1 一念発起
カズヤが寮の部屋に戻ると、ヒデキは一心不乱にギターをかき鳴らしていた。
いつの間にギターなんか持ち込んだんだ? とカズヤは不審に思った。そんなことなどお構いなくヒデキはCDに合わせてギターを奏でる。吉川晃司と布袋寅泰のユニットCOMPLEXの曲だ。どうやらヒデキは布袋のギターに魅せられたらしい。カズヤは声もかけずに、隣の席でノートを広げ、解きかけの数学の問題に手をつけた。
「やっぱ布袋は最高だよ」とヒデキが声をかける。
カズヤは「悪いもんでも食った?」とは言わず「そうだね」と軽く答えた。ヒデキは返答などどうでもよく、この夏の布袋との出会いを勝手に熱く語り始めた。カズヤは聞いているふりをして、数学の問題に取り組んでいた。
「………、と思うんだけど」
「いいんじゃない」カズヤはロクに話も聞かずに相槌をうった。
「そっか。お前が賛成なら話は早い。じゃ、何やろうか」ヒデキは興奮している。
どうやらヒデキは人前で演奏したいけど、一緒にやらないか、と言ったらしい。
「オレはギター弾くから、お前は歌えよ」
「つーか、何やんの? いつ? どこで?」
「来月の学園祭で30分だけステージ空いてんだよ」
「それで?」
「カラオケ大会とMr.レディ・コンテストの審査の時間だから、お客さんを帰さないようにパフォーマンスが必要なんだよ。だからライヴしようぜ。一度でいいから、大勢の前でギター弾いてみたいんだ」
「ふーん。で、男二人で何やるん? オレは楽器持たないよ」
「チャゲアス?」
「カラオケで『SAY YES』のエントリー多いぜ」
「COMPLEXは?」
「オレに吉川晃司をやらせる?」
「じゃ、BOΦWYにする?」
「それは4人揃わないと不評だろ?」
「ならビートルズもなしか」
「なんか無いの? 男性二人でヴォーカルとギターって組み合わせ」
「だから、COMPLEX」
「だから、吉川晃司はやだ。♪ラ・ヴィアン・ローズ!ってダイヴさせる気かよ?」
「文句の多いヤツだなぁ。しょうがないなぁ。じゃあ...」
「じゃあ?」




