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番外編 セイランVSケビン皇太子

ケビン皇太子がなかなか戦う機会が無いので出してみました。

これは、カイゼル達がパース帝国に来る少し前のお話。

ケビン皇太子に呼ばれ、わたくしがお茶に付き合っているとき。


「……そういえば、ケビン皇太子って剣を扱えると聞いたことはあるけれど見たことは無いわね?本当に強いのかしら?」


「なんだ、気になるのか?」


ニヤリとケビン皇太子が笑った。


彼なら出来ないことは無いという思いと、彼なら全くできないことであっても、さも優れている様に吹聴することも出来るのではないかと思ってしまう。


「……気になるわ、実際どうなのかしら??」


「では勝負をするか。俺が勝ったらセイランは一日俺の侍女をしてもらおう。セイランが勝ったらグラス王国に関すること以外何でも願い事を一つ叶えてやる、まぁ基本セイランからの願いは断らないがな」


これは……ここまで自信があるということはやっぱり……いえ、逆かもしれないわ。


騎士として草むしりや掃除はしても侍女業をするのは元公爵令嬢のプライドが許さない。

わたくしが悩んでいるとケビン皇太子がククッと笑った。


「怖いのか?野獣部隊副隊長、その地位は色仕掛けで手に入れたのか??」


「色仕掛けなんて冗談じゃないわ‼わたくしは実力でこの地位に就いた!怖くなんて無くってよ‼‼」


「素直でよろしい。では俺はそんな副隊長様相手なのだから魔法有りでいいな?」

「もちろんでしてよ‼‼」



いつの間にか剣の実力ではなく、戦闘の実力にすり替わっていることをわたくしは気がつかなかった。






そして場所は変わり、演習場。

ベア隊長が取り仕切り、一方が参ったと言う、もしくは急所に寸止めされる、この2点が勝敗を決めることになった。


それはいいのだけど……。


先ほどからわたくしは不安で仕方が無かった。

やけにニヤニヤしたケビン皇太子、わたくしを憐れな目で見て拝んでくるホンザやその他野獣部隊の面々、極めつけはベア隊長の指示でなぜか水桶が用意された。


「セイランちゃん、無理はしないこと。いいね?ちょっとでもきついと思ったら参ったと言えばすぐに試合は終わるから。ちなみに今演習場の裏手は人払いして誰も居ないからね?」


「え、えぇ。分かりましたわ」


なぜか切々と言ってくるベア隊長にまた不安が押し寄せる。

一瞬ケビン皇太子の策かと思ったがそうではなく、本気で心配されている気がする。


彼の魔法は幻を作る。

知っていればどうってことのない魔法のはず……。


「では……はじめ‼‼」


ベア隊長の号令とともにわたくしは駆け出し、そしてよろけた。


「はぁ⁉な‼‼」


わたくしが駆けだした次の瞬間には世界がグルグルと不規則に回りはじめ、自分が今真っすぐ走っているのかそれとも右か左に寄っているのかも分からなくなった。


き、気持ち悪い‼‼


グルグルと回り続ける視界に、次第に胃の中の内容物がせりあがってくる。


そして一瞬にして視界は真っ暗になり、後ろにケビン皇太子の気配がして剣を構え、彼の力を逃がしながら受ける。


チリリと軽い金属音が鳴る剣をケビン皇太子は珍しそうに見た。


まだまだ余裕ということね。


想定外の魔法の使い方。

でもそんなもの、眼をつぶって戦えば何の問題も……。


キャリキャリキャリ‼‼


「な、何の音⁉」


わたくしが目を瞑ると聞き慣れない甲高い音に驚き目を開ける。

すると、ケビン皇太子の剣は足元、寸でのところで跳んで躱すがその選択は良くなかった。


地に足がついていないと余計にどこが上でどこが下か分からない。

そして更に気持ち悪くなってくる。


騎士であっても淑女として、公衆の面前で吐くわけにはいかない。

わたくしはせりあがって来たものをグッと堪え、よろめいて着地しながらケビン皇太子に向かった。


要は視界に惑わされなければいいのだ。


頭の中は吐き気と吐くわけにはいかないという事でいっぱい。

気配を読む余裕などなかった。


わたくしが下から剣を振りぬくのに対してケビン皇太子はそれを受け止めようと構えた。


刃を滑らしてそのまま胴に当てれば‼勝てる‼‼‼


と、確信した瞬間、首筋に嫌な予感がしてわたくしは身を引いてのけぞった。

そのまま勘に従い左足で正面を蹴ると、ケビン皇太子とは半歩分距離があったはずなのに何かが足に当たった。


蹴った感覚からして当たったのは剣の柄。


‼‼‼わたくしが見ているよりも実際はケビン皇太子、半歩前に居るのね‼‼


タネが分かればこちらのもの。

わたくしは蹴った反動そのままに回転して、気配的に首があるだろう場所に剣を突きつけた。


「寸止め、でしてよ。降参なさいな」

「ハハハハハ‼‼参った!まさか初見で負けるとはな‼」


子供の様に爽快に笑いながら、何も無かったところにケビン皇太子が現れる……が、わたくしはそれどころではない。

ケビン皇太子の負け宣言を聞くや否や、事前に用意されていた水桶をひっつかみ演習場の裏手へと走った。


そして、吐いた。

自分から出してしまった物を水桶で流し、口もすすぐ。


先にベア隊長が気をまわしてくれていなかったら、わたくしは淑女としてとんでも無い大恥をかいていた。


ベア隊長、今度美味しいお肉でも進呈するわ。







「で、願いは何にする?」


わたくしが戻ると、ケビン皇太子は開口一番聞いて来た。


「……そうね……」


体調不良で回りにくくなった頭を捻るが特に思いつかない。

わたくしはここではやりたいことはやらせてもらっている。不満も特に無い。


「じゃあ、騎士団に慰労会をしてちょうだいな。特にベア隊長には日ごろの感謝と今回の感謝を込めて上等な酒と食事の用意をお願いするわ」


「いいのかい?セイランちゃん」

「お!悪女分かってんじゃねぇか‼」

「いいねー、悪女様‼」


皆が囃し立てる中、ケビン皇太子は眉をひそめた。


「いいのか?グラス王国に関すること以外なら、本当に何でも叶えてやれるぞ?」


「フフフ!いらないわ‼わたくし、今はとても充実しているの。それともカイゼルに会わせてくれるのかしら?」


「却下だ。まぁ分かった。なら明後日の夜慰労会を行う、楽しみにしとけ」

「えぇ、よろしく頼むわ」


一番欲しかったものは叶った。

もし、これ以上を望むならわたくしはカイゼルに会いたい。


そう願い、この時はまだカイゼルが自分から国を越えてまでやってくるなど、思いもしなかった。


面白い!続きが気になる!と思っていただけたらやる気につながるためブックマークや評価をお願いします‼<(_ _)>


既にしていただいた方、ありがとうございます‼


次回からは本編に戻り、第二章が始まります。

1~2週間期間が空きます。


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