28話 夢か現実か
※カイゼル視点です
残酷表現があります、苦手な方はご注意ください‼
気がつくと、俺、カイゼル・ハイドラントは真っ暗な闇の中に立っていた。
??
「うぇ!うぅっ、グスッ‼……僕が何で悪女なんかの婚約者に……エグッ!」
目の前では長い前髪の俺が蹲って泣いている。
あぁ、そういえば始めは絶望していたんだった。
兄上から聞いていた最低最悪の傲慢悪女セイラン・アーヴィン。
傲慢で、他者を傷つけることを好み、さらに不特定多数の男との噂がある悪女。
彼女を実際見るまではそんな悪女の婚約者にされるなんて俺はなんてツイていないんだと思った。
でも違った。
目の前で蹲っている俺の元に掌サイズの白い光が現れた。
光りは俺にぶつかるとパシュ!と音をたてて勢いよく光り、弾けた。
眼を開けていられない程に眩しく、光が弱まったのを感じてゆっくりと瞼を開けるとそこには蹲った俺も光も消えて、代わりに愛しいセイランが微笑んで俺を見ている。
「セイラン」
俺が手を伸ばすと彼女は困った様に笑い、後ろへ下がる。
「セイラン??どうしたんだ?」
ザワザワと心の中に不安が広がり、更に強く手を伸ばすがその手は彼女に届くことなくすり抜ける。
「それただの幻なんで勘違いしないでくださいね」
ライナスが闇の中からひょっこり出てきた。
「え??いや、それは婚約のことだろう?もう今はそんなこと……」
俺が焦っているとセイランがだんだん闇に溶け込んでいく。
「セイラン⁉待ってくれ!待って‼‼俺は君無しでは無理なんだ‼‼セイラン‼」
「セイラン‼‼‼‼」
「キャア‼」
叫ぶと、そこは見慣れたベッドの上だった。
心臓が嫌なくらいにドクドクと早く動いて俺を急きたてている気がする。
全身に汗をかいて気持ち悪い。
夢、か。
いや、それよりも……。
隣で驚いている侍女のサマンサを見た。
「サマンサ!あの後どうなった⁉セイランは‼セイランは大丈夫か⁉」
サマンサの細い腕を掴んでゆすって聞くが、サマンサはひどく怯えて俺から目をそらした。
「……そのことで殿下が目を覚まし、準備が出来たら広間へ来るようにと仰せつかっています」
チラリと視線で使用人に何かを指示すると、使用人は部屋から出て行った。
「準備?準備って俺のか?それとも別の?」
「…………お召替えをしましょう、広間には陛下や上位貴族の方々も集まられると伺っております」
サマンサはそれだけ言うと、何も話さなくなってしまった。
服を見たら寝間着を着ていて、外は明るい。
一晩寝てしまったようだった。
扉の近くに立っている栗色の髪に緑色の瞳の騎士、ドミニクと目が合う。
騎士団に行った際に紹介され、ライナスが不在の時は護衛をしてもらっているが彼は冷静沈着というか、人嫌いというか俺ともセイランともあまり話さない。
そしてライナスも何となくドミニクを苦手にしている俺を気遣ってか、あまり休みを取らないため結局ドミニクが護衛につくことも少なかった。
「ドミニクさん、ライナスはどこですか?無事ですか?あの後どうなったか知っていますか?セイランのことも」
「…………ライナスは現在処罰を受けて懲罰房に居ます。セイラン様の件は聞かれても広間に着くまで答えるなと命令されています」
「ライナスが懲罰房⁉何があったんですか⁉」
「広間に着くまでお答えできません」
「???」
俺が気を失っている間に何があったんだ?
夢で闇に溶け込んでいくセイランの姿を思い出した。
広間に着くまでということはライナスのこともセイランと同じ件と見て間違い無いと思う。
夢の中で感じたザワザワとした不安がまた襲ってきて、俺は心臓の位置にある服を握りしめた。
「セイラン」
セイランに会いたい、無事を確認したい。
俺は一分一秒を惜しんで身支度を整え、しばらくすると使用人が呼びに来た。
「準備が整ったとのことです。広間へどうぞ」
広間前に着くと、衛兵がゆっくりと扉を開けてくれた。
なぜかドミニク以外、一様に俺と目を合わせようとしない。
ギギギッと重い扉が開かれる。
「……え?」
扉が開かれた広間で一番に目に入ったのは、高い位置に座り威厳を放つ陛下でも、その横で青い顔をしている兄上でも、兄上に縋りつく聖女でも、白い服をまとい手枷足枷をつけながら、凛と立つセイランでもない。
王宮の中でも一際広い広間に置いてあったのは処刑台。
その上にはギロチンの刃が、今か今かと血を欲して輝いていた。
宰相が声を張り上げた。
「これより、セイラン・アーヴィンの処刑を行う‼この者は夜会会場にて魔法を使用し、王族、聖女、パース帝国皇太子の殺害未遂により処刑の判決が下った。セイラン・アーヴィン‼最後に言い残すことはあるか‼」
これは、夢の続きか??
周囲では着飾った上位貴族と、陛下の兄上とは逆隣のケビン皇太子がじっとセイランを見つめている。
セイランは処刑人と思われる格好の男達に腕を掴まれたまま、こちらを見た。
「セイラン、これは……」
「フフフ!間抜けな顔‼無能の極みと呼ばれるポンコツにはお似合いね‼‼キャハハハハ‼‼」
甲高く、わざとらしい程に悪女という言葉がよく似合うように彼女は笑った。
「反省の色も無いか!悪女め‼」
宰相は苦々しく吐き捨てると、処刑人に指示をした。
ゆっくりとセイランと処刑人達は処刑台へと上がっていく。
「ま、待ってくれ‼‼何が起こっているのか分からない‼あの時セイランが居たから聖女は助かったんだろう⁉その彼女が魔法を使って殺そうとした??そもそもセイランは魔法を使えない‼ここに居る誰もが知っている事実だろう‼‼あの時は見えない魔物が!」
「いや、私は魔法を使うところを見た」
陛下の隣に座っていたケビン皇太子がにやついて言った。
「お前何を笑っているんだ‼‼セイランが‼死ぬかもしれないときに……ケビン皇太子‼貴方もセイランが好きだったんじゃないのか!なのに何で‼」
「ハハハ‼何のことやら、あいにくと私は傷のついた宝石は手元に置かない主義でね。私の命を奪いかねない悪女は死んで当然、そうでしょう?グラス王国国王」
陛下は鷹揚に頷き、そこで初めて俺と目が合った。
「そうだな、そんなに大事なら首輪でもつけておけば良かったものを、表に出てきて要らぬことをするからこうなる」
は?……要らぬこと??
「俺が……俺が動いたからですか??俺がポンコツじゃなくなったから、セイランが……」
「もうよい、早く首を落とせ」
陛下は面倒くさそうに、羽虫でも払うかのように指示をした。
「待って‼待ってくれ‼‼陛下‼俺が邪魔なら俺を殺してください‼セイランは何も」
走り出した途端、突然視界が下がって腹と顎を強い衝撃が襲った。
「アスラン騎士団長⁉」
アスラン騎士団長は俺の腕を取り、床に羽交い絞めにしていた。
ギリギリと腕が締まっていく。
「痛っ‼……アスラン騎士団長‼‼貴方はセイランが死んでもいいんですか⁉セイランは‼‼グアァア‼‼」
一気に腕が締まり、ガコッと肩が外れた音がした。
今までに感じたことが無いほどに痛く、痛みがひどすぎて頭がおかしくなりそうになる。
処刑台を見上げると、そこではセイランが首を差し出していた。
「セイラン‼‼セイラン頼む、逃げてくれ‼君なら出来るだろ‼セイラン‼‼」
俺の言葉が聞こえていないかの様に彼女は全く反応せずに従順に首を差し出している。
「陛下‼‼止めさせてください‼‼俺が‼俺が代わりに処刑されます‼‼お願いです‼彼女だけは」
俺が懇願する中、処刑人は躊躇なく紐を引き、ギロチンの刃は落ちた。
ゴトリと何かが転がる音がした。
「うぁぁぁああああ‼‼‼セイラン‼‼セイラン‼アアああああああ‼」
心の奥でこれは夢の続きだと思う俺が居て、気を失いかける俺を肩の痛みが現実へと引き戻し、声が枯れるまで俺は叫び続けた。
暗い‼暗すぎる‼‼
と、思われた方ご安心ください。
あまりこのテンション長続きしないです。
この物語で現在が一番暗い所に位置しているので後は浮上するのみです‼
面白い!続きが気になる!と思っていただけたらやる気につながるためブックマークや評価をお願いします‼<(_ _)>
既にしていただいた方、ありがとうございます‼




