57話 友人よりももっと近しく
お待たせしました!第二章始まります‼
ただちょっとスロースタートぎみに行きます。
「〝家族〟での食事は楽しいなぁ」
パース帝国皇宮で、現皇帝スコット・マルティネス陛下がわたくし、セイランをニコニコ見つめながら呟いた。
「本当に、こんなに可愛らしい娘が出来るなんて夢にも思いませんでしたわ!」
皇后ウルス・マルティネス陛下も皇帝の言葉に頷きながらわたくしを熱っぽい瞳で見つめてきた。
「そうですね父上。兄二人が婿入りして以来いつも三人きりの食事でしたからね。皇宮はどうだ?セイラン」
にっこりとケビン皇太子もわたくしに笑いかける。
「…………なんだか違和感があって……ケビン皇太子、わたくしやっぱり騎士団の宿舎の方が」
「皇太子??」
ケビン皇太子が意味ありげに笑みを浮かべる。
ここにカイゼル達は居ない。今日はわたくしが〝家族になった〟記念すべき初日として小さな赤紫色のドラゴン、コーディ同席のもとマルティネスの名を持つ者だけで夕食を食べている。
「…………ケビンお兄様、少し悪ふざけが過ぎるのではなくって??」
わたくしが少々苛立ちを混ぜて言うと、ケビン皇太子はククッと笑った。
「悪い、だがその呼び方は慣れろ。俺が楽しい」
「わたくし、ケビン……お兄様の楽しみのために養子になったわけじゃなくってよ?」
「ふふ、何だか本当の兄妹みたいで微笑ましいわ」
「そうだな、女の子が居なかったからこんなにも花がある家族の食卓は初めてだ」
「あら?それはどういう意味かしら?」
ケビン皇太子はわたくしが困っていることを喜び、皇帝と皇后はそちらで何やらほのぼのとした喧嘩を始めようとしている。
何だか、不思議な気分だわ。
家族にも色々あるのね。
本当の両親とはこんな他愛ない話などする中ではなかったし、何より一緒に食事をとる事がそもそもほとんど無かった。
事の発端は1週間前。
カイゼルと口約束の婚約をした次の日、わたくしとカイゼルはケビン皇太子に呼ばれた。
いつものガゼポ兼書斎ではなく、謁見の間に呼ばれ緊張して中に入って見るとそこにはニコニコと微笑みを浮かべた皇帝陛下、皇后陛下、そして不敵な笑みを浮かべたケビン皇太子が居た。
「やぁ、よく来てくれたね純白の悪女、セイラン。話は聞いたよ我が息子を振ったとか??」
「は……その……」
クスクスと笑いながらケビン皇太子と同じ銀髪に水色の瞳の皇帝陛下はわたくしを見つめながら言った。
皇帝の言葉を聞いた瞬間、隣のカイゼルの目つきが変わった。
「陛下、発言をお許しください」
「うん、許さないよね。大事な息子の思い人を奪っておいて何を言うつもりなのかな??」
字面だけ見ると、とても怒っているように見えるがそうではない。
皇帝陛下は真っすぐに自分を見つめるカイゼルを面白そうに見ている。
カイゼル、本当に強くなったわね。
「プッ!ハハ‼父上、戯れはその辺にしましょう、この二人をいじるのは確かに楽しいですが話が前に進みません。
セイラン、単刀直入に言う。俺の妹になれ」
「「はい⁉」」
つい、カイゼルと共にいつもの調子で返してしまい、すぐに皇帝陛下、皇后陛下を見ると二人とも笑っていた。
「いいか、まず俺がお前を好いていることは帝国の人間ならほとんどの人間が知っている。そんな中、俺を捨ててカイゼルを取ったとなると周囲はどう思うのか考えてみろ
きっとセイランとカイゼルを恨む。俺は帝国で平民にも貴族にも愛されているからな」
…………事実ではあるけれど、愛されていると自信満々に言えるのは何というか、すごいわね。
流石に皇帝と皇后の前なので本音は言わず、こくりと頷いた。
「だから筋書はこうだ。俺はセイランの素性を調べた。すると驚いたことに実は腹違いの妹だった!セイランも俺を慕ってはいるが、流石に血がつながっていては婚姻など結べない。
そして皇宮に迎え入れた後、友人のカイゼルが俺を訪ねた際に二人の婚約が決まった」
「……発言してもよろしいでしょうか?」
わたくしが問うと、皇帝陛下は鷹揚に頷いた。
「まず、わたくしはグラス王国の出自となっているのだから無理がありますわ」
「俺はセイラン・アーヴィンとセイランが同一人物だと認めた覚えは無いが、セイランはあるのか?それと、俺に敬語はいらん」
「認めた覚えはなくってよ」
「なら問題無いな。勝手な推測をされたからと言って俺の発言が覆せるとは思えない」
「……それに、皇帝陛下、皇后陛下の名誉が」
「問題無い、父上は元より恋多きお方だし母上もそれは承知している。今さら一人や二人増えたところで平民の話の種にもならないな。
なんだ俺と友人にはなりたくても妹になるのは嫌か?
皇女となればカイゼルとの婚姻も政治的な意味をもたせられるし、何よりグラス王国に大手を振って戻れるぞ。命の心配もいらない、正式な皇女が死ねば国際問題だからな」
……確かにそうね。
ただの思いつきでやっているようでやはりケビン皇太子は抜かりない。
己の名誉とわたくしの名誉と安全、全てを保証する案をたった一日で提案してくれるなんて。
「分かりましたわ、そのお話、謹んでお受けいたします」
わたくしが団服のため、胸に手を当ててゆっくりとお辞儀をするとケビン皇太子は満足そうに頷いた。
提案を受けてから一週間後、正式に書類を交わし、わたくしは名実ともにケビン皇太子の妹となった。
「セイラン!これからは俺のことはお兄様と呼べ。カイゼルも俺を義兄上と呼ぶように」
喜々として呼び方を決め、勝手にわたくしの住んでいた宿舎の部屋から荷物を運ばせ皇宮に移してしまった。
そしてわたくしとケビン皇太子との悲恋物語で町中大騒ぎになっている。
一歩町に出れば町の皆はわたくしを涙目で見つめて、仲の良い人達は抱きしめてくれた。
何だか心が痛いわ……。
騙している様ないたたまれない気持ちになりながら、ありがとうとだけ返す。
この状態ではカイゼルと町を歩くなんて不可能だ。
不思議な気分の夕食が終わり、わたくしは皇宮の用意された自室へと入った。
「セイラン様、お着替えを」
そこには見慣れたそばかすと茶色い髪と目のハンナ。
カイゼルがこちらに来る際に連れてきてくれたらしい。
「フフフ、違和感のある場所でもハンナが居ると落ち着くわね」
「そう言っていただけると何よりです!」
ハンナは着替えを手伝ってくれて、髪を丁寧に梳いてくれる。
「……ねぇハンナ?わたくし、どうしたらいいのかしら」
「どう、とはどういうことですか?」
髪を梳いてもらいながら、わたくしはグラス王国の方角を見つめた。
来週、カイゼル達は帰国する。わたくしはグラス王国に入る申請が必要なので二か月後に入国することになる。
「わたくし、この帝国ではとっても大事にしてもらっているの……それは全てケビン皇太子のおかげ。でもカイゼルが本当に王位を継いで、結婚するならわたくしはいずれ王妃になるわ。
わたくしは誰にでも好かれる性格じゃないし、グラス王国では嫌われている。
カイゼルの足を引っ張らない様にするにはどうしたらいいのかしら」
「んー、そのままで良いと思いますよ?セイラン様はケビン皇太子のおかげって言いますけどセイラン様が頑張ったから今の人気があると私は思っています。
皇宮の使用人達も言っていましたよ、セイラン様は物語の王子様みたいだから好きなんだって」
「も、物語の王子様???」
わたくしが目を丸くして問いかけると、ハンナは優しく頭を撫でてくれた。
「どんな時も視界に入った者は見捨てず助け出す、勇ましく気高く、美しい、その物語の様な姿が皆大好きだって言っていましたよ」
ハンナの声も手もとても優しい。
全てが本当のことを言ってくれているのだとは思う。
でも……。
剣の技術だけで解決できることなんて、グラス王国では無いに等しい。
それに、わたくしが見捨てられなかったからこの前死にかけたのだ。
カイゼルが助けてくれなかったら、子供もわたくしも死んでいた。
「ありがとうハンナ。でもわたくし、グラス王国でわたくしの全ては通用しないことはもう経験済みなの。どうにかしなくてはいけないわ……」
言っていて悲しくなってきた。
わたくしは今自分を偽ることを考えている。
それは今のわたくしを否定すること、それってわたくしは要らないということになるのではないかしら。
「う~ん、では!未来の旦那様に相談しませんか??」
「み、未来の旦那って……でもカイゼルに相談しても……」
「いいじゃないですか‼甘えるチャンスですよ‼目一杯甘えて、一緒に問題を解決すればより愛も深まります‼‼」
ハンナは自信満々に拳を握りしめた。
そういえば、ハンナは恋愛規準で物を考える癖があったわね……。
甘える…………わたくしに出来るかしら。
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