67話 剣闘場
前話の最後あたりの会話、少し変更しています。
大筋は変えていないです。
いつも読んでいただいている方々、ありがとうございます‼
【セイラン・マルティネス皇女との決闘に勝利せし者に5000万クリンを贈与する。決闘を挑みし者はわたくし、セイランに声をかけるように】
「ブハ!何ですかコレ‼」
わたくしがイバンに連れられて自身の教室に向かうとそこには明るい茶髪にオレンジ色の瞳の男、ミック・ヒンクリーが居た。
挨拶もそこそこにわたくしが早速教室の目立つ場所に張り付けると、ミックは大笑いを始めた。
「何って見て分からないかしら?わたくしに決闘で勝てば5000万クリンが手に入る、悪い条件ではなくってよ?」
5000万クリンというと、豪勢な屋敷が王都で一件造れるほどの値段。
もちろんこのお金は帝国皇室の物ではなく、わたくしが騎士として名声を得た物と帝国に行くときに持って行った装飾品を売ったお金の総額。
「いやいや、条件っつーか何で決闘なんてするんですか?カイゼルから少し聞いていたけどやっぱスゲェ面白いですね、セイラン様」
「おい、カイゼル殿下とは友人関係だから良いにしてもセイラン様にはちゃんとした言葉遣いをしろ」
「へいへい、裏切り者は口うるさいねぇ~」
飄々と返すミックにイバンは一瞬本気で切れかかっていた。
仲が悪いのか良いのか分からないわね。
カイゼルが居るから上手く回っている様なものなのかしら?
「わたくしの一番の売りは強さと傲慢さでしてよ。カイゼルの様に倒す敵が居れば別だけれど居ないなら目立って目立って目立つことこそが人気につながると思うの、皆強い人は好きでしょう?
それよりもミックかイバン、貴方達計算には強い方かしら?」
わたくしの質問にミックとイバンは顔を見合わせた。
「……ある程度は」
「ま、それなりには出来ますけど俺達結構忙しいんですよね。俺達が仕えたいと思っているのはカイゼルであってセイラン様じゃないですし。
良ければ計算に強くてセイラン様に恩を売りたくて、うずうずしているヤツを知っているんで紹介しましょうか?」
「あら、いいわね。紹介して頂戴な!」
そして、授業がつつがなく終わり、昼食休憩に紹介されたのは公爵家嫡男、茶色い髪に茶色い瞳のブレント・ベナーク。
「お初にお目にかかります。セイラン・マルティネス皇女殿下。カイゼル殿下の友人、ブレント・ベナークと申します。お気軽にブレントとお呼びください」
第一印象はニコニコとして胡散臭そうな男。
ブレントは不躾にならない様に気をつけながらもわたくしをじっと品定めしている様だった。
「カイゼルに聞いているわ、たしか愛する人が居るとか」
「へぇ!ありがとうございます‼カイゼル殿下に恩を売った甲斐がありました。それで今日はどういった内容でしょうか?」
「わたくし、貧民街に剣闘場を作りたいの。もう貧民街の土地は手に入っているけれど、掛け率だとか剣闘場を造るために必要な書類やお金のことをしてくれる、わたくしの補佐を探しているの。貴方、興味は無いかしら?」
本来なら一番信用が置けるという意味でライナスが補佐としたいが、ライナスは実は計算方面が苦手。
そしてわたくしも少し苦手なため、事務処理等を引き受けてくれ、またグラス王国に精通していて影響力のある者を探していたのだ。
ブレントはわたくしをじっと見つめ、顎に手を当てて考えた。
「剣闘場……それも貧民街に?造れたとしても治安も悪く、人が立ち入ることは出来ません。利益は見込めませんよ?」
「治安はこれから良くするわ。わたくし、私設兵団を置くつもりなの。その者達に客の護衛をさせるわ」
「……私設兵団、しかもこれから……その、こう言っては何ですが、少し現実が見えていないのでは?これから募集をかけたとして貴方についていこうと思う者がどれくらいいるか……」
案外良い人みたいね。
第一印象の胡散臭さは消え、今はわたくしのことを気づかい言葉を選んでいるようだった。
ブレントの言葉に隣に居るミックとイバンもコクコクと頷く。
「私設兵団は募集をかけるつもりは無いわ。今日狩りに行って良さそうなのが居ればわたくしから声をかけるつもりでしてよ!」
「「「狩りに??」」」
フフン!と自慢げに言い放つと男三人とも首を傾げる。
その様子がまるで小鳥がそろって首を傾げているように可愛くて笑ってしまった。
思っていたよりもずっとこの学園生活は楽しくなりそう。
これでカイゼルが一緒に居てくれたら最高だったんだけれど……。
放課後、わたくしは団服に着替え、貧民街を馬車で走行していた。
結局朝の一件以外声をかけてくる者も無く、件の三人以外はわたくしを遠巻きに見ているだけだった。
もちろん決闘の申し込みも無い。
わたくしのすることに興味があるということでイバンとブレントはわたくしの狩りに同行することになった。
ミックだけは用事があるとかで来たがっていたが、後からイバンから詳細を聞くと言っていた。
「やー姫さん登校初日で男二人引っかけてくるとは、殿下妬くんじゃねぇの??」
「二人ともカイゼルの知り合いでしてよ。問題無いわ」
「お二人はカイゼル殿下の居場所をご存じなのですか?聖女様とは噂になっていますが登校してこないので……殿下は無事でしょうか?」
ブレントに聞かれてわたくしはライナスと目を合わせた。
「さぁー、どっちでしょうねーってのが答えですね」
「なるほど、ではこの話はここまでにしましょう」
特に敵意も何も無いのかしら。
ライナスの魔法は人の心を読む。
ブレントが何か意味があって探りを入れてきているなら相応の態度を取るだろうけど、彼の態度はどちらとも言えない。
チラリと見ると、イバンは平然としている。
のんびりと二人の様子を伺っていると突然、馬が激しくいななき馬車は止まった。
「おら降りろ貴族野郎‼‼」
「死にたくなけりゃ出てきて命ごいするんだな‼ギャハハハハ‼」
「出てきても殺すかもしんねぇけどなぁ‼」
ゲラゲラと下品な笑いと共に、馬に乗った集団の人影が馬車を取り囲む。
馬車のカーテンを閉めているせいで人影しか見えないが、気配から察するに20人は居る。
「じゃ、行ってくるわ。ライナス、二人の護衛頼んだわよ」
「へいへい、行ってらっしゃい」
わたくしが軽く声をかけ、ライナスが気の無い返事をする。
「ちょ、ちょっと待ってください‼何を!」
「まぁまぁ、お坊ちゃん方、ゆっくり見てなって」
激しく動揺しているブレントをライナスが宥めるのを他所に、わたくしは迷いなく馬車から出てまた扉を閉めた。
後ろの馬車では急いでカーテンを開けて、こちらの様子を伺っている気配がする。
「ギャハハハハ‼いいねぇ!こりゃ上玉じゃねぇか‼」
「おねぇちゃん騎士の恰好してどこ行く気だったんだい??」
ゲラゲラとした下卑た大合唱の中、わたくしはゆっくりと周囲を見据えた。
「答えなさいな!貴方達の親玉はどこかしら?一番初めに答えた者は手加減してあげましてよ‼」
「ハハハハハ‼‼自分からお頭の所に行きてぇってか??」
「いいぜ、連れてってやるよ‼その前に俺達でちょっと味見してから……グッ‼‼」
男の手が触れる瞬間、わたくしは身を縮め思いきり男の腋を剣で殴った。
追い風の魔法を剣に乗せたことで相当な衝撃があったらしく、男は息も絶え絶えに膝をつく。
だが、一滴の血も出ていない。これからは人と戦うことが多いとなった時、わたくしは片方の刃を潰したのだ。
「フフフ!いきなり倒れ込んでしまったわ?野盗だか強盗だか知らないけれど、貧民街の男は弱いのね??」
わたくしがクスクスと嫌味ったらしく笑い煽ったのに対し、男達は無表情にわたくしを取り囲んだ。
「あら、結構教育は行き届いているのね!お頭に会うのが楽しみになってきたわ‼」
19対1、傍から見ると完全に劣勢の中、わたくしは微笑みながら剣を握りなおした。
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