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それこそ警察の仕事でしょう?

 獣道とはあるはずのない道を自分の持つ使役獣を使って作り上げるものであるのだが、幻影の道は術者自身の記憶や心象風景が元になっているのである。

 つまり、術者自身の具現化した精神世界と言ってもよい。


「楊はどうしたんだ?」


「だって、かわちゃんは獣道が絶賛使用禁止中なんだもの。」


「どうしてだ?」


「だって。」


 彼は先月巨大吸血ヒルと言う化け物と遭遇し、退治しなければならない状況に陥ったのであるが、獣道の真髄を知らない彼は、化け物を全部自分の獣道へと移動させて片付けたのである。


「それがどうした?」


「どうしたも、こうしたも。今のかわちゃんの獣道は吸血スライムにエンカウントするロールプレイングの世界なの。キャラクターがレベル一の勇者なのに。」


「レベル一って、お前は本気で酷い奴だな。楊が可哀想だろ。おい、楊もさ、あんなもん、塩をかけりゃあ殺せるだろ。化け物でもただの大型のヒルなんだから。」


「もっと問題なのが、本気で殺したく無いんですよ、かわちゃんは。あれは血を吸った相手の記憶までも取り込んで保持しちゃう化け物だったでしょう。」


「あぁ、全く馬鹿な奴だなお前は。記憶と魂は違うだろ。お前が覚えておきゃあ、死んだ設楽季ふきは満足だろうに。」


 富豪の設楽季ふきが楊に恋をしたまではいつもの事だが、いつもと違いふきは既に死んでいる死人であった。

 そこで楊はふきを成仏させるためにふきと結婚して彼女をただの死体に戻したのだが、楊と結婚した相手はふきの姪の夕夏ゆかであり、当のふきは大昔に死んでいたという真実がある。


 虐待されていた夕夏はふきを殺してしまったが、殺人の罪悪感から財産目当ての親族に唆されるままに自分を殺してふきとして生きていたのだ。


 そんな夕夏に対し、楊は哀れだと今でも執着しているのである。


「しょうがないですよ。かわちゃんは内臓丸出しのヒキガエルだって素手で触ってお墓が作れる人ですから。」


「ちょっと待て、クロ。俺は楊と違ってそれは絶対に無理だ。想像してしまって気持ちが悪い。」


「あ、ごめんなさい。僕も気持ちが悪くなってきた。」


「お前らうるさいよ!」

「きゃあ!」


 楊を抱きしめていた僕は楊が急にしゃがみ込んだせいで彼に引っ張られ、気が付けば楊が床に這いつくばっていた時と殆ど同じ僕達の格好である。


「あぁ、かわちゃん。わかった。わかったから。そっちは僕が探るから、だから、犯人はかわちゃんが見つけて。だから、いい加減に立ち直ってよ。」


 すると楊は答えるどころか、さらに床に這いつくばったのである。


「かわちゃん。もう、どうしたって言うの?」


「玄人君、相手はこんな凄いことをできる相手なんだよ。普通の僕達に犯人の見当を付けられると思うのかい。」


 珍しく悲壮感までも漂わせている髙の顔つきと楊の崩れ落ち具合によると、僕が犯人を手品の様に取り出すぐらいの勝手な期待を彼らは抱いていたようだ。


「えっと、ごめんなさい。僕には普通に無理です。だって、これは警察の仕事でしょう。いつものように普通に証拠から犯人を突き止められなのですか?」


「え?」


「いえ、だって。しでかした術者はこの世に生きている人でしょう。生きていれば普通に生活しているわけだから、この近所の人かもしれないし。それに、術を行うからこそ、術具という自分を特定しやすい持ち物や自分のDNAを残しているんです。だって、ねぇ、かわちゃん。僕達だって。」


 新しい所で危険がある場合は、その目的地の手前に自分の命綱という自分の持ち物を残したりするものなのだ。

 楊は僕を再び転がらせて勢いよく身を起こすと、左手で自分の額をぴしゃりと叩いたのである。


「あぁ、あった。術具あった。畜生!」


 彼は言うが早いか部屋を飛び出して行った。

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