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高3の夏、親友がギターを始めたら、僕らの人生が変わり始めた件 ―Guitar Kids Rhapsody―  作者: 御樹本 正輝


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3/8

3 和気藹々

「林、悪い。この曲、打ち込みできる? お前の16トラックだったっけ?」

「シーケンサー32トラックあるんで大丈夫です。何に使うんですか?」

「君の同郷の先輩がゲリラ・ライヴやりたんだって」

カズヤはヒデキがさも悪人かのように説明する。

「んだよ。オレのせいかよ」


「カズヤさん、余裕ですよ。ドラムもシンセも全部打ち込めます。」

「CD流すより、その方が自然だよな」

「キーボードは僕が生で弾きます。ストリングスやブラスはシーケンサーを走らせれば十分ですよね」

「さっすが、林。それでいこう」とカズヤは肩を叩いた。


「あとは、ミキサー通さないとバランス取れませんよ」

「やっぱりなぁ」

「どうします? どうにかなりますか」

「ヒデキ、タイムテーブル見せて」

ヒデキがステージの時間割をカズヤに渡す。

「直前がカラオケ大会だから、この時にはモニターも設置しちゃいたいな」

「PAって手配できるんですか」

「ここにコレ置いて、こっちに放送部から一人お願いして、ここには...」

ヒデキを置き去りに、林とカズヤの二人でステージ配置を決めていく。

「こいつの多才っぷりは知ってるけど、なぜやたら詳しいんだ?」ヒデキは疑問を感じた。


「じゃ、林はカラオケ大会のスタッフ兼伴奏者みたいな感じでステージに板付な」

「えぇ、いいですよ。途中、合間合間にサウンド・チェックしとけ、ってことでしょ」

「さっすが、優秀だね」

「じゃ、放送部のあいつらに声かけときますね」

「頼むな。よろしく。あと、打ち込み終わったら、コーラスはシンセで重ねられる?」

「そうですね。その方がいいでしょうね」

「時間は大丈夫?」

「僕は平気ですよ。一週間あればお釣りがきます。むしろヒデキさんは?」

「ん? おれ? 呼んだ?」

「いきなり人前で弾くなんて無謀ですねぇ」と林。

「言い出しっぺなんだがら、死ぬ気で練習してもらわなきゃ」とカズヤ。

何気なく口にしたことがかなり大がかりになっていることにヒデキは驚きを隠せなかった。



翌日の昼休み、ヒデキの教室にカズヤが来た。

「OK。練習場所の確保とPAの手配できたぜ」

どうやらカズヤは本気らしい。というか、カズヤはステージ経験があるようだった。

マルチな才能にはいつでも驚かされるが、ちゃんと歌えるのか? ヒデキはそれも不安だった。

ヒデキは腫れた指で、コードを確認しながら、弦を押さえるように動かし続けた。



カズヤは歌詞カードを眺めながら眉をひそめた。

「なあ、Easy Come, Easy Go!のサビの“LADY”ってさ」

「ん?」

「レイディじゃなくて、"レイデー"って歌わなきゃダメなの?」

ヒデキは吹き出した。

「そこがB'zなんだよ」

「カンナちゃんに怒られそうだな」

仲の良い英語教師の顔が頭に浮かぶ。

「『発音違います』って言われそう」

「絶対言われる」

「でも、そこがカッコいいんだよ」

ヒデキは笑いながらギターをつま弾いた。


挿絵(By みてみん)


練習も3日目になると、ようやく演奏らしくなってきた。

「もう一回いくぞ」

ヒデキがギターを鳴らす。

林のキーボードが軽快なイントロを重ね、カズヤが笑いながら歌い出す。


この曲だけは不思議だった。

難しいことを考えなくても、三人の呼吸が自然と合う。

ヒデキも余計な力が抜け、気づけば身体を揺らしながらギターを弾いていた。

曲が終わると、三人とも顔を見合わせて笑った。


「これ、気持ちいいな」

「ライヴでやったら絶対楽しいですよ」

林も珍しく興奮気味だった。


しかしカズヤは首を横に振る。

「でもダメだ」


「え?」

「ゲリラ・ライヴだからな。B'z知らないヤツが多いんだ。『OH! GIRL』じゃ食いつかない」

ヒデキは少し残念そうにギターを見下ろえた。

「一番弾いてて気持ちいいんだけどな」

「だからこそ、今だけのお楽しみってことで」

カズヤは笑って譜面をめくった。

「次は、君の中で踊りたい、な」



「この曲やる時盛り上がってたら、観客の中で歌いたいな」

「リハ無しのゲリラだから、サウンド・チェックができないの恐いですよ」

林は冷静だ。ヒデキは譜面どおりに弾くことで精一杯だったのに、ステージ経験豊富な二人はどんどんアイデアを出してくる。


カズヤの提案で、英語詞はカズヤ、日本語詞はヒデキと林が同時に歌うことになった。

「もしかしたら、カンナちゃんに褒めてもらえるかも」

そんな軽口から始まった遊びだった。

ところが実際に合わせてみると、英語と日本語がリズムの中で絡み合い、誰も予想していなかったグルーヴが生まれた。三人は顔を見合わせて思わず笑った。

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