して、ちぃっと大きく舌打ちをして見せてから、再び仮面を被った。

 そして、俺の良心を痛めつけられるようになのか、がっかりとした寂しそうな声を出した。


「かわさんの頼みなら何でも聞く癖に。」


 違った。

 彼はそんな声を出して俺の良識を惑わせて、俺がここから逃げないようにと謀っただけなのだ。


「あいつはこんなこと頼みませんから!」


 俺は狭い部屋だろうが自分の大きな体を使って大きな身振りで、髙が本当に俺に頼みたいであろうそのものについて指を差した。


「嫌、ですよ。あれらに引導を渡すなんて仕事はね!」

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