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15話 聖女は・・・

「……??この社交の項目、暗記って何を暗記するんだ?」


「あぁそれはですねー、貴族の情報をひたすら暗記します‼」

「貴族の情報?」


あぁ、わたくしの苦手なヤツだわ。



ライナスは自信満々に頷いた。


「はい、貴族は特にそうですが皆さん自分に興味のある人を好きになるんですよね。


だから顔と名前を一致させるだけでなく、その人が何に興味があって、何が好きでないのかを叩き込めば社交は及第点を取れます」



「へぇ!いい方法だな‼早速覚えるよ‼」

殿下がやる気になった瞬間、ライナスの顔は曇った。


「殿下、だからと言って片っ端から○○興味ありますよねと当てていくのは違います。

それは会話ではなく、質疑応答です。


ちなみにコレ、それとなく会話に混ぜ込むのが良いのであって初対面で全て好みを知り尽くしていたら気持ち悪いです」


「……勝手に心を読まないでくれ……というか、やっぱりちょっと難しいな……」



「想像してみてください、例えば殿下の好みは甘いもので特にイチゴのショートケーキが好き、イチゴは最後に食べて咀嚼回数は平均25回、生クリームは少し緩いくらいの泡立てが好みでジャージー牛の物が好み……ほら、ちょっと怖いでしょう」


「あ、あぁ寒気がした……というか咀嚼回数は分からないがそれ以外当たっているのが既に怖いんだが……」



社交に関してはわたくしから言えることは無いに等しいので、わたくしは目の前のお菓子をつまんでいた。


カイゼル殿下の侍女はかなり質が悪かったが、お菓子はかなり良い。

同じ王宮の料理人が作っていると思っていたが違うのかもしれない。


ウィリアム殿下のところで食べたお菓子と違い、見た目には装飾が少なく素朴だが上品な甘さがある。

そして前回来たときに気に入った一口サイズのチーズケーキがこれまた美味しい。



「姫さん」


呼ばれてそちらを向くと、ライナスは手話をしてきた。

手話といっても通常使われるものではなく、騎士団で声を出しづらい状況で伝えるためのものだ。


内容は、

『食べた感想、殿下に伝えて』


チーズケーキの??

まぁいいわ、減るものでも無いし。


「殿下、このチーズケーキ美味しいですわね。一口で食べられるのも良いけれどレモン?かしら、酸味が他で食べるものよりも強くてそれに合わせてチーズの風味も強くてとても美味しいわ」


「っ~~~~~あ、ありがとう‼‼‼」

「ほら殿下‼今‼姫さんが話題にしてくれて嬉しかったでしょう⁉ソレです!暗記の目的!」


カイゼル殿下は顔を覆って喜び、ライナスはそれそれと殿下を指さしている。


「意味が分からないわ。わたくしに褒められるのがそんなに嬉しいのかしら?」


「あー、俺も驚いたんだけどさこのお菓子ほとんど殿下が作ってんだよ!」

「あら‼意外な特技ね、殿下本当に美味しくてよ!」


「あ、ありがとう、この前来た時一番減っていたからその……喜んでもらえてよかった」

ふにゃっとはにかんでカイゼル殿下は頭を掻いた。


というか、よく見てる。


言われてみれば前回来た時に美味しいと思って追加で食べたお菓子は今回も出されている。


あら、案外社交はなんとかなるかもしれないわ‼


ライナスは人の心の内が分かる分、社交は得意だ。

彼の指導があれば何とかなるかもしれない。


「んじゃ、他に質問が無いようなら姫さんが居るうちにダンスの練習しましょう!」

「あら?協力するとは言っていたけれどライナス、随分やる気ね?」


下手すれば、わたくしや殿下よりもライナスはやる気に満ちている。

「まーな、殿下と一緒に出席する姫さんに恥掻かすわけにはいかねぇし」


「出席??何かあったかしら?」


わたくしの言葉にライナスは額に手を当てて何かを念じているようなふざけた仕草を始めた。


「んー…………俺の勘では2、3か月くらいで殿下も出席するような大きな夜会が開かれる気がするんだよなー」


「夜会??それってどんなものかしら?」


普段社交をしないカイゼル殿下を誘う者など誰も居ない。

そこから考えればカイゼル殿下が出席するものは王家主催の物だ。


でも2、3か月後に開かれる定例の王家主催の夜会など無かったはずだ。


「ハハ、まだ内緒な!でもま、多分開かれるぜ。そこで殿下の代わり映えをお披露目して、学園に転入ってのが一番いい流れだと俺は思うね。まぁ、急いで損は無ぇだろ?」


上機嫌にわたくしの手を取ってライナスは扉へと誘導した。

後ろから卑屈に見てくる殿下に途中でエスコートを代わる。




練習用のダンスホールにつき、わたくし達はダンスの練習を始めた。


練習自体は始まった……が。


「殿下‼しっかりと手を握りなさいな‼‼わたくしの腰を支えて‼……というか距離が遠すぎましてよ‼もっと近寄りなさいな‼‼」


いくら言っても殿下は声には出さず、真っ赤な顔をして頷くだけで上手く踊れない。


体を寄せてさえくれればわたくしの方でリードをするのに、まず体を密着させることを嫌がる。


「貴方‼それは女性への侮辱でしてよ‼わたくしと触れるのが嫌なのかしら⁉」

「や、ちが……その、感触が、じゃなくて香りが……あの……」


「はいはい、姫さんをやらしい目で見ている殿下、こんなこともあろうかと思って良い話用意してますんで2人とも踊りながら聞いてもらえますか??」


パンパンとライナスが手を叩いた。


やらしい目って……。


じろっと殿下を睨んでしまう。殿下はそれを察してこれでもかと顔を逸らす。


「殿下、ダンスにかこつけて何かしたら蹴り飛ばしますわよ」

「んな‼そ、そんなこと僕はしない‼」


「はいはい、2人とも俺の話に集中しましょうね、そうすれば緊張も無くなると思うんで。姫さんも興味あるでしょ、聖女の話!」


聖女と聞いて思わずガバッとライナスを見た。


そう、とても気になる。

カイゼル殿下の手前言えないのかと思っていたがそうでも無かったらしい。


「前置きしてもしょうがないんで、ズバリ‼俺は聖女が偽物でないかと考えている‼」


「「は⁉」」


思わず殿下と一緒に叫んでしまった。


「はい、2人とも踊って踊って~」

「え、えぇ」


殿下とダンスを踊りながらも耳はライナスの方に向ける。

殿下もライナスの話が気になり過ぎるのか自然と力が抜けている。


「まず昨日姫さんは聖女様を殴った、でもその記憶が無い、で間違いないな?」

「えぇ、間違いないわ」


殿下はライナスから事情を聞いていたのか、じっとわたくしを見るだけで特に驚いた様子は無かった。


「多分それは聖女の闇の魔法、効果は洗脳ってとこだな。そんな魔法陣があった気がするし、それのせいで姫さんは無理やり動かされたと俺は見ている」


「……根拠は何かしら?彼女は光の属性よ?闇じゃないわ」


「根拠は俺が一瞬洗脳を受けてそれを覆せたからってとこだな」



ライナスの話をまとめると、彼は昨日一瞬洗脳にかかったらしい。


本気で聖女を好きになり、聖女のことをもっと知りたいと思い闇の魔法で聖女のことを知ろうとした瞬間に正気に戻ったと。


「同じ属性であれば魔力の量とタイミングによっては相殺することもある、闇の魔法でそれが出来んのは初めて聞いたけど、コレ、聖女様が光の魔力だったらおかしな話になるよな?」


「そうね」


光の魔法は闇の魔法を打ち消すが、それ以外はただの光でしかない。

ライナスが聖女を急に好きになり、闇の魔法を使った瞬間に正気に戻ったことの説明がつかない。



「でも、聖女は不思議な魅力をもつとも言い伝えられている。それじゃないのか?」


「そう、それで根拠二つめです殿下。あの聖女は姫さんに厳罰が下るのを望んでいました。


本来聖女は純粋で慈しみの心をもつはず、程度にもよるが本当に慈しみの心があるなら俺が姫さんを叩いたのも許せないはず」



「たしかにそうね」


思い返してみても、リリアンの行動は全てが己のためで慈しみの心からとは思えない。


「癒しの力はどう説明するの?」


「あーそれな。調べたんだけどあの聖女はウィリアム殿下の体調不良を治した一回しか癒しの力を使っていない。


んで、その時に一緒に居てその様子を見た人間っつーのが全員聖女様の取り巻きなんだよな。魔法の効果が洗脳ならいくらでも偽装出来る。しかも体調は目に見えない」



聖女リリアンは光の魔力、その前提が覆り、闇の魔法でしかも効果が洗脳であれば全てが綺麗に収まってしまう。



「「…………」」


「試しに昨日の取り巻き達を個別で話聞いてんだけどさぁ、何つーか全員心の中が整いすぎて気持ち悪いんだよ。普通、恋とかそういうのっていうのはもっと心の中がごちゃつく」


なるほど、だから昨日取り巻き達を帰さずに個別で話を聞いていたのね。


わたくしを叩くのにギリギリまで時間を見極めていたのは、洗脳によって周囲の人間の口裏を合わせられない様にするため。



「……それが本当なら、どうやって闇の魔力を光の魔力と詐称したんだろうな。産まれてすぐに検査をするはずだろう?」


「それについてはまだ分からないですね、多分生まれた時に親が金を掴ませたんだと思いますが、なぜそんなことをしたのかが謎です」


「じゃあ、聖女は存在しないのかしら?」



わたくしの質問にライナスはニヤリと笑った。


「いんや、こっからは俺の本当の推測でしかないけど、

あの聖女は可愛い顔にピンク色の瞳、外側だけ見れば前聖女様にも似た雰囲気の顔をしていて聖女そのもの、でも中身は男好きの嘘つき


なんか、まるで入れ物と中身がチグハグになってる感じだよな?」



「そうね」


踊りながらもやたらとライナスはわたくしを見てにやにやしてくる。


「んで、ここに純粋で自分の内側に入れた人間には絶対に手を出させない正義感溢れる悪女が1人。


しかもその悪女、このグラス王国に妙な執着があり騎士にも使用人にも大人気、極めつけは王族並みに馬鹿高い魔力、しかも今はそれを使えない」


「ライナス、貴方まさか……」


いつの間にかカイゼル殿下までわたくしをキラキラとした目で見てくる。


「姫さん、本当は姫さんが聖女じゃねぇの??」


面白い!続きが気になる!と思っていただけたらやる気につながるためブックマークや評価をお願いします‼<(_ _)>


既にしていただいた方、ありがとうございます‼


不定期更新です。

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