30話 カイゼルの進歩
しばらくカイゼルのターンが続きます!
セイランを取り戻す‼
そう決意したはいいものの……。
今、俺の目の前では優雅に紅茶を飲むケビン皇太子が座っている。
「ハハハ!棺の中に野菜か!カイゼル殿下はなかなに愉快な方のようだ!」
「貴方が仕組んだんでしょう⁉セイランを返してください‼」
王立学園に2か月間の留学に来ているケビン皇太子を放課後に校門前で捕まえ、自室に連れてくることは出来たのだがセイランの棺に入っていた野菜を突き出しても彼は笑みを崩さない。
ちなみに俺も夜会が終わってから学園に編入予定だったが、セイランが居なければ行く意味が無いと思い無断欠席をし続けてしまっている。
「証拠はあるのか?」
「だからここに‼この野菜が」
「プッ!やはり無能は無能だなぁ?それをお前が捏造した証拠じゃないと誰が断言できる??愛した女の死を受け入れられないポンコツ王子、大衆には受けるだろうな」
「…………」
俺がグッと下唇を噛んで黙ると、ケビン皇太子は不敵に笑った。
「セイランが俺を振るほどの男がどんなものかと思ったが、やはり噂通りただの虫けらだったな」
彼はいつから仕組んでいたんだろう?
あの魔物は?セイランの動きは??
ドミニクから俺が居なくなった後の夜会の実情を騎士団目線で聞いて、俺はセイランらしいと思った。
彼女は誰かを助けるために自分を悪とすることがままある。
でもあの時、セイラン自身でさえすぐに悪女を演じることを思いつかなかった。
だったら例え魔物を知っていたとしても、その後のセイランの動きは予想外のはずだ。
それなのに状況を見て即座に己の有利に運ぶように動いた。
これが〝王者として優秀〟ということか。
ケビン皇太子は紅茶を一口飲むと、背をソファに預けてリラックスした。
「一つ物語を語ってやろう
あるところに白い獅子が居た。
その獅子は村人から嫌われていたが、たった一匹の小さな羽虫には好かれた。獅子は羽虫の弱さや己を好いていることに愛着を感じ2匹は心を通わせた。
その後に現れた王が獅子を見初めたが、獅子は弱い羽虫から離れられず嘆いていた。
誰がどう見ても王と獅子の方がお似合いなのに、羽虫は弱さを武器に獅子を縛りつけ、あげくそのせいで獅子は村人に殺されてしまったらしい!
愚かな羽虫が居なければこんな最悪の結末を迎えなかっただろうに、不憫な話だ。
そうは思わないか??」
フッとケビン皇太子は笑う。
吞まれてはいけない。
ケビン皇太子の威厳のある態度、独特の雰囲気に思わず頷いてしまいそうになる。
この男の言うことに逆らってはいけないと本能が言っている。
彼がセイランを怖がらせる前なら、セイランに相応しいのは彼だと身を引いただろう。
でもセイランは最後まで俺の手を取ってくれていた。
俺はその信用に報いたい。
彼女の隣は王しか居られないというなら、俺は王位を目指す。
だから俺は、ケビン皇太子の真似をして不敵に笑った。
「そうですね、でも獅子は本当に王の隣で幸せでしょうか??
王の元に行くのを嫌がったのは獅子にとって王が良くない存在だったからでは?
羽虫が力をつければ、羽虫が王になり獅子を守れるようになればそれが一番獅子にとっての幸せだと思いますね」
目の前のケビン皇太子の様に肩を広げ、ゆっくりと尊大に話し、ソファの背もたれに体を預けて見るからにリラックスする。
『いいですか殿下!社交は暗記!そして次にハッタリです‼‼人は話の内容もそうですが、それ以上に雰囲気で相手を判断します。暗記とハッタリ‼この二つが出来れば社交は問題無いです‼』
ずっと前にライナスに言われたことだ。
こんな時に笑うなんて無理だと一瞬思ったが、俺の目元に祝福のキスをしてちょっと赤くなったセイランのことを思い浮かべれば自然と笑える。
急に態度を変えた俺をケビン皇太子は珍しそうに見てくる。
やっと彼の視界の中に入った気がした。
これ以上、ケビン皇太子から聞けることは無いな。
それにこの視界に入っている状態で出来れば終わりにしたい。
俺はパンと軽く手を叩いた。
「ま、物語のたとえ話ですけどね!あー失礼しましたもうこんな時間ですね‼遅くまで引き留めてしまってすみません!」
ライナスの真似だ。
話の切り替えや多少都合が悪いかなっていうときに彼はよくこうして相手を帰そうとする。
「……そうだな、こちらこそ長居をして失礼した」
「いえ、ではまた学園で、明日からは私も出席しますので」
ケビン皇太子は先ほどの驚きはもう見せず、尊大な態度に戻り部屋を出て行った。
ケビン皇太子がセイランを隠すならパース帝国だろう。
グラス王国よりも国力も領土も大きい帝国の中から人一人を探し出すなんて普通は不可能だ。
でも彼がセイランを好きなら検討はつく。
セイランがこの国で成りたくても成れなかった騎士。
彼は贈り物から考えてもセイランがのびのびと強くあることを否定しない。
だからセイランを騎士団に入れるはず、少なくとも関われる様な場所に置くはずだ。
俺が国外に出ることは申請が必要で、どんな理由であろうともそれを陛下が許可するとは思えない。
バレない様に帝国に忍び込む……のは止めた方がいいな。
ケビン皇太子に見つかったとき、少しでもこちらが不利になることはしたくない。
連れて帰るだけじゃなくて、セイランの安全も確保しないといけない。
「殿下??」
ケビン皇太子が去っていった扉を見つめてずっと黙っている俺を侍女のサマンサとメリーが心配そうに聞いてくる。
あぁそうか、俺が考えつかないなら聞けばいいのか。
俺の周りは皆優秀な人間ばかりなんだから。
「サマンサ、メリー、それとドミニク、知恵を貸してほしいんだ。
出来ればケビン皇太子に見つかっても不利にならない状況でパース帝国の騎士団と接触するにはどうすればいいかな?」
3人は目を合わせて困惑しているのが見てとれた。
「さぁ、私には何とも」
「申し訳ありません」
サマンサとドミニクが言うがそんな中、一番年長の侍女、メリーがおずおずと言い出した。
「その、必ず接触出来るわけではないのですが……」
「あぁ‼何かあるなら教えて欲しい‼‼」
俺の食いつきようにメリーは目を見開いた。
「えぇと、殿下はよくも悪くも他国には顔を知られていません。こういっては何ですが、顔を知らないわりに悪い噂だけはあります。
現在次期国王はウィリアム殿下で決定している様な状態ですのでウィリアム殿下は他国、もちろん同盟国でもあるパース帝国からもパーティーに呼ばれます。
ですがもし、悪い噂がただの噂でカイゼル殿下の方が王位に近いと思わせることが出来れば、運が良ければパース帝国に呼ばれるかと」
「俺の方が王位に近い……か。セイランを守れるなら俺は王位が欲しい。でもそんなに待てないんだ、兄上と何か勝負をするわけでもないのに印象を変えるには相当な時間が」
「え??出来ますよ?勝負」
サマンサがきょとんとした顔で言った。
「殿下はこれから学園に通われるのでしょう、そこで学力ははっきりと優劣がつきますし2ヶ月後には貴族の魔法大会があるとハンナから聞いています」
「ハンナ??」
「セイラン様の侍女です」
サマンサが言うには、セイランの侍女ハンナと頻繁に手紙のやり取りをしているらしい。
主にハンナ主導で俺をどうやって改造していくかを話し合い、その流れで学園の催しや様子を聞いているらしい。
「2か月後の魔法大会ならパース帝国の貴族も出席しますよ」
意外なところから更に話が続く。
後ろに居たドミニクはいつもの様に冷静沈着に話し始めた。
「どの貴族が出席するかはまだ非公開ですが、その時に来る貴族にパース帝国が含まれているのは事実です」
「ハハハ‼皆優秀だなぁ、かなり希望が見えてきた‼ありがとう‼‼」
一人では考えもつかなかったことがとんとん拍子に話が進む。
兄上に学力と未だに魔法陣を抜けていない魔法、この2つを勝てるかどうかまだ分からないけれどだいぶ道筋は見えてきた。
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