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お姉さまたちは誘った、一緒に狩るか?

「深道が自分が攻撃を受けたと怒っていたけど。」


「え、あたし知らない。さっちゃんはなんかした?」


「私がするわけ無いじゃない。あんたこそあの子から変なおまじないグッズ貰っていた癖に。よくあんな変なの貰った上に平気でベッドに飾れるよね。」


「あれはだって、こんなの飾っているって兄さんに見せてさ、何をやっているのって心配する兄さんを寝室に呼び込むための罠じゃん。え、危険なの?キャー怖いあたし触れない、兄さんお願いって、さぁ。」


「あ、そうか。その手があったか。危険なものを取り除きに来た男を、そのまま感謝を捧げながら襲うのね。よし、私もその手を使おう。あ、その前に私は一人暮らしをしなきゃじゃない。罠が張れない。」


「うち使えばいいじゃん。変なおまじないもあるし。あ、梨々子も使う?」


「えっと、あの。」


 目の前で事態の確認よりも男を狩る雑談に発展した事態に梨々子は茫然とし、このおかしな状況にどう対処すべきか青いツナギの男性達に目を移すと、彼等は全員両腕を胸の前で交差させてバツ印を作っていた。


「あの、バツってどういうことですか。」


 真ん中の少々もみ上げが長い男性は若瀬と言う名札を付けていたが、彼は唾が飛ぶぐらいに大声で梨々子に答えた。


「可憐な君が、こんなケダモノの戯言を信じちゃいかーん。」


 若瀬の右脇にいた一番若そうな稲生も声をそろえた。


「そうですよ!男は繊細なんです!あなたは癒しでいてください!」


 左脇の男が何も言わないなと目線を移すと、三人組の左端の初瀬は泣いていた。


「畜生。憧れの佐藤さんも水野さんも、ただのケダモノでしかなかったとは。」


「あの、あなた方はどうしてここにいるのです。」


「え、事件現場の鑑識してたらこんな状態。時間の経過がわからないけど、あの病衣姿の姉さんが言うにはもう三日以上は経っているみたいね。あたしらここにいる間水も飯も取って無いどころか、排泄もしていないからやばいかな。」


 応えたのは水野であり、彼女の声音は明るかったが言い切った時の目線はミイラを捉えており、そのことで事態の危機を梨々子に知らしめていた。

 しかし梨々子はミイラよりも下半身だけの死体の方が怖かった。

 まるでギロチンの刃で切り落とされたような下半身を見るにつけ、自分の身もあのように真っ二つにされたらと考えると、背筋が寒くなる以上の恐怖である。


 そんな彼女の怯えで体が震えて揺れているのか、彼女は尻にむずむずとする振動を感じた。

 自分の貧乏ゆすりを抑えねばと両手を下に下ろして、手の平に感じる砂の感触に工具室を思い浮かべていた。


「佐藤さん、水野さん。この茶色い砂はおがくずだったのね。」


「砂も混じっているけどねって、あれ?なんか振動。」


「あ、本当だ。エンジン音も、する?」


 佐藤は水野に答えながらおがくずと砂の地面に頭を付けて振動を確かめるそぶりを始めたが、梨々子はそんな事は不要だと佐藤の肩に手をかけた。


「どうした?梨々子?」


「車が、クミちゃんの車がこっちに向かっている。」


 梨々子の真正面。

 青いツナギの男達の後方で陽炎のような揺らめきが立ち上っており、その中で大きな車の影が現れては消えているが、現れるごとに影が大きくなっているのだ。

 駐車場の監視カメラ映像に映っていた久美が乗ってきたワゴン車だと、梨々子は車の影が現れる度に希望と喜びで胸がどくんどくんと鳴っている。


「あぁ、クミちゃん。」


 頭を上げた佐藤は梨々子の目線を追い、水野は既にそちらの方向を眺めているが、青いツナギの三人は三人とも目を見開いているだけで体を硬直させていた。車が一瞬で彼らの真後ろに出現したからである。


「ひかれるー。」


 梨々子にできたのは叫ぶことだけだった。

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