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第一話 吉原からの依頼

この章はそれぞれのキャラを動かせたい為、一人称から三人称へ変わります。

私は篭の鳥


籠の中で生き、籠の中で死ぬ


それが私の人生だった


ああ、でも成仏する前に子守歌を聴きたい



   


 

 降り積もった雪を白く淡く光り照らしながら出ている太陽。

 その眩い光りを、縁側に歩いていた男の目に当たる。その男は目をしかめた。

 彼はそのまま縁側を進み、離れにある部屋を乱暴に開けた。

「おい、小春。新しい依頼だ」

 部屋にいる小春と言う人に男は紙を投げつけた。

「………」

 紙が当たっても反応の無い彼女。彼は首を傾げたが、文机に伏せっている彼女が寝ていることに気がついた。


「起きろ!目を覚ませ!お前は今、勉強中だろうがっ!」

 彼女の頭をバシリと軽く叩く。

「あ?はぇ?か、鹿威さん?居たんですか?」 

「居たってお前……」

 寝ぼけている小春という人に鹿威は呆れた。

 彼女は、四世の神擬であり、菊理媛神の生まれ変わりの十六歳の少女だ。

「依頼だ。目を覚ませ、ボケちん」

 彼は彼女の教育係兼補佐(監視役)の鹿神である鹿威だ。


「あれ?帰って来たんだ」

 襖を開けて、お茶を持って出てきたのは白髪の中性的な顔立ちをした人だった。

 彼は鹿威同様、小春の教育係兼補佐(監視役)の馬神である十二支の一柱の霪馬だった。

「帰ってきたんだって……何?お前ら、オレに帰って欲しくないの?」 

「う~ん。微妙」

 小春は真剣な眼差しで顔をしかめた。

「そこは仮にも『帰ってきて嬉しいよ!お兄様』って言うんだよ」

「気持ち悪っ!それより、鹿威さんはお兄様では無く、お爺さんの方ではありませんか?」

「シャラップ!」

「そうよ!鹿威、アナタはお爺さんで、霪馬はクソであたしはお母様。そして、小春ちゃんはアタシの娘なのよ!」

 そう言って、開けっ放しの襖から顔を出してきたのは、赤毛のお色気の多い爆乳美女、菖蒲だった。


「誰がクソだ!もはや生きてもいねーよ。爆乳野郎」

 霪馬が怒った。

「いやいや。つか、勝手に家族構成すんなよ。あと、お父様がいないんだけど」

「お父様なんて、ここには必要ないわ!」

「雄雌共同体かよ」 

「で、鹿威さん。今回はどんな依頼何ですか?」

 小春が彼らの会話を遮った。

「ああ。今回は、吉原のある一郭から依頼が来たんだ。この件は秘密に依頼を引き受けて欲しいと要望があった」

「吉原か。男は天国で女は地獄の場所ですよね?」

「あれ?よく解ったな」

「前に霪馬さんが説明してくれました」

 その時、菖蒲と鹿威からのいた~い視線を感じた霪馬であった。


「今から行くなら、あたしは一人留守番ね?」

「そういや何でお前、ここにいるの?」

 鹿威が不思議そうに首を傾げた。

「今日はアタシ、休み貰ったの。なんか、働き過ぎだとか……ゆめ屋の亭主から言われた」

 彼女は今、飯屋のゆめ屋という所で働いている。

「そうか」

 彼らはその場を離れた。ここは、小春の部屋なので。

 小春は箪笥からあの神衣を取り出した。一度は破れた神衣も、また直してもらった。


 あの雪合戦から5日が経っていた。その5日の間、依頼数は二件。どちらも縁結びといったことだった。

(吉原……また縁結びかな?)

 彼女はそんなことを思いながら、着替えた。カグツチを懐にしまい、お面を被った。お面を被るのは身元がバレないようにするためだ。


 彼女は靴を履いて、鳥居の前に来た。

 彼らが住んでいる所は元は神社だった。今も神社なのだが、人影なんて見当たらない。お参りにくる人がいないから、彼らは聖地である安全な場所に身をおいた。

「あれ?身支度早いな」

 鹿威が頭を掻きながら来た。彼は角のはえた面を被っている。


「早いなって、いつも早くしろと言っていたのは鹿威さんですよね?」

「あれ?そんなこと言ったかな?」

「どうやらコイツは頭が少々いっちまったらしいぞ。小春」

 霪馬が鹿威の後ろから来た。

「五月蠅いな」

「それより早く行きましょうよ。わたし、夕餉前には戻りたいです」

「どうだろうな?意外と今回の依頼は簡単じゃないかもな」

「えっ?そうなのか?鹿威」

「オレの予感」

「……また、彼奴等が関わっている可能性はあります?」

「う~ん。微妙だな」

「そうですか」

(出会ったら、ブン殴って、わたしのお返ししてやる)

 小春はあの時の出来事を思い出していた。


 とりあえず、ここで無駄話をしているのもいかないので、彼らは瞬時に吉原に向かった。

 見るからに、他の建物と違う建造物が連なっている吉原。大門があり、そこには無数の男の警備がいた。

「いらっしゃい。わっち等と楽しい一時を過ごしませんかえ?」

「そこの旦那。こっちへ来なんし」

 手をヒラヒラさせながら男を誘っている女達。

 小春達はそれを、建造物の上から眺めていた。

「わたし、吉原初めて何ですよね?」

「ああ、それは当たり前だ。ここは女が入ってはいかない所だからな」

 霪馬は彼女に言った。


「へぇー。さっきから、囲いの中で女の人が沢山いるのですが、あれは何ですか?」

 小春が指差したところを鹿威は見た。

「あれは、遊女だよ。店の売りもん」

「えっ?売りもの?」

「男に体を売るのが、彼女達の仕事。小さい時に親に売られた女がほとんどだな。ここで一生を終えるか、好いた男に娶られて、あの大門からでられるかだな」

「自由があの人達には無いの?」

「無いな」

 小春は顔をしかめた。怒りが沸き起こって来た。しかし、この心情を鹿威が読み取ったかのように言った。


「オレ達の依頼は彼女達を自由しろと依頼されていない。今は堪えろ。小春」

「分かっています」

(感情で動くな。そう言いたいんですよね?鹿威さん)

「はてさて、今回の依頼主は……こちらっ!」 

 鹿威が指差したのは、どぶが流れている家の後ろだった。そこには子供と二人の遊女と男が一人いた。

「あっ、こんにちは」

「どうも」

「あの~。依頼を引き受けてくれた……」

「便利屋です」

「そうですか。では、今回の件は宜しく御願いします」

 男が一人でに話しを進めた。

「すみませんが、先にお名前を伺っても宜しいでしょうか?」

神鹿(しんろく)

「鞍馬」

春菊(しゅんぎく)と申します」

 小春は幼い時の名を名乗った。


 男も同じく自己紹介をした。

「始めまして。私はここの当主、伊右衛門と申します。その人達は……」

 伊右衛門は横にいる女性に目をやった。

「朝霧でありんす」

 色気が多い女が挨拶した。そのあとを続くように小さな幼女が挨拶した。

「か、禿の雛菊であ、ありんず」

 明らかに緊張しているとみた。

「禿の夕菊(ゆうぎく)でありんす」

 先ほどの禿と違ってしっかり者のような禿だった。 

 自己紹介が終わったので、鹿威が依頼について切り出した。


「で、ここが例の場所か?」

「例の場所?ここから何か出るのか?か……神鹿」 

「今日のオレ達の依頼は、このドブからでる遊女の霊をどうにかして欲しいという依頼だ」

「それだったら祓いやや、巫女、お坊さんにやって貰ったら早いんじゃねか?」

「それ、わたしも思った」

「それが、どの方法をしても中々、成仏してくれないのです。その為に、吉原には幾つかの社や祠があるのですが……」

「伊右衛門よ。死んだ女の名前は?」

 鹿威が女の名を問うた。


「はあ。夕霧です」

「そいつの死因は?」

「ドブの中に身を落とした自殺です」

(自殺?何で?)

「何で自殺なんかしたのです?何か店の間でいざこざがあったり……」

「そんなモノはなかったです。ただ、彼女は前々から外に出たがっていました。しかし、吉原の掟は貴方方もご存知でしょう?」

(掟?どんな?)

 っと思ったのは小春だけで鹿威と霪馬は解っているようで頷いた。

(後で教えてもらおう)

「多分、外に出たかったのでは?と俺は思う」

「姉さんはとても優しい人でありんした」

 悲しい顔をする彼女達の顔見て霪馬は顎に手を当て、考えこんでいた。


「もしかしたら、まだ成仏仕切れていないのは、お前たちが未練がましく悲しんでいるからじゃないかな?」

「鞍馬さん。未練がましく悲しんでいるのに何が悪いんですか?」

 実際、自分もそんな風だった小春は霪馬の言葉に不思議を感じた。

「何時までたっても悲しんでいたら、その霊が自分を呼んでいると感じてこの世をさまよる場合があるんだ。まあ、その場合、その未練がまし思いや言葉は霊をこの場に縛ってしまうモノだがな」

 霪馬のこの事を聞いて、遊女や禿は揃って口に手を当てて大きな声を出した。

「あっ!」


「わっちは、姉様がしんでからずっと悲しんでいました。最近、姉様の事ばかり考えて、仕事に集中出来なくなったり」 

「わっちも、何時も姉様が身に付けていた簪を持って泣いていました」

「まさか、それで姉様が成仏出来なかったなんて……」 

「まあまあ。原因は分かったんだし」

 涙目になっている彼女達を一生懸命慰めようとした霪馬だった。

「とりあえず、原因はわかったとして、始めるか。春菊」

「直ぐに成仏しもいいのですか?」

 一度だけでも成仏する前に彼女達に合わせてあげたい、という思いが募った小春は鹿威に顔を向けた。


「早く成仏させて、あの世に送ってあげないと、悪霊になるぞ。その優しい姉さんとやらは」

「そんな!だったら早く成仏させてあげて下さい!」

 彼女達は一斉に彼らに追いすがった。

「言われなくても、コレがオレ達に頼まれた依頼だ。小春、今夜するぞ」

「えっ?今夜?」

「お前……解れよ。幽霊は夜が定番と決まっとろうがァ!」

(うーん。だったら夕餉に間に合いそうにないな)

「ありがとうございます。どうか、宜しくお願いします」

 店主が頭を下げ、その後を続くように遊女と禿達が頭を下げた。

 小春は彼らを見、既に仮面の中で青くなっている目を細めた。

「ソナタの願い、聴き届けた」






「で、本当のところ、どうなんですか?鹿威さん」

 そろそろ、吉原の本番の仕事が始まってくる頃、小春達は屋根上にいた。

「え?何が?」

「とぼけないで下さい。バレバレですからね?この依頼、実は一筋縄じゃないってこと」

「お前も良く考えるようになったな」

「当たり前ですよ。さっきの話からすると巫女も僧でさえも成仏出来なかった霊。だからこんな怪しい集団に頼ったんでしょう?」

「怪しい集団って……自分で言うなよ」

「依頼主達も何かどこか納得いかなさそうな顔してましたし」

「そうだな。実は、オレ達今から鬼と戦わなくてはならないんだぜ」

 鬼と聞いて小春は首を傾げた。


「それだったら、千景さんに頼んだ方が……」

「鬼は鬼でも、チハゲのような人間に害を加えない善の鬼ではない。今このドブにいる鬼は女の嫉妬と憎しみから生まれた悪鬼だ」

「陰獣ではないのですか?」

「そいつと悪鬼は別だ」

「へぇー」

「鬼の中にも様々な種類がいるからな」

「そんなんだ。では、何時その悪鬼とやらは出て来るのでしょうか?もう、腹が減ってしょうもないのですが?」

 小春達は屋根の上で身を屈め、下を見下ろして張り込みをしていた。


「腹が減ったって言われてもな………別に餓死するわけでもないし」

「鹿威さんは慣れているかもしれませんが、わたしは慣れていないのです」

「この際、慣れろよ」

「……あーあ。誰か差し入れでも持って来ないかな~?」

 小春は顎をついた。

「お前、図々しいな」

「差し入れ願望。差し入れ差し入れ差し入れ差し入れ差し入れ差し入れ差し入れ差し入れ差し入れ差し入れ差し入れ差し入れ差し入れ差し入れ差し入れ差し入れ差し入れ」

「うっさい!黙れどアホ!こっちはな、腹が減るよりも、せっかく吉原に来たのに遊べないのが腹立たしいんだよっ!」

 鹿威は拳を屋根に叩きつけた。


「え?鹿威さんは人間嫌いですよね?」

「うん、確かに今もビミョーに人間が苦手だよ。だけどな、人間の女の裸を見るのが最近はまっている趣味なんだぜ」

 小春は変な目で鹿威をみた。

「それはまた……史上最低な趣味ですね」

「最低って……」

「最低よりも、ゲスに近いですね。つか、何で女性の裸?」

「ああ、それは、女特有のあの柔らかな肌とプリップリッのおっぱいと尻。コレが一番だなって……何でお前、そんなに離れてんの?」

 鹿威から遠ざかっていた小春だった。彼女は嫌な目で彼を見ていた。


「いや、何か気持ち悪い。もしかして鹿威さん。わたしが湯を浴びている時、覗き見を」

 小春の言葉を遮るように鹿威が言った。 

「ああ、大丈夫。お前のは覗けない。だって、お前が湯を浴びている時は菖蒲が目を光らせているからな。覗こうと思うけど無理だから大丈夫だ。安心しな」

(全然安心できねー)

 っと小春は思った。

「ちゃんと見張りしてたかー?」

 今までどこに行っていたやら、霪馬が屋根を登ってきた。


「あっ、霪馬さんっと……匠次郎さん!?どうしてここに?」

 梯子を登って顔を覗かせて来た匠次郎に小春はビックリしていた。

 実は彼ら、あの時以来会っていないのだ。

「どうしてって、コイツは俺達の情報収集者として努力してもらっているんだ」

「え?」

「何か役に立ちたいと言ってきたから、俺達も面倒だった情報収集を彼に任せたんだ。それに、色々と依頼を持ち込んで来てくれて結構便利者。今回の依頼を持って来たのは彼」

「へぇー。そうだったんだ」

「鹿威さんに小春さん。お腹空いたでしょう?差し入れです」 

 そう言って差し出したのは、包みに入ったおにぎりだった。 

「わーい!おにぎり。ありがとうございます」 

 小春は喜んでそのおにぎりを受け取った。彼女は「いただきます」を言い、おにぎりを頬張った。


「あっ!これ、匠次郎さんが握ったものですね?」

「良く分かるな。オレには違いが全然わかんねーよ」

 同じく、おにぎりを口に頬張りながら鹿威は言った。

「へぇ、そうですか?やっぱりわたしは食べなれているからかな?」

 彼女は口を動かしながら、首を傾げた。

「あっ、そうだ」

 彼女は思い出したかのように、先ほどの鹿威との会話を彼らに話した。すると、匠次郎は怖い笑顔を浮かべ、霪馬は呆れ顔を浮かべた。

「な、何だよ?」

「「ゲスだな」」 

 二人で言った。鹿威はそっぽを向き不機嫌になった。 

「うっさい。それより、匠ちゃんは調べてきたのか?」

(ん?何を?)


「はい。私、早乙女屋のお得意先である華屋(はなや)で、情報を頂きました」

「あれ?匠次郎さんは一体何を売っているんですか?」

「反物を時々売りに来ます」

「それで、一体どんな情報をもらった?」

「はい。華屋から聞いた話しでは、ここ、かしみ屋は一年前から一番遊女の扱いが悪いそうです。また、亡くなかった夕霧と言う遊女は身ごもっていたそうで、店主から鬼灯を食べるよう言われていたそうですが、その夕霧は聞かなかったそうです」

「なるほど」

「それと、夕霧はかしみ屋の稼ぎ遊女ですが、夜を一晩過ごした客によると、その女性は横腹にうっすら痣があるとも。しかし、その痣は花のようで、客からは好評ですが。あと……」

 鹿威は匠次郎の言葉を遮って呟いた。

「虐待か」

 彼は目を伏せた。


「では、自殺した夕霧さんはその虐待で……」

「いや。夕霧は自殺ではないぞ」

 霪馬が人差し指を立てた。

「彼女は殺された。そっちの方が正しいだろう。確か、夕霧は身ごもっていたって言ったよな?」

 霪馬は匠次郎に確認した。

「はい。噂では」

「それは噂ではない。事実だ。多分彼女は店主に店の裏側に流れるドブに来るように言われていたはずだ」

「っと言うことは殺ったのは伊右衛門っという人ですね?」

 小春は霪馬に訊いた。

「ああ。多分その伊右衛門と夕霧はここで言い争いになったはずだ。『子をおろせ』と。しかし、夕霧は反発した。恐らく、彼女は産み育てる意識が強かったんだろう」

「なるほど」

 鹿威は頷いて納得した。


「もしかして、他の遊女も虐待を受けている可能性が高いな」

「確認するのですか?」

「確認?」

「ああ、やってみる価値はあるだろう」

 鹿威は頷きながら真面目な顔で言った。

 っと言うことで、彼らはドブ見張りをほったらかしにして、皆で揃って遊女達がいる場所に向かった。

 彼らは伊右衛門に無理を言って少しの間、一部屋に遊女や禿、新造達を集めた。

「っという事で、皆さん。どうぞ着物を脱いで下さい」

 鹿威が彼女達の顔を見ながら大真面目に言ったものだから、彼女達は怖がった。

 小春は取り敢えず、鹿威の顔面に思いっきりパンチを入れてやった。


ガツッ


「おぶっ」

 鹿威はそのまま後ろに倒れた。

「ギャァァア!痛いじゃないか!何しやがるこは………春菊!?」

 鹿威は危うく本名を言いそうになった。

 小春は手の関節をボキボキ鳴らしながら、鹿威を睨んだ。


「お前……何で何気にサラッとスケベな事言っとんじゃあ!お陰様で彼女達が怖がってんだろうがァ!どうしてくれんだ!?」

「じょ、冗談だって」

「冗談でも加減があるんだろう!?……おい、神鹿は引っ込んで……いや、男衆は向こうに行って下さいね?」

 小春は最後の言葉を笑顔を浮かべながら優しく言った。しかし、鹿威の胸ぐらを掴んだまま、霪馬と匠次郎に微笑んだ為、彼らにとってその笑顔は鬼でしかなかった。


「まあ、こ、ここは女の春菊に任せようじゃないか?」

「そうですね。私達が居ても邪魔になるので、私達はあちらの部屋で待機します」

「さっ、お前も退却するぞ」

 そう言って、彼らは鹿威の衣服を掴んでズルズルと引っ張った。

 そうして彼らは襖の向こうに消えていった。

「っで、皆さん。男衆はあちらに消えたので、皆さん脱いで下さい」

「でも……」

 最初は躊躇した彼女達だが、一人が脱ぎ始めると皆がそれを真似た。そして最後の一人が脱ぎ終わった。しかし、小春は彼女達の体を見て、大きく目を見開いて驚いた。


「そんな……」

「私達より一番酷いのは禿の子達よ」

 朝霧の遊女が目を伏せながら言った。

「お願い言わないで!私達があなた達にバレたなんて解ったら私達、ただじゃすまなくなるの」

「わたし……解らない。どうしてあなた達にそんなことするの?あなた達、体が売りじゃ……」

 小春はここで言葉を消した。

(彼女達は好きでこんな仕事しているわけじゃない)


「前まではあんな店主じゃなかったんです」

 着物を着ながら女が顔を俯いて言った。

「はい?」

「一年程前までは優しい人でした。でも、ある事件が起きてから、まるで別人のように急変しちゃって」

「ある事件って、夕霧のことですか?」 

 小春のこの問いに女は首を振った。

「違います。朝霧の姐さんが死ぬもっと前に……店主の奥様が腹の子と共に亡くなった時からです」

「そんなことが」

(あれ?でも、匠次郎さんからはそんな情報言わなかったな)

「その時から、私達に暴行をし始めたのです。勿論、皆は見てみぬふりですが、こんな遊女を助ける人などおりません」

「わたし達はあなた方を救います。もしかしたら店主は鬼に憑かれているのかもしれません」

「鬼?」

 彼女達は揃って首を傾げた。


「そうですよね?神鹿さん」

 小春は襖の向こうにいた鹿威さんに語りかけた。それが合図かのように彼らは襖を開け、部屋に入ってきた。

「ああ。恐らく、男に取り憑いているのは悪鬼だ」

「あれ?ドブの中に居るのも悪鬼ですよね?」

「あれと男に取り憑いている悪鬼は同じだ。恐らく、昼になったら男に取り憑くんだろう。だから、昼行ったあのドブには悪鬼の気配が感じなかった」

 小春は変な顔をして、鹿威に質問した。


「何で昼何ですか?昼より夜の方が良いじゃないですか?」

「確かにそうだが、鬼が取り憑く時は昼だろうが夜だろうが関係ねぇんだぜ」

「そうなんだ。では、わたしは伊右衛門さんに取り憑いている鬼をどう退治すれば良いのですか?」

「そうだな……鬼は陰獣と同じく、とても厄介だからな」

 鹿威は腕を組み考えた。

「“餌”でツルしかあるまいな」

「餌?」

 どのような餌なのか、かなり気になった小春だった。女達は仕事に向かい、部屋には小春、霪馬、鹿威に匠次郎の四人が残った。

「鹿威、実行するなら今だと俺は思うぞ」

 女達が居なくなった途端に霪馬が口を開いた。


「だな。オレも早く帰りてぇし」

「“餌”なら俺が準備しておく。鹿威と小春は先にドブの前に伊右衛門を呼びつけておくれ」

「はい」

「ああ。わかったぜ」

 鹿威と霪馬に小春が立ち上がると、慌てる匠次郎が彼らを止めた。


「待って下さい。私は何をすれば」

「お前の仕事は情報収集だからな……それも終わったとなると、家に帰るか、遊女達と遊んでいるかだな?」

 霪馬は一生懸命考えて言った。 

「私も小春さん達の所に行きます」

「えっ!?」

 そこで驚いたのは小春で、彼女の横にいる鹿威は渋い顔を作った。

「足手纏いだからこっち来んな」

 シッシッと邪魔者を追い払うかのように、手を振った。それを匠次郎は睨みつけた。


「足手纏いになるつもりはありません。ただ、隅で大人しく見ておくだけです」

「こぇーな、まったく。巻き込まれてもオレは知んねーからな」

「心配ご無用。自分のことは自分で守ります」

「ああ、そうかよ」

 鹿威は手をヒラヒラさせながら部屋から出て行った。小春もそのあとを追いかけた。

「じゃあな。匠さん。気をつけろよ」

 そう言って霪馬は窓から消えた。匠次郎は霪馬が消えたのを見ると、踵を返して鹿威と小春のあとを追いかけた。


 先にドブの前に来たのは小春と匠次郎だった。鹿威は途中で伊右衛門を呼びに行った。 

(………気まずい)

 何も喋りかけてこない匠次郎に対して小春はこう思った。

(やだなー。凄く気まずいよ。話しかけてこないかなー?つか、鹿威さんと霪馬さん、早く戻ってこないかなー?)

 小春はこんなことを思ってもどうしようもないと分かり、小春から話し掛けることにした。


「しょ、匠次郎さんは、吉原で遊んだことってあるんですか?」

 意を決してこんな質問をした小春だが、彼からの返事がないことに気づいた。小春は不思議に思いながら顔を上げると、匠次郎は冷ややかな目で彼女を見ていた。 

 ギクリとした彼女は慌てて前を向いた。


「べ、別に答えたくなければいいですよ。ただ、わたしは匠次郎さんが仕事以外にここに来ることってあるのかなー?って」

 チラッと彼の顔を伺うが、相変わらず無表情であった。

「あははは………すみません。下らない質問をしてしまって」

(もしかして怒ってらっしゃる?)

「遊んだことありますよ」

 彼は前を向いたまま無表情に言った。


「え?」

「二回ほど小次郎さんに無理やり連れられて来ただけですが」

「へえー………」

(会話が続かない)

「三回目もまた彼に誘われたのですが、私、あまりこういう所がはっきり言って好きじゃないので断りました」

「へえー」

「小春さんは女なので、依頼の時以外立ち寄ってはいけませんよ」

「はあ……」

(依頼の時はいいんかい!?)

「……」

 既に会話が終わってしまった彼らにまた静寂が包み込んだ。


(早く帰ってこーいィィイ!!)

 小春は心の中でこう願った。しかし何度願っても彼らは一向に帰ってくる気配がしない。深い溜め息が思わず出てしまった小春だった。

 そして、ようやっと彼らが帰ってきた。小春はやっと気まずいこの雰囲気から抜け出せることに安心した。

「遅かったじゃないですか。神鹿さんに鞍馬さん」

「いやーね。コイツがあちこち、うろちょろうろちょろと動き回っていたもんだから、探すのに手こずったのよ」

 軽い調子で受け答える鹿威。


「俺はそこの匠さんの家の近くの稲荷神社の付近まで寄って、コイツ探しに行ってきた。餌だ」

 そう言って、袋からだしたのは、いつかの出来損ないの陰獣、黒鞠だった。

「うぎゃぁぁあ。だせっ!だちぇ!くちょクソ!アホバカ」

 暴言をはいている黒鞠を掴み、それを伊右衛門の前に突き出した。

「ほら出ろよ。お前の好物の餌だぞ?ああ?いらないのかい?」

 伊右衛門の目の前で黒鞠を振り回した。小春は疑問に思ったことを小声でヒソヒソと鹿威に質問した。


「鹿威さん鹿威さん。悪鬼の好物って黒鞠何ですか?」

「ああ、陰獣なら好物だよ。ただ、普通の陰獣なら反対に食べられてしまうから、手っ取り早い黒鞠を襲うんだよ」

「へえー、そうなんだ」

「陰獣の憎しみの塊は悪鬼の好物で、それを食べたら強くなるんだよ。まあ、どっちにしろオレ達からしたら、両方とも退治しんなきゃならん者だがな」

「ふーん」

 小春は霪馬を見た。彼は相変わらず黒鞠を振り回しながら、伊右衛門の目の前にいた。伊右衛門は黒鞠を見た時から何か豹変していた。


 彼は頭を抱えて、唸っていた。

「止めてくれ……止めてくれ止めてくれ!ソイツを私の前にチラツかせるな!」

「えー?いらないの?じゃあ、俺が食べようかな?良いのかなー?食べても」

 霪馬が口を開けて食べる動作をする。それを伊右衛門は血走った目で見ていた。

「食べるな!………いや、違う。止めてくれ!うあああっ、痛い。頭が痛い」

「早くしないと食べるぞ」 

「食べるな!食べるな!いや、違う」

「どっちだよ」 

 うんざりし始めた霪馬だった。

「痛い!頭が割れるように痛い!助けてくれ!うあああっ!喰わせろ!陰獣もお前も」

「え?俺は食べてもらうと困るんだが」

 霪馬がおどけて見せた。小春はカグツチを構え、悪鬼がいつ出るか待った。

「そうだな………だったら、コイツをお前にやるかわりに」

 霪馬は瞬時に伊右衛門に詰め寄り、腸を殴り、伊右衛門を気絶させた。


「あれ?終わり?」

 小春はきょとんとしたが、鹿威と霪馬は真剣な眼差しだった。

「小春、出番だ」

 霪馬が下がった。伊右衛門が気絶し、その身体からは黒い靄が出てきた。

 その靄は次第に形を形作り、鬼のような、獣のような姿になり、角がはえて牙が長かった。

「よこせっ」

 その悪鬼は霪馬に襲いかかった。霪馬は軽々しく避け、小春とバトンタッチをした。

「カグツチ、お願いね」

「はい、お嬢」

 カグツチは扇子から刀に変わった。霪馬と入れ替わった小春はひとまず、悪鬼に蹴りをいれた。


ドゴォ


 悪鬼は塀に背中からぶつかった。しかし、直ぐに襲いかかってきた。

「喰わせろ!その生き血肉を」

 小春はヒラリと避け、また直ぐに襲いかかってきた悪鬼を刀で受け止めた。しかし、思ったより力が強かった為、反対に小春が後ろに吹っ飛んだ。

「うわぁっ」 

 彼女は宙で宙返りをし、直ぐに悪鬼に切りかかった。悪鬼の腕を切り落とした。


「き、ぎゃぁあああ」

 血を噴き出し、悪鬼は悲鳴をあげた。小春は悲鳴をあげる悪鬼に容赦などせず、直ぐに首を切り落とした。首から大量に噴き出す血。

 首を失った体は一時、痙攣を起こしていたのだが、次第になくなった。そして、悪鬼の体と首は砂のように消えて無くなった。


「終わった……これで依頼は解決ですね」

「ああ、だが、今回の依頼は霊を成仏させること。まだ依頼は終わっていないぜ」

「ん?でも、悪鬼は女の嫉妬と憎しみから生まれたんですよね?それだったら夕霧さんの霊は本当は、憎しみの塊の幻想だったのじゃないか?と思っているんですが」

「お前も考えるようになったな」

 鹿威が笑った。しかし、直ぐに真顔になった。


「小春。夕霧を殺したのは、悪鬼に取り憑かれていた伊右衛門だ。ここまでは解るな?」

「はい」

「だが」

 鹿威はスッと人差し指をあげた。

「オレ達が依頼されたのは、その夕霧を成仏させることだ。それは伊右衛門から依頼された。しかし、反対にオレ達はその夕霧から悪鬼に取り憑かれている伊右衛門を助けて欲しいと依頼されている」

「ん?ということは?」

 小春は首を傾げた。小春

「先ほど終わったのは夕霧の依頼で、伊右衛門からの依頼はまだ終わっていないってことさ」

「ああ。じゃあ、つまり、依頼は二つあったんですね?でも、悪鬼は倒したし、夕霧さんの依頼は終わったので、気が晴れた夕霧さんは晴れて成仏できる。そうじゃないんですか?」

「まあな。さあ、夕霧さんよ」

 鹿威はある人の所に向かってその名を呼んだ。小春は驚いた。


「え?まさか……」

「そいつの体から成仏しちゃくれないか?」

「夕霧さん?もしかして、匠次郎さんって今、夕霧さんになってるの!?」

「ええ。私はこの人の体を少し貸してもらっているの。頼んだらね、体を貸してくれたのよ?」

 女の口調で、目を細めて笑っているその表情は妙に色っぽかった。

「えっ?でも、さっきはわたしと話して……」

「記憶を見れば、貴方との会話は雑作もないことよ」

 その冷ややかな視線と無表情な顔に小春はピンッときた。

「あ………」

(あの表情、さっきと同じだ。といことは、匠次郎さんと会話しながら、実は彼女と会話していたといことか。だから、会話が弾まなかったわけか。なるほど) 


「夕霧、その体から離れて成仏してくれ」 

「……ええ。いいわ。私の依頼は達成されたし、あの子達が苦しまなくなる。だけど、私、最後に子守歌を聴きたいわ。ねぇ、誰か歌ってくれる?」

 夕霧は彼らを見た。そして、小春に目がいくと、うっすら微笑み、彼女を指差した。

「貴方が良いわ。歌ってくれる?」

「えっ?」

「でも、ドブの前では聴きたくないわ。部屋にあがりましょう」

 夕霧は小春の手を引くと、そのまま、家に入り二回に連れて行った。


「ここは元は私の部屋なのよ。今は誰が使っているか知らないけどね」

「えぇ、入っちゃって良いんですか?」

「見つかったら、その時よ」

「えー」 

 それは状況的によろしくないんじゃないかな、と小春は思った。夕霧は女だが、その体は男なのだ。

「ねぇ、座って」

 小春は素直に従い、座った。夕霧は小春の隣にしゃがみ込むと小春の目を覗き込んだ。

「お面、取ってくれる?」

 少し躊躇した小春だが、深い溜め息をはいて、面を取った。


「綺麗ね。この子が夢中になるはずだわ」

「えっ?」

 驚いた小春を気にせず、夕霧は小春の膝の上に頭を乗せて、ゴロッと横になった。

「私ね、一様、彼の想いを尊重しているのよ?だから……歌って」

 遅い口調で目を細めて微笑んだ。その微笑みを見て、小春はドキッとした。

(うわーわーわーわ!色気が妙に合っているよ、匠次郎さん!しかも、女口調が合ってる!匠次郎さん、貴方は女性でもいけます!むしろ、今度は女装してください!) 

 心の中でガッツポーズをしていた。既に心は別の方向に向かって行った小春だが、夕霧からの頼み事を思い出した。

「う、う、歌いますね?」

 緊張し過ぎて、言葉が上手く出なかった。

「ええ」

 小春は大きく深呼吸をした。フッと、何を歌おうか迷ったが、小春が4歳の時、義母のお春が歌っていた子守歌を歌うことにした。



愛しい 我が子


お前は何で泣いているの


悲しいの 


寂しいの


泣くなや 泣くなーや


母に揺られて  ねんねしよー


もう 何も怖くない


寂しくない 


お前のそばに 母はいるー


すややと おねね 


愛しい 我が子




 ここまで歌い終わったあと不意に、夕霧が小春の頬に手をやって、微笑んだ。彼女はゆっくりと瞼を閉じた。


ありがとう………やっと自由になれる

 

 そんな言葉が小春の耳に聞こえた。小春は歌いながら首を傾げて、彼(彼女)の顔を伺った。

 彼が再び開けた時には驚きの色が浮かんでいた。

「こ、小春さんっ!?」

 何時もの匠次郎に戻っていた。彼は驚いて起き上がろうとしたが、彼を覗いていた小春とぶつかった。

「「ギァァァァア!!」」

 匠次郎は横に転がり、額を押さえてうずくまり、小春は後ろに倒れ、鼻を押さえて、左右にゴロンゴロンと転がった。


 もし、鹿威と霪馬がこの場面を目撃していたならば、二柱(人)揃って呆れていたことだろう。

「す、すみません!まさか、小春さんが目の前にいるなんて……思ってもいなくて、て、本当にすみませんでしたー!」

 明らかに、戸惑っていた。彼は両手を添えて、先ほど打った額を再び強く畳に打ちつけて謝った。


「いえいえいえいえいえいえいえいえ、そんな気にしないでください……ゴホッ」 

 小春は鼻血を大量に出していた。彼女は鼻をつまみ、どこかに何か拭くのは無いかと辺りをキョロキョロした。

 運が良く、そこには何も書かれていない紙が沢山あった。小春は心の中で謝りつつ、その紙を数枚ほど失敬した。

 小春はその紙を丸めて鼻に突っ込んだ。


「小春さん、鼻大丈夫で………」

 その鼻に突っ込んだ紙で、鼻が大きくなってしまった小春の顔を見て、匠次郎は固まった。女性なら、あるまじき行為を一様、美少女の小春は男の前で平気にしでかしたのだ。

 しかも、その男は彼女に十一年間の淡い恋心を抱いているのだ。が、流石は十一年間、想い続けている彼はコレくらいでは引かない。

「うわわわわ!小春さん、大丈夫ですか?血が大量に……」

「うぉーい、一体何の騒ぎだ?」

 襖をスーッと開けたのは鹿威だった。その後ろからは霪馬が顔を覗かせた。


「あれ?お前ら何やってんだ?小春、鼻血が出てるぞ?鹿威のようにエロいこと考えて鼻血出したか?」

「えっ?そんなことした覚えはない気もするが、ある気もする」

 鹿威は曖昧な返事をした。そんな彼を霪馬は呆れ気味に見ていた。

「どっちだよ」


「わたしは違いますよ。わたしは匠次郎さんの額にぶつかって鼻血を出したのです」

「そうです。私が急に起き上がったばかりに、小春さんは鼻血を出してしまったのです」

「いやいやいや。別に鼻血出した位で小春はデス(Death)にはならないから。それより問題なのは、女のお前が何で紙を鼻に突っ込んでいるかだよ。お前、女だろ?一様、女だろ?」

「一様は余計ですよ。鹿威さん」

 小春はムスッと頬を膨らませた。


「まあ、取り敢えず、依頼は終わったし。御駄賃は頂いたから、帰るか?」

 霪馬は窓から身を乗り出して言った。その言葉に小春が一番に賛成した。

「そうですね。わたし、お腹ペッコペコです」

「じゃあな、匠ちゃん!早く進展しろよー」

 鹿威が手を拭りながら、危ういモノを言った。匠次郎は顔を真っ赤にしながら慌てた。

「あわわわわわっ!言わないで下さい!」

 そのまま、彼らは姿を消した。とりあえず、小春にはバレなかったものも、匠次郎はまだ心臓がバクバクしていた。

(やっ、やったーー!何か知らないけど、小春さんに膝枕してもらった!わーわーわー!膝、凄く柔らかかった。幽霊さん、夕霧さん。ありがとう!) 

 匠次郎は今日一番の嬉しい思い出となった。



 一方そのころ、小春達は────

「鹿威さん鹿威さん。匠次郎さんに言っていた進展って何です?」

「んー?お前もいずれ解るよ。まあ、ぼちぼちだけどな」

「何ですかね?それは。所で、何で夕霧さんは子守歌を歌ったら成仏してくれたんですか?」


「ああ、あれは、小さい時からよく子守歌を聞いていたからだろう。大人になったら聞く方ではなく聞かれる方だからな……まあ、最後に子守歌を自分以外の人が歌っているのを聞きたいとかの、そんな単純な理由じゃねーかな?」

「……未練って人それぞれ何ですね?」

「ああ。だな」

「小春は、鹿威のようにエロくなったら駄目だからな」

 霪馬が不意にこう切り出した。

「なっ!?お前、まだそれ引きずってんのかよ!」

 口喧嘩?が始まりだした彼らに対して小春は大きく溜め息をはいた。

(また始まった)

 今回の依頼も無事終わったのであった。




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