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31話 謝ろうと思ってたのに


ケビン皇太子が出て行ってしばらくした後、俺は騎士団に来ていた。


王宮のすぐ隣にある騎士団ではもう夜に近い夕方だというのに、演習場で皆が剣を振るって打ち合っていた。


激しい金属音と怒号、そして熱気に圧倒されながらもドミニクにくっついてアスラン騎士団長の元に向かう。


演習場の中心で大隊長のアーロン相手に打ち合っていた騎士団長は俺達に気がつくと、遠目に居た副団長に目配せをしてからすぐにこちらに来てくれた。


「カイゼル殿下!こんな所にわざわざいらっしゃるなんてどうされましたか??」


以前はセイラン絡みだったからか、少し気さくな雰囲気だったのに今は何となく突き放されている気がする。


俺としても肩をはずされたことへの恐怖から一歩引いてしまいそうになる。

あの後、自室に戻ってから元に戻してくれたけどとても痛かった。


……そういえば、彼はセイランが生きていることをライナスから聞いているのだろうか?



「えっと、護衛を増やしてほしくて来ました。その……アスラン騎士団長はセイランが生き」


ヒュゴッ!と音がして俺の顔スレスレに騎士団長の拳が放たれた。

拳で出来た風で髪の毛が舞う。


なんだかセイランも似たようなことをしたことがあったな。


「失礼蚊が居たもので。時に殿下、先日亡霊が無事に天国へ行きまして、そのことについて殿下からも祝辞をいただきたいかと思います」


……これは。

知ってはいるけどセイランが生きていることは言うな。

帝国に居る方が幸せだと遠まわしに言われているのか。



「悪いが祝えません。それよりも護衛を増やして欲しいんです、ドミニクだけでは大変だろうしライナスは除名処分でしょう?誰かいませんか?」


じっと騎士団長は俺を見下ろした。

茶色い眼光が俺を突き刺し、責めるように睨んでくる。


「申し訳ございませんが、カイゼル殿下に協力することは陛下の不興を買うことに繋がります。私の弟子を殺し、息子を除名処分にさせた貴方に私が協力する理由がどこにあるのでしょうか?」


「…………」


彼は多分、ライナスから聞いて今回のことがケビン皇太子の差し金であることは知っている。

それを差し引いても俺に力があればと言いたいのか……。


「じゃ、じゃあ騎士団長が選ぶのではなく俺の護衛をしたいという騎士が現れればその者を護衛にしてもいいですか?」


「いいえ、殿下に与することそのものを陛下は嫌がっています。そこに居るドミニクでさえ外そうと思いましたが、息子の最後の頼みでしたのでそのままにしているだけです。お引き取りを」


取り付く島もないな。


俺はため息を吐いた。


「……分かりました」


あそこまで言われてはドミニクすら外されかねない。


でもドミニクの負担もあるがこれから動くに当たって次の標的になりそうな侍女達に何かあった時、国外に逃がしてくれる様な人材が欲しい。



演習場から王宮へ歩いていると何か透明な物が転がってきた。

持ち上げてみると冷たい。


「氷?」

「殿下、右です」


ドミニクに言われて右側を見ると、そこではオスカー小隊長が騎士の宿舎の前で手招きをしていた。

近づいてみるとオスカー小隊長はささっと周りを確認して宿舎の中に俺を招き入れる。


「久しぶりですね!情熱殿下‼臥せっているって聞いていましたが体調はもういいんですか?」

「あ、あぁ。ありがとう大丈夫だ」


俺のセイランへの誓いにいたく感動し、情熱殿下とあだ名をつけたのは彼だ。

今ではその響きがとても懐かしく思えた。


「それで今日はまた何でここに??……ていうか、もしかして亡霊ちゃん生きてます?」

「なぁ‼」


叫びそうになったところをすかさずオスカー小隊長に顎を掴まれて口を塞がれた。


君ら、セイランも含めて乱暴過ぎないか……。


「すんません、やっぱそうなんですねー。

いやぁ、ライナスの亡霊ちゃん好きはやばかったんで、俺てっきり懲罰房から出たらライナスは陛下を殺しに行くと思っていたんですけど、そんな素振りなくさっさと消えたんでそうかなーと」


のんびり話ながら、俺の顎から手を離してくれた。

少々痛む顎をさすりながら答える。


「あぁ、そうなんだ。多分彼女はパース帝国に居る。俺がそっちに行くためにも護衛を増やすことを頼みに来たんだが断られてしまって……」


「なるほど?それで腕の立つヤツが欲しいけどそんなあてが無い!どうしよう‼ってところですか?」


何だか嬉しそうにオスカー小隊長は言う。


「あ、あぁ」


「いやぁ!俺が忘れ物してよかったですね?情熱殿下‼‼丁度この前騎士団を辞めていった将来有望だったヤツが居ますよ‼」


「ほ、本当か⁉でも何で‼俺に手を貸せば陛下が、それに騎士団長からも目をつけられるんじゃ……」


「亡霊ちゃんが殿下のことを好きだからですよ。俺、夜会の時に聖女の護衛をしていたんで陰ながら二人のことを見ていたんですけど、いやぁ、こっちが恥ずかしくなるくらいラブラブですね‼」


ムフフと女性の様に手を口に当てながら、オスカー小隊長がにやける。


「ラ……え?セ、セセセセイランが俺のことを⁉す、好き⁉」


そんなことあるのか⁉

いや、セイランは俺を選んでくれたけれど、でも恋かは分からないとは言っていたし……。


顔中に熱が溜まっていくのが自分でもわかった。

その様子を見てオスカー小隊長が目を瞠る。


「ありゃ⁉亡霊ちゃん言えなかったのか!うわ!今の無しでお願いします‼てっきりもうそういう関係かと思ってたんで‼まぁそんなわけで俺は応援してますよ!そのうち人を送るんであとは殿下が決めてください‼じゃ!」


一気に話すとオスカー小隊長は走って出て行ってしまった。


護衛の件が片付きそうで本当にありがたい。

俺の周りにはいい人ばかりだ。


というか……。


俺は両手で顔を覆ってしゃがみこんだ。

ドミニクが焦って心配してくれたがそれどころではない。


セイランが、本当に俺のことを好きだったらと思うと心臓がもたない。

彼女は俺にとって大事な婚約者で、愛する人で、でもこの気持ちは一方通行だと思っていた。


いや、どこかで期待はしていた。けど……。


「ああああぁああ!次に会った時どんな顔をすればいいんだ‼‼」


次に会った時、謝ろうと思っていた。


弱くてごめん。

守れなくてごめん。

助けられなくてごめん。


でもこれからは俺が君を守る。

だから信じてこの手を取って欲しいと。


そう言ってセイランが許してくれるまで謝罪をくりかえそうと思っていたのに……。


もし‼もしも‼‼‼


その時にセイランに熱っぽい瞳で見られたらにやけない自信が無い‼‼



オスカー小隊長、護衛の件は大変ありがたいがなんて爆弾を落としてくれたんだ。


俺はその後、半分にやけながら、赤面しながら自室へ戻りサマンサとメリーに軽蔑の目で見られた。


仕方がないじゃないか。

セイランが俺を好きだなんて夢にも思わなかったんだから。


面白い!続きが気になる!と思っていただけたらやる気につながるためブックマークや評価をお願いします‼<(_ _)>


既にしていただいた方、ありがとうございます‼


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