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第十話 道束と呪い

色々と修正しました!

 

 あの間抜けな鬼からおきんの居場所を聞いたものも、そこは鬼達が沢山いた。

「随分と居るな……」

「当たり前ですよ。だってここ、一様牢屋ですから」

「さて、だったらどうやって助け出すか……」

「あっ、それだったらわたし、囮になりましょうか?」

「お前……止めとけよ。すぐに捕まりそうだ」

「大丈夫です。親友のおきんちゃんの為なら多分捕まりませんよ」

 霪馬さんは変な目でわたしを見た。


「一体どこからそんな不思議な自信がわくのかな?」

 わたしは顔を傾げた

「うーん、何処からでしょう?」

「はぁ、そんな何処から出た自信ならやめとけ。お前が捕まったら面倒だ」

「ええ!じゃぁ、変わりに霪馬さんが捕まって下さるんですか?」

「うん。お前、今サラリと酷いこと言ってるぞ」

「そっ、そんな……霪馬さんが鬼達に捕まる貴重な場面を見逃せって、わたしに言うんですか?」

「あれ?今一瞬、本音が聞こえたような………」

「いえ、分かりました」

 わたしは胸の前で拳を握りしめた。


「おきんちゃんを助けた後に見に行きますから、それまで捕まっちゃ駄目ですよ!」

「一体何を決意しちゃってんの!?」 

 取りあえず、わたしはおきんを助けに向かった。霪馬さんは鬼達の気を引くべく自ら劣りになった………はずなのだが、その鬼達は口から泡を吹いて目が真っ白になって倒れていた。

 円になって倒れた鬼達の真ん中には霪馬さんが手を叩きながら、そこに当たり前のように居た。


「いっちょっあがりよ」

 彼はわたしに向かって親指を立て、片目をパチリとつぶった。 

「えっ?え、ちょっ……ええええええ!何か早くないですか!?」

「早いって何が?」

 彼はキョトンとしていた。

「鬼達を負かすのですよ!」

「えー?うーん、だって俺一様アレだし、こんな雑魚達に負けるワケないし」

「それでも負けたフリぐらいしてくださいよ。全然面白く無いじゃないですか!」

「あーもう、そんな事はどうでも良いだろ?それより早くおきんを助け出さないのか?」

 霪馬さんは面倒くさそうに顔をゆがめた。


「今から行く所ですよ」

「お前遅いな」

「霪馬さんが早いだけです」

 わたしはそう言いながら牢屋を一番奥まで見た。しかし人らしい気配は無く、わたしは焦りながら親友の名前を呼んだ。親友のおきんがここには居ないと気づくとわたしは霪馬さんを見た。

「どうしよう……霪馬さん、おきんちゃんここには居ないよ」

「居ない?何故?あの鬼はここに居ると言ったぞ」

「もしかしたらあの鬼さん、嘘をついたかもしれない」

 それを聞くと霪馬さんは少し考えた後、またあの鬼の所に行くぞとわたしに言った。


「でも………」

 わたしが口ごもった時、わたしの後ろでうつ伏せになって倒れていた鬼が急に起き上がりわたし目掛けて刀振り下ろした。

 が、それに気づいた霪馬さんの方が一歩早く、彼は鬼の刀を折り、鬼の胸ぐらを掴んで壁に叩きつけた。鈍いドンッっという音が聞こえた。わたしは一瞬何が起きたか理解出来なかった。

「アグッ!」

 しかしこの苦しそうな声を聞いてわたしはやっと今の状況を把握出来た。


「へっへ、他の奴みたいに俺を殺さないのか?」

 鬼は霪馬さんによって持ち上げられ、足が地面に着いていない状態だった。

「殺す?何故殺さなければならない?」

「ここにいる俺の仲間を皆殺しにしたくせによく言うよ」

 鬼は下に転がっている仲間達を見た。

「お前、何誤解してんだ?お前の仲間は死んじゃいねーよ。ただ気絶しているだけだ。よく確かめてみろよ」

「だったら早く下ろしてくれ」

 鬼は足をバタつかせた。しかし、霪馬さんは余裕たっぷりに片腕で鬼を持ち上げていた。


「アホ野郎。誰が離すかよ。確認したけりゃ後でしろ。そして俺はお前に聞きたいことがある」

「何だ?」

 鬼は霪馬さんを睨んだ。

「ここに人間の女で身ごもっている女人を見なかったか?」

「はっん、そんな奴ついさっき道束(みちつか)様の調理場の所に連れて行かれた。もうそろそろあの女はただの肉の塊となろるだろう」

「そんなっ!」 

 わたしは小さな悲鳴をあげた。

「おい、調理場は何処にある?」

「ふっ、誰が教えるガァッ」

 鬼がそう言い終わる前に霪馬さんは鬼を気絶させた。


「行くぞ小春」

 霪馬さんはわたしの腕を掴んだ。

「行くって、場所分かるんですか!?」

「ああ、多分そこは何人もの人を殺し、血のニオイが漂っているはずだ」

 彼はそう言うと鼻をヒクヒクさせた。

「ああ、なる程な。お香の匂いで消しているつもりだろうが微かに血のニオイがする」

「おきんちゃんは無事そうですか?」

「まだ新しい血のにおいはしてない。多分大丈夫だろう」

 彼らは血のニオイのする方へと行った。しかし、曲がり角があるところで誰かとぶつかった。


「イッタ!」

「ひゃっ」

 そこでぶつかったのは鹿威さんと菖蒲さんだった。

「ちょっと何ぶつかってんのさ!馬鹿ァァ!」

「それはこっちの台詞だ爆乳女!」

 霪馬さんと菖蒲さんは顔を見合わせると直ぐに喧嘩をし始めた。鹿威さんはイテテテっと頭をおさえながら彼らの方を見て「またかよ」っと思っているかのような目つきだった。

 わたしはと言うと………


「もういい加減にしてくださいよ!っでどこからニオうんですか?」

 わたしは立ち上がり彼等を見下ろした。

「あっち」

 霪馬さんは手前の扉を指した。そして、わたしはその扉に向かって走った。しかし、なかなか扉が開かず結局わたしは足で蹴破った。大きな鈍い音が廊下に響いた。


「あれ?」

 わたしは自分の足で扉を蹴破れた事にちょっと驚いた。そして、いつの間にか横にいた鹿威さんが顎に手を当てながら言った。

「お前……ちと女らしくしたらどうだ?」 

「鹿威さんは黙って下さいよ」

 中に居た鬼達は驚いて、おきんはどこにもいなかった。

「なっ、何者だ貴様!」

「おきんちゃん、どこ?!」

 っと鬼とわたしが言ったのが同時だった為、一瞬静かになった。

「えっと!」

「おいっ!」

 またもや一緒に言ったためまた二人は静かになった。

「あのお先にどうぞ」

「いえ、そちらからどうぞ」

「えっと、わたしは後で良いですよ」

「いえいえ、俺の方こそ後からで良いですよ」

 それに対して鹿威さんがツッコんだ。


「お前ら何敵同士で譲り合ってんの?!」

「例え敵同士であっても話しは最後まで聞かないといけませんし……母からそう教えられましたから」

「ああ、お宅もそうですか?実は俺も何ですよ。人の話しはしっかり最後まで聞けって」

「やっぱ言われますよね~」

「ですよね~」

「「ウフフフフフ」」

「ウフフフフフじゃねーし!お前ら何ゆっくり話してんの?敵同士だろ!設定しっかり守れよ!」

 二人は顎に手を当てて少し考えた。


「そうですね、やっぱ設定は守んないといけませんね?」

「だったら!」

 わたしはそこら辺にあった箒を持って、鬼は刀を持ってお互い向き合い走りながら叫んだ。

 わたしは………

「せんせーい!」 

 鬼は………

「教え子ー!」

 二人はもって………

「「覚悟ォオ!!」」

「っじゃぁねーだろォォォオ!!」

 鹿威さんがツッコんだ。わたし達は立ち止まり、鹿威さんの方に振り向いた。


「えっ?何が?」

「お前ら、敵同士だって言ってんだろ!何二人でボケてんの?」

「ボケてなど無い。相手の冗談にのってあげただけだ」

「そうですよ。冗談にのらないと、のり悪い人になるじゃないですか?」

「今はそんな事どうだって良いだろ!つか、お前ら敵同士なのに息あいすぎだろ!何時打ち合わせしたの!」

「打ち合わせではありません。以心伝心です」

「お前、敵同士なのに以心伝心してたの?」

 鹿威さんがここまでツッコミし終えると、次は他の鬼達が口々に言い始めた。


「た、隊長。何してるんですか!」

「そうですよ隊長!そいつ等敵じゃありませんか!」

「何を言っている?一様敵であっても、おもてなしをしなければな……」

「あの~隊長。敵の意味分かってます?」

 少しの沈黙が流れたあと、鬼は恥ずかしそうにゴホンッと一咳きしたあと、わたしに向き直って言った。


「ところで君たちこんな所で何をしている?迷子か?」

「侵入者ですよ隊長」

 隊長鬼の間違いをサラリと部下鬼が正した。

「何?侵入者だと?いつ入った?」

「ええっ!隊長知らないんですか?先ほどコイツらが侵入したのを鐘で知らせたではありませんか!仲間が」

「多分その時は道束様の部屋に居たな……あそこは密封しているから外からの物音が聞こえん」

「え?マジっすか?」

 部下達が驚いた表情をした。その部屋のことを今まで知らなかったらしい。隊長鬼は部下達の顔を見て、鹿威さん達に言った。


「ところで、ここに何か要があるのかな?そして、菖蒲。お前何故そちら側にいる?」

「俺達はおきんって身ごもった女人を探しているんだ」

「あたしは、もうやってられなくてね?人攫いの鬼の元で働くのは」

「おきん?誰だそれは?人攫い?そんなこと俺達がするはずがない。第一、俺達は人食い鬼では無いし、純粋の野菜派だ。肉を食べたとしても、人の肉以外だ。そして、鬼の中では珍しい人間に害をなさないで、山奥でひっそりと暮らしている争いを好まない鬼だ」

「だったら何故おきんを攫ったのです?」

 わたしが不思議に思っていることを言った。


「だから攫ってなど無いっとさっきから言っておろうに………なぁ?おまえ達。おまえ達もおきんって人間の女知らないだろう?」

 そう、部下達に言った隊長は彼等の顔を見た。すると部下の誰一人も、隊長に目を合わす者はいなく、逸らすばかりだった。その様子を見て悟った隊長はうろたえた。


「おっ、おまえ達……まさか!」

「隊長。俺達は道束様を助けたくて、したことです」

「道束様を助けたくてだと?」

「道束様は……もう六十年もお腹にいる子供が産まれてこないと聞きました」

「それはおまえ達下っ端には関係の無いことだ」

「ですが隊長!やっぱり俺達も見たいですよ!道束様の子を………だから早く産まれて欲しいと思って」

「思って何をした?」

「人攫いをしました。同じ身ごもっているひ」

 そう部下の一人が言い終わる前にその部下は隊長によって殴り倒されていた。

「おまえ達は何て取り返しのつかない事をしたんだ!おまえ達は道束様の顔に泥を塗ったのだぞ!」

「知ってますよ!ですがコレは五十年前にある変な人から言われてしたことです」

「変な人?」

「変な人から『人を攫って、人間の肉を食べさせれば良くなる』って言われたんです。ソイツ、最初は人間の子供を攫えって言って攫ったんですけど全然ダメで、二人目からは身ごもった女性を攫いました」

「おい、部下1。お前一体今まで何人の人を攫った?」

 霪馬さんが部下1を睨みつけながら言った。その部下1と言われた鬼は仲間達の顔を見て言った。


「五年に一度、人を攫っていたので、子供合わせて十人ですが正確にはまだ九人です」

「九人?」

 隊長鬼が不思議に聞き返した。

「えっと、今日攫った人まだ生きてるんで……」

 鬼のまだ生きているにちょっと怒りを感じた小春だが、それよりも大好きな親友が生きていることに安心になった。

「おきんちゃん無事なの!」

「はい、二階の部屋の隅に寝かしてあります」

「良かった……」

 わたし個人としては良かったのだが、九人の人が犠牲になっていると分かった隊長鬼は無口のままだった。 


「おーい、どうしたんだ?隊長の鬼さん」

 霪馬さんが隊長の顔の前で手を振った。

「ああ、何てことだ……道束様は人間の肉を知らずに食べていたのか……一族が……一族が穢れてしまった。これじゃぁ、他の鬼共と一緒じゃないか」

「穢れた?何で?」

 霪馬さんが首を傾げた。

「人間に害をなさない人と共存出来る鬼を目指すつもりだったのに……部下達もそう教えてきたはずなのに、何処をどう道を間違えてしまったのか?俺には分からんよ。もう、この一族は純粋じゃ無くなった」

「何故そんなに純粋にこだわる?別に純粋じゃなくても良いじゃないか?それに、道を見違えたって別に良いだろ?皆、生きてれば進む道ぐらい間違える事ぐらいあるさ」

「だが……」


「ウダウダ細かい事は気にすんなよ。間違えた道を進んだなら、そこから自分が思う正しき道に進み直せば良い。過去の事を何時まで思っても起きちまった事は仕方ない」

「………」

「だったらその過去の過ちを忘れずに二度と同じ過ちをしなければな良い。ただそんだけのことだ。人間より寿命が長いアンタら鬼ならまだ直せるハズだろ?」

 霪馬さんの長ったらしい話しを聞き終えた隊長鬼は弱々しく微笑んだ。

 

 そして霪馬さんは鹿威さんとひそひそ話しの中で「俺何か名言言ってねー?」みたいな事を言っていた。


「ああ、そうだな。流石は生きている時が違う神さんだ」  

 霪馬さんはこの言葉に疑問を感じた。

「何時から俺達が普通の者でも無い奴と気づいた?」

「道束様から最近ここら辺に霊力の強い者が二匹と得体の知れない者が一匹、感じるようになった」

 すみません。“匹”ではなく、“人”か“柱”です。

 これに対して霪馬さんはちょっと納得したようだった。


「よし。だったら早いとこおきんを連れ戻して帰るとするか」

「待て」

 鹿威さんが霪馬さんを止めた。

「何だよ?」

「まだちょっとこの鬼に聞きたいことがある」

「聞きたいこととは何だ?」

「アンタらの大将さん、まだ子供のことで苦しんでんだろ?」

「あ、ああ、そうだな……まだその問題は解決していなんだった」

「その道束って言う大将さんに会いたいんだが…」

 この鹿威さんの言葉を聞いて、隊長鬼に緊張が走った。そして、警戒を込めた感じで鹿威さんに言った。


「何故?貴様等に関係無いだろ?」

「いや、何つーかさ……その問題、解決できるかもしれん」

「え?本当ですか?鹿威さん」

「ああ、多分。だってここには安産や子宝を司る神でもある菊理媛神またの名を白山比咩大神の生まれ変わりである小春が居るからな

「え?…………えっ、え、えぇぇぇぇ!わ、わたし!」

 わたしは自分に指をさし驚いていた。鬼達は一斉にわたしを見た。


「えっ?何何?小春ちん、神様なの!」

 菖蒲さんがわたしに迫った。

「う、うん?」

「あたし、てっきり小春ちんは人間だと思ってたのに!全然霊力感じられなかったのに!」

「爆乳は少し感覚がこっちの側に近い方なんだな」

 霪馬さんがサラリと菖蒲さんの禁句を言いながらわたしも思っている事を口に出した。


「そうだったのか。だから妙に神々しかったのか?っで茶色い髪殿、その道束様の問題が解決するのは本当であろうな?」

「ああ、小春に任せれば問題ない。だが、ただでやる訳に行かないんでね、アンタらいかにも金持ってそうな奴にはしっかり頂くぜ?」

「ああ、分かった。道束様の問題が解決したら払ってやる」

「よし引き受けた!」

「何が引き受けたって言っちゃってるんですか!」

 わたしは神の力を使った経験がないのも疎か、神擬として完全に力に目覚めていないのに!


「命が関わってんのに、何未経験のわたしに任せちゃうんですか!」

「それも力が目覚める一つの方法だから仕方ないだろ?」 

 わたし達二人はこの事で少し言い合っていたが最終的にはわたしがしぶしぶ承諾した。しかし、鬼達は不安そうだった。


「おい、茶色い髪殿。本当に彼女に任せて大丈夫なのか?彼女、未経験だと言ってるぞ?」

「えっ?未経験?何の?もしかしてあっち系の?」

「違う。貴様、とんでも無いドスケベ変態クソ野郎神だな?俺が聞いているのは、彼女に任せて大丈夫なのか?だ」

 この隊長鬼の暴言を聞いて、鹿威さんは顔をしかめた。

「コイツ……神であるオレに平気に暴言吐いてんだけど……一様これツッコミした方が良いの?ねぇ、した方が良いの?」

 っと鹿威さんはそう口にしながらも隊長鬼が知りたい事を簡単に説明した。


「ああ、そっちね?大丈夫だよ。例え失敗しても死にゃしないよ。ただちょっと健康か不健康になるだけだ。問題無い」

「いや、問題大ありだろ!」

「ところで隊長鬼さん」

 わたしが隊長鬼に道束さんの部屋に案内してくださいっと言った。


「ああ、そうだったな。今から案内する。付いて来い………ところでさっきから気になるんだが、その隊長鬼って俺のことか?」

「だって他の鬼があなたの事、隊長って呼んでいるから隊長鬼で、他の鬼は部下鬼です」

「そうか、出来るならコレからは名前で呼んでくれんか?俺も一様ちゃんとした名前ってもんがあるんで」

「良いですよ」

 わたしは不思議に思いながらも言った。


「俺の名前、千景(ちかげ)って言うんです」

「千景ですか?」

「はい。千に風景の景って書いて千景」

「へぇ、良い名前ですね!」

 するとわたし達の会話に鹿威さん達が割り込んできた。鹿威さんが驚いたように目を見開き、手に口を当て言った。

「えっ?何?ち…」

「誰もそんな下ネタの名前何て付けませんよ鹿威さん」

 わたしが鹿威さんの危うい下ネタを言う前にツッコんだ。すると次は────

「えっ?何?()になり(かけ)ですかな?お宅さん」

「霪馬さん……それ違います。名前じゃないです。言葉になっています。つか、どんな聞き間違いしてるんですか!」 

 こんなわたしのツッコミを聞いてもやっぱり三人目のバカが現れる。


「えっ?何?隊長ってそんな恥ハゲ(ちはげ)って珍しい名前何ですか?」

 この「ハゲ」っと言う言葉を聞いて千景は自分の頭を触ってみた。

「大丈夫ですよ千景さん。あなたはハゲていません!ちょっと薄いだけです。それに、菖蒲さん。もはや”ち”と“げ”しか合っていないじゃないですか!!」

「え~、でも千景ってオレ的には……名前的に下ネタずくしじゃん」

 わたしは恐い顔でツッコんだ。

「いえ、あなた達の頭の中が下ネタだらけなのです。不純……」

 わたしの低い声で彼らは黙った。普段は温和しい人が怒ると恐いと言われるが、それはわたしの事であろか……なんて思って見たり。


「ところで、三人方の名前を知りたいのですが」

 場の空気を読めない千景さんが言った。

「あっ、申し遅れました。オレ達こういう者でして」

 そう言いながら鹿威さんが千景さんに紙を渡した。

「あなた方のお悩み、相談事スパッと簡単解決!何でも聞き入れます。気楽にここに名前を書いて紙を折って小さな鳥居に投げて下さい………すまんが、これ何だ?」

「今日からそう言う仕事してます。俺たち!」

 ピース姿の鹿威さんに対してわたし達はゲンナリしていた。


「今日からだと?」

「今日が初依頼ナノです!」

「そうか……神様なのに変な事してるんだな。それは頑張ってくれ」

「でも鹿威さん。これ、わたしが聞いた依頼の受付方と全然違うんですけど?」

「あれ、何か変だったからそこに鳥居を建てて変えたんだよ」

 何時建てたんだよっと思ったわたしは思わず口から出そうになった。


「でっ、肝心の名前が教えて貰っていないんだが」

「オレ、鹿の神である鹿威」

「十二支が一柱(ひとり)、午の霪馬だ」

「小春です」

 わたしの自己紹介の後から霪馬さんが付け足した。


「さっきも言ったように彼女は菊理媛神の生まれ変わりで神擬なんだ」

「神擬?なんだそれは?」

 千景さんは足を止めて彼らの方に振り返った。

「まだ完全な神では無いこと。でも力さえ目覚めればほとんど神と変わらなくなるが、ある事を終えないと完全なる神に成らないがな」

「ある事とは何だ?」

「そこまでは俺達の口から言えないこと何で教える訳にはいかないかな?」

「そうか……小春殿、貴様も苦労しているのだな」

「はあ………」

 苦労って言うよりもこんな宿命を持った自分が憎いんだけどな……ってかおきんちゃんの事皆忘れてない?


 そして千景さんはまた歩き出した。程なくして道束が居るという部屋についた。そこは蝋燭の灯りが頼りで薄暗かった。

「本来はこんな薄暗い所が好きじゃないお方なのだがここ30年前から光が恐いと言ってな、板をはめて光が出る所は全部閉じた」

「気味が悪いな」

 鹿威さんが呟いた。わたしと霪馬さんも同じことを思っていた。霪馬さん早く出たがっていた。千景さんは襖の前に来ると腰に差していた刀を抜いて座った。


「道束様、客を連れて来ました」

 そう千景さんが言うと中から道束と思われる弱々しい声が聞こえた。千景さんは襖を開けた。そこには寝ている腹が膨らんだ白髪の女性が寝ていた。


 随時と弱っている……髪が白いのは元からなのかな?霪馬さんだって若白髪じゃなくて、生まれつき色が白いって言っていたし白馬だと言っていたし……彼女の場合は白鬼かな?

 千景さんは道束の脇に寄ると彼女と少し言葉を交わしてわたし達を呼んだ。


「来い」

 わたしは道束と思われる寝ている人の前に来ると千景さんは「座れっ」と言った。そしてわたしが座った所からはちょうど道束の横顔が見えた。道束はわたしの方を見た。

「嗚呼、あなたが小春ね?」

「はい」

 髪の毛で見えなかったけど道束さんやせ細っている…………

「彼女がここの主で道束様だ」

 千景さんが紹介した。彼女はわたしを見つめながら言った。 


(わたくし)のこの60年に及ぶ状態を治してくれるって本当?」

 弱々しいく、手をわたしの方にさしだし目が助けてと訴えていた。

「はい、出来る限り」

 わたしは彼女の手を両手で包んだ。

 冷たい…………

「あなた手が温かいのね?」

 ずっと二柱(ふたり)で黙っていた鹿威さんが千景さんに言った。


「おい、ちん……千景。コイツが悪くなる前どこかに行ったか?」

「今何か聞こえたが………まあ、ああ………うーんどこかに出かけた?出かけた……あっ、思い出したぞ!確か具合が悪くなる前、つまり出産予定日の三ヶ月前に一族全員で花見を見に行った。それ以外どこも出かけていないが?」

 良く60年も前の記憶、覚えていましたね?流石は鬼っとわたしは思ってしまった。


「どこの花見場だ?」

「どこって言っても部下が見つけた花見で、凄く綺麗だったんだが、道束様が具合が悪くなった後、道束様を元気づけようと桜の花の枝でも土産に持って行こうかと思って行って見たらそこはただの林に戻っていて、今は無いぞ………しかし、俺達が見た桜は幻だったのであろうか?」

「おい、痔になり景さん。それは呪いだ」

 霪馬さんの呪いと言う言葉に鹿威以外のわたしを含めて皆が驚いた。


「の、呪いだと!」

「一体何の呪いだと言うのですか?あんなに綺麗だった桜が…ゲホッゴホッ」

「道束様、無理に話さなくても……」

「いえ、まだ大丈夫よ」

 そう彼女は言うと起き上がろうとした。それを千景さんが止めた。

「道束様、無理に起き上がらないで下さい!」

「それでも寝たままお客と話せないわ」

「しかし……」

「大丈夫。今日の私何時もより機嫌が良いの」

 二人を見つめていた霪馬さんが二人の今の状況をぶち壊す発言をした。


「お前らまるで夫婦みたいだな?」

「夫婦なんて、そんな………ち、違う」

 道束さんは無反応だったが千景さんだけが狼狽えた。彼の場合、顔の半分上が仮面で隠れているのでそれが頬を赤らめているのか?わたしには分からなかった。 


「まあ、痴話喧嘩は止めて、話しを戻そう」

 霪馬さんが千景さんの反応を無視して、話しを戻した。

「お前たちが知りたいのは呪いの事だろ?」

「はい、何故あの桜の木々が呪いによって出来た桜なのか話しで分かったのは何故ですか?」

「それだって俺達、約九百年前に見たことあるから」

「きゅ、九百年前!?」

「ってか馬と鹿って何者なのよ?」

 菖蒲さんが腕を組ながら霪馬さんに聞いた。


「先ほども言ったように俺達」

「「神です」」

 二柱揃って決め顔で言った。そこにわたしが付け足した。

「神様って言っても、そこら辺の名高い神様じゃないです。有名でも無い神であって一様神様な感じ何です。本当、全然偉くないですよ。もう、ふっつーうに接して下さい」

「お前、変な事言うなよ!」

 鹿威さんが言った。


「えっ?でも本当の事だし」

「しかし、そこまで生きていると本当に神様なんだなって思ってしまうな」

 話しがズレてきているのに気付いた霪馬さんは一咳きをすると話しを戻した。


「でな、それはある人物が作り出した呪いなんだ。その人物が作り出した呪いの中でも沢山の種類があってな、通っただけで呪われる所や女子供だけが呪われる呪い、反対に男だけが呪われる呪い何て、本当沢山の危ない呪いがある」

 呪い呪いと沢山使っているからちょっとわたしの頭では分かりにくいな?


 わたしは一生懸命霪馬さんの話しを聞いていたが半分は理解出来ない状況だった。

「その沢山の中に身ごもった女性が呪われる呪いがあるんだ。偽の桜を花見したり、呪われた実を食べたりしたら、その呪いにかかってしまうと言う簡単な方法だが、その呪いを解除する方はある人物しか解除出来ないというモノだ」

「それではこの呪いは解けないのか?」

「いえ、お二人さん。あなた方は運が良いですね?」

「運だと?」

「その呪いを解ける方がここにいる。小春はある人物と実際には彼等は会ったことは無いが似ている」

 わたしはある人物と似ていると聞いてあれ?っと思った。


 わたしと似ているある人物、それは………初めの神擬?二代と三代はあり得ないからな?

「何?小春殿は彼女の今の状況を治すだけでは無く、呪いまで解くことが出来るのか!」

「うん、わたし自身知りませんでした」

 鬼二人から凄い不安な目で見られたわたしであった。


「さあ、小春。早いとこおっぱじめな」

「霪馬さん。わたし力の使い方が全然っ!分からないんですけど?」

 わたしは“全然”の部分をかなり強調して言った。

「大丈夫だ。彼女の場合は呪われているのは子と母だ。その二人の繋がりのある場所に両手を置いて強く願え。さて、道束の場合は腹だな」

 道束さんは寝転がり、わたしは言われたとおり道束さんの腹の上に置いた。しかし、やっぱり不安になったわたしは霪馬さんを見た。彼は少々溜め息を吐いた。その後、わたしの両手を片手で持って(へそ)の辺りに置いた。


「良いか小春。子と母が一番繋がりが強いのは臍の辺りだ。現に臍は親から栄養をもらう大事な所だからな」

「なるヘソ」

 こうしたちょっとしたギャグを言ってみたわたしだが霪馬さんから凄い(さげす)んだ目で見られた。わたしは心の中で恥ずかしい思いをした。


 そんな変な目で見なくても……良いじゃないですか!

「っで一体何を願えば良いんですか?」

「道束を助けてとかじゃね?」

 要するに霪馬さん達も分からないって事だ。わたしは道束さんのお腹に両手を当てながら目を瞑って考えた。そして強くこう願った。

 道束さんとお腹にいる子供を救って下さい。あと、彼女にかかった呪いを解いて!!

 わたしが強く願った途端に眩い光が出た。わたしは思わず瞑っていた目を更に強く瞑った。そして、わたしは何処からか不思議な声が聞こえた様な気がした。

 

助けて……さい


皆を殺さないで………


止めてくれ


全……誤解……何だ


争わ………ないで


巫女よ………母が……のは違う


彼女………無いんだ


止めてくれ


止めろ……


止めろー!


 それはどこか苦痛で悲しそうで、何かを阻止しようとする胸が苦しくなるような声だった。しかし、何故か若い男性の声でわたしにとってどこか聞いたことのある声だった。


 眩い光が消えた後、わたしは目を開けてみた。そこは先程と変わらぬ場所と人達だった。 

 先程の変な声は一体誰だったんだろう?

 っとわたしは思ったが一様霪馬さん達には言わなかった。何故ならそれは言ってはいけない感じだと薄々わたしは気づいていたからだ。


 後でカルさんに聞いてみようかな?

 そんな事を思いながらわたしは霪馬達の方に向き直った。

「霪馬さんと鹿威さん。これで良いんですか?」

「うーん、上出来なんじゃね?」

 鹿威さんが首を傾げながら言った。

「道束様、気分はどうです?」

「何だろう?今まで重かった体が軽くなったわ。それに、今は凄くお腹空いた」

「おお、そうですか!それは良かった」

 千景さんは部下達に食事の用意をするよう命令した。部下達は喜び飛び跳ねながら調理場の方へ競い合い、押し合いながら行った。


「あれ?」

 菖蒲さんの不思議そうな声に千景さんが振り返った。

「どうした?菖蒲」

「道束様って青い髪だったんですか?」

「ああ、ホントだ!さっきまで白い髪だったのに?」

 菖蒲さんとわたしの驚いた顔を見て、千景さんは不思議そうに言った。


「あれ?言っていなかったか?我々は青鬼だと」

 それを聞いてわたし達二人は手を振りながら「ないない」っと言ったが、確かに言われてみれば千景さんの髪も青黒かった。


「しかし、見事なスカイブルーだな」

 鹿威さんが道束さんの髪を見て呟いた。霪馬さん以外の皆は「はっ?」と言う様な顔をした。

「霪馬さん、スカイブルーって何ですか?」

「空色って言う意味だ。要するに水色だ」

「へぇー、そう言えば菖蒲さんの赤髪も見事ですよね」

「あたしの髪?全然綺麗じゃないよ。元は黒髪だったんだけど、妖怪に取り憑かれちまってね、妖怪は祓われたけど、取り憑かれた後遺症で髪が赤く成っちまったんだ」

「妖怪に取り憑かれたの!」

「うん、まあね……この髪色のせいで一族から破門されたし」

「えっ?は、破門って菖蒲さんもしかして……」

「そう、あたし赤霧一族という元忍者だよ」

 菖蒲さんはわたしに向かって微笑んだ。破門されたのに全く気にしていない様だった。


「忍者………あっ、だからあんなに素早かったんだ!うん、納得した………様な?」

 わたしは顔を傾げた。どうやらまだわたしの頭は忍者という仕事を理解出来ていない様だった。

「小春、そのお前の困ったちゃん頭は後で話すから、そろそろ帰るぞ」

「帰る前におきんって女人を連れ戻さないとここまで来た意味がないぞ霪馬」

「そうだった」

 霪馬さんが疲れた表情をした。わたしは両手をパシりと合わせ言った。


「取りあえず道束さんも元気になったし、おきんちゃんも無事そうだし、初依頼は無事終わりましたね?」

「ああ、そうだな」

 わたし達はこのあと、おきんと再会し、わたしとおきんは手を取り合って喜んだ。おきんは亭主のもとに帰り、道束さん達はひっそりとこのまま森の奥で暮らすそうだった。




   *   *   *   *



 そして、匠次郎は小春達が帰った直ぐに道束達の所に来た。


 既に事件は解決。彼は子供が最後に着ていた服を鬼から預かった。

 彼はその鬼どもを罰し、本来なら重い罰を受けるはずだった部下鬼達は、道束と千景の必死の弁解で、長い説教と二度と人と関わらない事だけを約束させた。


 藍色の着物を着た霊は成仏した。

────ありがとうございます

────あちらで会いに行きます

 その霊はただ子がどうなっているのか知りたかっただけだったのか、彼には分からなかった。

 彼はこれほどまでにも納得しない解決をあの霊が消えても悔いに悩んでいた。

 



   *   *   *   *



 四日目のわたし達のもとにある知らせが 届いた  。

「霪馬さんに鹿威さん。道束さんが男の子を無事に産んだそうですよ」

「えっ、マジ!」

「へぇー、そうなんだ」

 鹿威さんは驚いたようにしていたが、霪馬さんはさほど興味がなさそうだった。


「ちなみに同じ日におきんちゃんも産まれたそうです。おきんちゃんは女の子だって」

「あの可愛い女人子供産まれたの!ヤッダーもう。小春ちんお祝いに行かなくちゃぁー」

 菖蒲さんは喜んだ。彼女にとって女の子はこれから可愛いくなる対象だからだ。

 ちなみに彼女は既にわたしの家で住み込みで働いている。彼女は金はいらないが宿だけでも、っていったら、わたしの父が渋々了解した。

 わたしの母、お春はわたしに姉が出来たっとか言って喜んでいた。


「鹿威さんに霪馬さん。何か不思議ですよね~」

「何が?」

 鹿威さんが一口茶を飲んだ。

「同じ日に産まれくる事……これも何かの縁ってやつなのかなって」

「そうだな」

 


   *  *  *  *  *


 わたしは目が覚めた。

「ここは……」 

 そこは全てが真っ白だった。

「ああ、そうか。わたし夢想空に居るんだ」

 わたしはそう言って立ち上がり、ある方向に向かって歩き始めた。

 どこを見ても同じく真っ白だが、何故かわたしにはこっちの方に歩けば目的の人に会えると感じたからだ。 


 程なくして、人らしき影が見えてきた。わたしはそれに向かって走り出した。

「カルさーん!」

 わたしは大きな声を出しながら人の名前を呼んだ。その人は振り返ると……

「あれ?小春ちゃんじゃないか」

「カルさん。あの………」

 カルはニコニコしながらわたしを落ち着かせた。

「まあまあ、小春ちゃん少し呼吸を整えようか」

「あ、はい」

 そしてカルさんはわたしを座らせた。


「珍しいね~小春ちゃんから私に会いたがるだなんて。で、今日は何かな?」

「それが今日………」

 わたしは今日起こった事を全てカルさんに話した。

「なる程。君はその呪いを造った人が同じ神擬で、それも最初の神擬だと考えたんだね?それと、その呪いを解くとき変な声が聞こえたと」

「はい。あと、何かその声が若干カルさんに似ていたんだけど……あれは気のせいだったのかな?」

「それは気のせいだね。少々似ている声はこの世に沢山いる」

「はあ」

「でも小春ちゃん、どうしてその呪いが神擬が関連していると考えたんだい?」

 カルさんは首を傾げた。


「呪いをつくるのも、解くのも似ている人って聞いて……」

「そうか」

 カルさんが一瞬哀しい顔になるのをわたしは見逃さなかった。

「カルさん何かあるんですか?」

「いや、何でもないよ。それより小春ちゃん、今日は早く戻って寝た方が良いよ?君も疲れているだろうし」

「うん、まあね」

 今日は意外と帰るのが早いな~と思いつつも自分の世界に戻った。カルさんは見送りながら言った。


 その言葉はわたしにとって不思議に思うような内容だった。わたしは目が覚めるとボソりと呟いた。

「『小春ちゃんごめんね』ってどうして謝るのかな?」



シリアス書くの苦手!

あと文章長い!


でも、これで人攫いとあの霊の依頼編終わりだー!



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