2 千思万考
ヒデキが寮内を駆け回って、CDを集めてきた。
「どの曲やるか決めようぜ」
CDを手に取りながらカズヤが不審そうに訊く。
「これ、なんて読むん? びーぜっと?」
「ば~か、B'zだよ。ビーズ。知らないの?」
「誰? ベトナム人?」
「ゲリラでやるから、極力知ってる曲を選んだ方がいいぜ」
とカズヤが提案し、シングル曲を中心に選曲を始めた。
「ってお前、曲知らねぇじゃん」
「知らない」
「俺も全部弾けるわけじゃない」
「歌知らないヴォーカルと初心者のギタリスト、終わってんな、このユニット」
「30分の空き時間と言っても、フルには使えないから20分ぐらいのリストにするか」
とカズヤが曲名と時間を書き出す。ヒデキは横で見ているだけだ。
「派手なギター・ソロのある曲とかあった方がいいんだろ?」
「この曲とか、盛り上がって観客とコール&レスポンスが成立するといいけど、冒険だな」
「つーか、ビーズって有名なの?」
「お、この曲聞いたことあんな」
カズヤはぶつくさと言いながらラインナップを組み立てていく。
「ちなみに日付はいつだっけ?」カズヤが訊く。
「10月5日、土曜日の午後3時だ」
「へぇ……それは面白い」
「何が?」
「秘密」
カズヤはそう言って、何かを企んでいるようにニヤリと笑った。
「お前、歌えんの?」今さらのようにヒデキが訊く。
「さあ?」とカズヤはとぼける。
「こんな感じでどう?」とカズヤはCDを入れ替えながら順番に流す。全5曲の構成だ。
「OK。じゃ、練習すっか」とヒデキはギターを抱えた。しかしカズヤは諭すように言った。
「いや、無理だろ」
「ん?」
「俺たち二人で、このビーズをやるのは無理だよ」
「なんで?」
「もう一人必要なヤツがいる」
「誰?」
「キーボードが必要だ。林がいなきゃムリだ」
「あいつ、そんなに上手いの?」
「腕じゃない。ライヴを成立させるには、あいつが絶対に必要なんだ。だから呼んできて」
「えっ、今?」
カズヤに言われ、ヒデキは1年生の林を部屋に呼び出した。




