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第九話 初めての依頼、そして……

ダラダラ長い文章です。

 わたしが川で洗い物をしていると、鹿威さんが後ろから何か紙を持ちながらやってきた。

「おーい、小春!」

「何でしょう?」

「イヤーね?小春ちょっと冷たいわ」

 ふざけているのだろうか?


「っとまあ、ほっといて、昨日の夜言っていた依頼の話しだけどね、実は昨日の夜の内に依頼のビラを霪馬と作って町中に貼ってきたんだぜ!霪馬と……」

「へぇー、そうですか」

 徹夜するぐらい頑張るなら他の仕事も頑張って欲しいものだ。


「昨日は大変だったよな?霪馬」

「はわぁー、はぁ、そうだな……眠い」

 大きなアクビをしながら霪馬さんは眠たそうに石に座っている。

「でなでな!なんと!今日はさっそく依頼が出て来たのさ!」

「へぇー、依頼ですか………えっ?いっ、依頼?」

「ああ、初めての依頼だ。まさかこんなに早くも仕事が飛び込んで来るんだなんて思ってもいなかったぜ!」

「でっ、一体どういった依頼の内容なんだ?」

 霪馬さんが言った。


「いやっ、何かさっ……あの通りにある地蔵さんの前で待ってて下さいと書いてあったんだ」

「ある地蔵さん?」

 ある通りの地蔵さんって何処だろう?通りに地蔵さんは沢山あるんだけど。

「あの通りって何処だよ」

 わたしが聞きたいことを霪馬が言ってくれた。

「まあ、ここの一番近くにある茶屋の横の地蔵さんだ」

 あっ、あそこか!

 あそことは、ここかぐち村に一番近い茶屋で元かぐち村に住んでいたおきんっという人が居るところだ。


 おきんという女人はわたしより一つ違いで、親友だ。今は小さな茶屋を亭主さんと建て一緒に切り盛りしている。しかし、早い話、もう直ぐ子が産まれると言うのだ。

「でも、どうやって依頼が来たとかわかったんですか?」

「箱みたいな小さな物をそこに置いといた」

「そう……ですか」

 以外と簡単な方法だった。

 一様神の端くれだし、何かソレっぽい方法でするのかと思ったが期待ハズレだな。

「んで!さっそくそこに行こうと思っているんだ!」

「その依頼、今日でないとダメなのか?」

 またまたわたしが言いたい事を霪馬さんがいっ言ってくれた。


「いや、紙にそう書かれてあった」

 ヒラヒラと紙を見せながら鹿威さんが言った。

「汚いよな、この文字。もう少し綺麗にかけってんの!」

 いや、どう見てもあなたの方が文字汚いです。一度、墨で書かれた文字を見てみたが、一体何んと書かれているのか?いや、そもそも文字なのか?っといった、まるで子供が書いたような文字を鹿威さんが書いたのを覚えていますよ。


「おめぇーが言える立場じゃねーだろうよ」

 腕を組ながら霪馬さんがあきれ気味に言った。

「ふんっ、霪馬だって汚いくせによ。なーにを他人事のように言ってんだか?」

 そう鹿威さんが言い終わると二人(柱)は、睨み合う形になった。

「お二人さん。喧嘩は後にして、早く行きません?」

「おや?以外とやる気あんだな?小春は」

「ほんとだね~霪馬の奴何か面倒とか言ってんのに……何この差」

「誰もそんな事言ってねーよアホ毛野郎」

「確かに俺、アホ毛出ているけどお前に言われたくないし!ロン毛野郎」

 二人(柱)はまた睨み合った。今日はえらく仲が悪いお二人さんだ。


 ちょっと外に出掛けると母に言ったわたしは、母からは、昼餉を食べてから行きなさいと言われた。少し意外だったのはすんなりと許可が下りたことだ。

 もしかしたら、お母さんは鹿威さんや霪馬さんがついているから心配無いと思っているのだろうか?わたし的には、あのお二人(柱)さんの方が何か面倒事を起こしそうで心配なのだが……。


「おーい、小春。準備出来たらさっさと行こうぜ」

 家の外で鹿威さんが言った。

「今から行きます」

 わたしは草履を履いて、彼等のところに行った。

「さぁっ、レッツゴー!」

「おい、止めろよ。肌寒いのにお前がいると暑苦しく感じるぞ」

「おっ、なんだなんだ?今日はやけにやる気無さそうだな霪馬」

 霪馬さんの顔を覗きながら鹿威さんが言った。

「確かに……ほんと、今日は元気がありませんね?霪馬さん一体今日はどうしたんですか?」

「はぁー、どうもこうもネーよ。何かさぁ、今日は悪い予感が沢山だな……」

「悪い予感って?」

「小春大丈夫だ。コイツの予感は全然当たらんから心配事は無用」

「えぇ!でも、こうも霪馬さんが元気無いと、ちょっと心配」

「ありがとう小春。俺のこと心配して」

「今日は良くないこと起きそうで」

「そっ、そっちかよ」

「え?何か言いました?」

 横で鹿威さんが俯いて笑いを堪えていた。

 はて、わたし何か変な事言ったかな?




「それより、ついたぜ。っておい、小春!?」

 鹿威さんが驚いた声を出したが、わたしは走って友達がいる茶屋に入った。

「おきんちゃん!」

 勢い良く店の中に入って大声を出しだので、店にいた客が一斉にわたしを見た。

「すっ、済みません」

 わたしはかなり恥ずかしくなり、ちょっと頬を赤くして俯いた。すると店の奥から人が出てきた。 

「ありゃ、小春さん。お久しぶりですね」

 わたしに話し掛けたのはおきんの夫である、平之助だ。

「あ、平之助さん、おきんちゃん居ますか?」

「今から呼んでくるからどうぞ座ってお茶でも。ついでに団子もつけますんで」

「いえ、いいんで───」

「大丈夫、お代はいらないから」

 彼の性格、穏和なくせに意外と無自覚の頑固者なのだ。

「小春ー?」

 店の中に入って来た鹿威さんがわたしの名前をよんだ。

「おや?そちらのお方はどちらさんで?」

「ああ、新しい仕事仲間です」 

「だったらそちらさん方もどうぞ座ってゆっくりしていって下さい」

 彼はそう言い終わると、おちかと言う働き人の娘にお茶を出すよう頼んだ。


 わたし達は近い所に座っておきんをまった。すると急に鹿威さんが言った。

「いや、違うだろう!」

 突然そんなこと言ったのでわたしと霪馬さんはビックリして彼を見た。

「オレ達は、そのおきんという女人に会うためにここに来たんじゃなくて、依頼を引き受ける為にここに来たのだァッ!」

「まあ、そうだな……っとありがとうございます」

 ちょうどお茶が来た。しかし、霪馬さんと鹿威さんは何故かお団子をわたしの所にやった。お陰様でわたしの目の前には三つの皿にのったお団子が六つある。

 ………これは何かの暗示なのだろうか?


「あの……これは」

「ああ、俺達、実は団子嫌いなんだ」

「嫌い?どうしてです?こんなに美味しいのに」

 わたしは手を合わせて「いただきます」と言って、美味しそうに一気に三粒を口に頬張って見せた。

「何っつうデリカシーの無い食い方。もう少し上品なレディーな食べ方しなさい」

 鹿威さんが汚いモノでも見ているかのような目つきでわたしを見ていた。 


 わたしは口をモグモグしながら黙っていると、霪馬さんがお茶を一口飲んで訳してくれた。

「何っつう恥も無い食い方。もう少し上品な女の子らしい食べ方しなさいだ。多分」

「ふぅーん」

 わたしは最後の一粒を串を横にし団子を横に滑らせて食べた。

「で、何で団子嫌い何ですか?」

「俺、馬だから、歯にくっ付くモノ全般嫌なんだよ」

「あぁ、オレも」

「へぇー、神様も食べ物の好き嫌いあるんだ。じゃぁ、これ頂きますね?」

「どうぞお勝手に」

 霪馬さんはお茶をまた一口飲んで言った。しかし、鹿威さんは急に辺りをキョロキョロしていた。


「どうしたんですか?鹿威さん」

「いや、何か静かじゃないか?」

「静か?」

 霪馬さんが首を傾げて辺りを見渡した。

「確かに、今は客が少ないが、それがどうした?」

「何か───」

 鹿威さんが何かを言いかけた時、店の奥から息を切らしながら平之助さんが来た。

「た、大変だ!おきんが…おきんが居なくなったァ!」

 他の人々の話声が消え、静まり返った。わたし達はその言葉を聞いて驚いた。

「おい、まてよ。ただの勘違いじゃないか?」

「そうだよそうだよ。どっかそこら辺に散歩でも行ってんじゃあねぇのか?お前のかみさんはよぉ」

「違う!あいつは……おきんは今、身ごもっているんだ。さっきまで体調不良だからと行って、布団に寝ていたのに……居なくなっていたんだ!」

「ほら、やっぱり散歩でも───」

「俺が少し目を離した隙に散歩でも出掛けると?あいつはそんな奴じゃないぞ。それに布団はまるでさっきまで居たかのように暖かったんだぞ」

 すっかり取り乱している店の亭主、平之助。わたしは心配だった。


 本当に散歩に出掛けているだけだろうか?

 一瞬、昔の記憶が蘇った。それはおきんの綺麗な笑顔だった。そして、急に恐くなった。また、自分の大切な人が消えてゆくことに。わたしの体は次第に震えだした。

「ど、どうしよう。鹿威さん!霪馬さん!どうしよう、どうしよう!おきんがおきんが……」

「落ち着け小春」

 霪馬さんがわたしの肩を掴んだ。彼の目は何も心配いらないと言ってるかのような眼差しをしていた。彼は後ろにいる鹿威さんを見た。


「どうだ?鹿威。何か分かるか?」

「ああ、少し……鬼のニオイがするな……。オレ犬じゃねぇけど」

 鹿威さんは鼻をヒクヒクしながら言った。

「鬼か」

 霪馬さんは外を見て呟いた。

「まさか、俺達がいながら鬼が人攫いするとはな。てか、油断していたよ」

 鹿威さんは湯のみを手に取ると残りのお茶を飲み干した。

「何で……何でそんなに呑気にしていられるんですかァ!」

 腹が立ったわたしは二人を怒鳴りつけた。


「はいはい、分かりましたよ」

 二人は面倒臭そうに返事をしてわたしの腕を掴むと、一瞬に外に出た。しかっかり金は払った。

「鹿威、気配はどうだ?」

「何で俺に聞くんだよ……っと待て」

 急に二人が止まったのでわたしは前に倒れそうになった。

「何か……いるな」

「何か?」

「自分で感じろよ霪馬」

 彼等はただ目を細め、固まった。

「ああ、本当だ。これは……人か?」

 人?って

 鹿威さんが何か言いかけたとき、彼は一瞬チラリとどこかを見て、わたしの腕を引いた。


「ひぁっ」

 そして、わたしが今までいた場所に物騒な大きな針みたいなものが沢山地面に刺さっていた。

「あ~あ、避けられた」

「お前」

「あたしはアンタ等の依頼者、っと言ってもあの人攫いを駆除してほしいと思って依頼したんだけどね?」

「人攫い?誰だか分かるの?」

 わたしは言ってみた。

「まあね、だってあたし、アイツ等の下に働いている手下だし。でも、あたしはアイツ等を駆除してほしいと思っているんだよ」

「何故?」

「だってアイツ等、女人ばっか攫うんだもん。それも身ごもっている人ばっか」

 さっきから林の中から声がするが、この声は女性だろう。


「それに、もうアイツ等の下で働くのウンザリしてさ、だから頼んだんだ。人ならぬ者を消すには人ならぬ者に頼んでね?」

「お前、俺達の正体知っているのか?」

 鹿威さんが声を低くして問いた。

「さぁね、アンタらの正体なんか興味ない。ただアイツ等を消す。それさえして来ればあたしは満足さ。大丈夫。報酬はしっかりやるよ」

 何か構えていた霪馬さんが姿勢を正して言った。

「何故俺達に姿を見せない?」

「別に……今からそっちに行くから殺気を消してくれない?」

 殺気何てどうやって分かるんだろ?とわたしは思いつつも、人攫いやおきんちゃんの情報が聞けるとなると早くして欲しかった。


 そして、林の中の声の主が姿を現した。その姿は───

「「うわぉ!爆にゅ」」

 鹿威さんと霪馬さんが言い終わる前に彼等の顔面にいつの間にか蹴りが入っていた。それもかなり強烈だったらしく、二人は鼻血をたらした。

「あーあ、やっぱり男好きじゃないな」

 頭をボリボリとかきながら、その女性は呟いた。その女性は綺麗な赤い髪をして、その髪を一つに括り、お胸がでかくて、いかにも忍者?ぽい服装だった。


「全くこれだから男は嫌い」

 そう言うと、彼女はわたしが居ることに気がついた。しばらく見つめ、次第に何か目が輝しくなった。そして────

「きぁー!何この可愛い子。黒い瞳に黒髪に白いスベスベの肌。凄くそそるんだけどォオ!!いいゎいいゎ!スッゴいあたしの好みだわー!萌えるわ!」

 っと言いながらわたしに急に抱きついてきた。わたしは大きな胸に顔を押し付けられ、息苦しかった。


「うあぁん、可愛い!可愛いくてあたし死んじゃいそう!」

「死ねば?」

 横から霪馬さんが鼻を押さえながら鼻声で言った。それを彼女はキッと睨んだ。

「アンタが死ね」

「………」

 何だろう?この差。

「嗚呼、やっぱたまんない。女の肌はスベスベであたし興奮する。このまま、あたしの嫁にしたいわ」

「止めとけ止めとけ。爆乳女ガァッハ!」

 鹿威さんのおでこにさっきの大きな針が刺さった。


「あたし、男は嫌いなのよね~。暑苦しいし、男臭いし、触られるだけで鳥肌がたつ……ああ、おぞましい」

「あっ、あの一」

 わたしはいい加減に離して下さいと言った。

「あっ、ゴメンね」

 やっとわたしを離した女性は自分の名前を言った。

「あたし、赤霧菖蒲(あかぎりあやめ)。宜しくね!」

「小春です」

 二人(柱)で鼻を押さえながら彼等も名を名乗った。

「霪馬だ」

「鹿威だ」

「あらっ、もしかして二人合わせて馬鹿?」

 菖蒲さんが驚いたかのような表情を浮かべながら言った。すると霪馬さんが怒った。

「馬鹿じゃない。アホ爆乳女がぁ!」

「何が爆乳よっ!」

 二人して口喧嘩を始めた。どうやら、彼女の禁句は「爆乳」らしい。それに対しての霪馬さんの禁句は「馬鹿」だ。


 よくよく考えると、彼等は似た者同士なのだと思ってしまう。

「ところで赤霧。早く案内してくれないか?」

 鹿威さんが面倒臭そうに言った。

「ああ、アイツ等の所ね。分かった、あたしについて来て」

 そう彼女は言うと林に消えた。本当に人なのか?とわたしは疑問に思う。


 彼等は菖蒲さんの後をついて行った。鹿威さんや霪馬さんは凄く余裕に走っているがわたしは彼女について行くのに精一杯だった。人なのに足が聞こえなく、まるで地面を滑っているかのような走り方だった……


 もしかして、これが忍者の走り方なのだろうか?っとわたしがそんなことを考えていると足を躓いてしまった。

「ホキャアッ!」

 この声を聞いて前にいた2柱と一人は一斉に振り返った。鹿威さんが呆れかえった顔をした。

「お前……」

「だいじょーぶ?!怪我してない?血い出てない?擦り傷してない?!」

 大きな胸を揺らしながら菖蒲が駆け寄ってきた。何故か両隣に居た鹿威さんと霪馬さんをぶっ飛ばしてだ。特に霪馬の方が強かったのか?かなり飛んでいった。


「いえ、ただ足を……」

「足!足のどこ?」

 そう彼女は言うとわたしの足を掴んで自分の膝の上に置いた。

「キァァァ!足も小さくて可愛いわ!良いわ良いわ。この感じィィィイ!!」

 一体何に興奮しているのかわかりたくないが、彼女は鼻息を荒くしていた。

「おい、変態発言はいいからとっとと行くぞ」

「馬鹿は黙ってな」

「ぅんだとコラァ!」



     *  *  *  *   

  


 取りあえずは、彼女が言う鬼、おきんを攫った鬼達が居ると言う場所についた。

 外見は普通の武家屋敷だったが雰囲気が違った。

「なるほど、ここがヤツらのアジトか……」

 わたしの横から顔を覗かせ呟いたのが鹿威さん。ってアジトって何?

「ってか、鹿威さん余り顔近づけないで下さいよ」

「仕方ないだろ!狭いんだし」

 そう、わたし達は林の中に隠れ、そこから顔をコッソリ覗かしているのだ。


「ちょっと!ボサ髪、余り大きな声出さないで!」

「「お前が一番声でけーよ!」」

 彼らは二人(柱)揃ってそう言った。

「あなた達三人が一番声デカいです」

「なっ」

「シッ」

 わたしは三人に人差し指で静かにとした。そして小声で──── 

「見張りの鬼に気付かれちゃいますよ!」

「ご、ごめん」

「小春ちん、早くそのおきんちゃんという女人を助けない?あたし、女なら助ける気満々よ!」

「男だったら?」

「死ね」

「うぉ、恐っ」

 どんだけ男嫌い何だよと鹿威さんが呟いた。


 彼等は菖蒲さんの案内で、裏口から敷地内に入って行った。

「裏口には見張り番がいね一んだな?」

 鹿威さんが不思議そうに辺りを見渡した。

「当たり前よ。そもそも、鬼の敷地内に入るヤツなんてあんた達ぐらいよ」

「いや、お前が案内してるだろ」

「大丈夫。だってあたし、人何だもん。鬼ぐらい裏切ったって問題無いよ」

「後から鬼に命狙われても知んねーよ?」

「それも問題無いわ。この件が片付いたらあたし、小春ちんの家に住もうと思っているから。それに、そう言うときはアンタ等に助けてもらうわ」

 勝手にわたしの家に住み着こうとしているよ、この人……


「けっ、誰が助けるかよ。しかも、図々しい。おい、鹿威に小春。気おつけろよ。この女、疫病神だぞ」

「誰が疫病神よ!この馬鹿」

「ぅんだと!この爆乳尼!」

「おいおい、こんな所で喧嘩は止めろよな。見つかっちまうだろうが」

 わたしもそれに対してはごもっともと思ってしまう。しかし、わたし達がそんな事を思っているつかの間───


「おい、お前達そこで何やっている?」

 鬼の男二人がわたし達に近づいてきた。

「それに、菖蒲。誰だそいつ等?」

「ああ、この人達は迷……」

「ソイヤァァァァア!」

「ガハァッ」

 菖蒲さんが何とか言い訳を言う前に鹿威さんが一人の鬼の顔面を蹴って倒した。

「なっ、貴様何をすガァッ」

 もう一人の鬼も霪馬さんによって倒された。

「まったく、俺の存在忘れんなよ」

 そして何処からか笛の音が聞こえた。笛の音が無くなると鐘を鳴らしながら「侵入者だ侵入者だ」と誰かが叫んでいた。


「チッ、もう一人隠れていやがったか………おい、霪馬と小春に赤霧、ここからは二手に別れるぞ」

「二手?」

「ああ、四人だと動きにくいからな。オレと赤霧が左から、霪馬と小春は右から行ってくれ」

「わかった」

 あえて、喧嘩っ早い霪馬さんと菖蒲さんを分けたのは、まあ、わたしでも何となく分かった。


「じゃぁ、オレたちは行くからな」

「ああ」

 そうしてわたし達は二手に別れた。



「あれ?どうしてあたしと小春ちんが一緒じゃ無いの?」

 彼女は今更ながらに不思議に思っていた。

「お前ら女だし、向こうは人ならぬ者だからな。力じゃぁかなわんだろ?」

「まあね。でも、鬼共が小春ちんを襲う前にあたしが襲っちゃうけど」

(コイツをわけておいて良かった)

 彼は密かにそんな風に思ってしまった。




 そしてわたし達はと言うと、鬼に見つからないようにコッソリ家の中に入った。

「ここは……誰もいねーな」

 廊下を見て霪馬さんが呟いた。

「本当ですね……っという事はここら辺には何もないって事かな?」

「そう言うことだろ」

 わたし達は廊下を歩いた。敷地内はあちこちから声が響いて、一体どこから来るのか少し冷や冷やした。しかし、流石は鬼と言ったところ。堂々と当たり前のように真上(天井)から顔を覗かせて来た。


「ここに居たか侵入者共!」

 っと言って上(天井)から下りようとした鬼だが、一体何を間違えたのか?その鬼の頭がなかなかな抜けなかった。

 鬼は何度も頭を抜こうと試みるがが、頭の角のせいでなかなか抜けない。

「あれ?あれ?あれあれ?っちょっ、ちょっとまって!」

 鬼は慌てて頭を抜こうとしているが一向に抜ける気配が見えない。


 わたし達はと言うと見なかった事にしようとした。しかし、鬼が彼等を止めた。

「貴様等逃げる気だな!ふっ、この俺様から逃げ切れると思うなよ侵入者!」

 そんな状況で言われても全然説得力無いんだけどな…………

 何も言わずただ無言で過ぎ去ろうとしたわたし達をまた鬼が引き止めた。


「まてまて、貴様等。この俺の状況を見て分からないのか?」

「…………」

「この俺の今の状況を助けてやったら俺の部下にしてやらんでもないぞ?」

 無言で立ち去ろうとするわたし達にまた鬼が慌てて止めた。

「よし、俺の右腕でどうだ!」

 また、きびすを返して立ち去ろうとしているわたし達。

「まてまてまて!」

 慌ててわたし達をとめようとするがわたし達はそのまま無言で立ち去ろうとした。


「まてまてまて!ってちょっと待ってよ!ねっ?オネガーイィィィ!!」

 それでも全然振り返らないわたし達に鬼はキレた。

「おいっ、待ってって言ってんだろ!このドチビに馬鹿!!」

 するとわたしの横にいた霪馬さんが鬼より勝る顔で鬼を睨んだ。

「あ?」

「あ、スンマセン……って違う違う!だから俺様を助けて欲しいの!」

「助けてほしいだぁ?何上から目線で言ってんだ?」  

「上から目線って言われてもな………って違う違う!早く助けてェ、頭に血が上ってクラクラするよっマジ本当」

「しかしなぁ、お前敵だろ?敵のお前を俺達が助けると思うかぁ?」

「いやいやいや、俺様は敵のアンタらにお願いしてんの!」

「ごだごだウルサい鬼だな?お前本当に鬼か?」

「鬼だよ!だから角がひかかって取れないの!」

 一生懸命顔を抜こうとしている鬼だが、なかなか抜けない。フッとわたしは1つ疑問が浮かび上がった。


「鬼さん。鬼さんは一体どうやってその中に入ったの?」

「ああ、それがな『侵入者だ!』っと警報があったとき、侵入者なら屋根裏に居るだろうと思って、屋根裏を探し回ったんだ。そしたら、ちょうど顔が入るぐらいの大きさの穴が空いていてな。もしかしたら侵入者共、ここから降りたんじゃ?っと思って顔を突っこんで覗いた訳さ」

「…………」

「そして、侵入者が居なかったから頭を抜こうとしたら、頭の角が引っかかって慌てた俺様は何度も抜こうと試みたが全然駄目でな、もう諦めかけた頃、ちょうど貴様等が来たので『侵入者共』っと叫んだのさ」

 それはただの………ただの自業自得じゃないかァァァア!

 わたしは思ってしまった。


「だからさ、早く助けて欲しいの!」

 わたし達は呆れた。こんなバカ(アホ)本当にいたんだっと思った。

「あっ、そうだ」

 霪馬さんが何かを思いついたように手をポンと叩いた。

「どうしたの?」

「いや、こいつからお前の友達、おきんの居場所聞けばよろしいんじゃないか?そしたらわざわざあちこち探し回らなくて済む」

「あっ、そうですね!」

 怖い顔で鬼に近づくわたし達を見て、鬼は顔を真っ青にした。


「ちょっ、ちょっと待って!一体俺様に何をするつもりだ!」

 耳を貸さないでどんどん鬼に近づいていくわたし達に鬼は悲鳴にまじりた声をあげた。

「ちょっ、イヤー怖い怖い!本当マジで!ってギャァァァァァァア!!」

 鬼の悲鳴が屋敷じゅうに響いた。


 それを聞いた他の鬼は「何だ?」と思いつつも、侵入者を探し始めた。しかし、鹿威さん達はと言うと────

「何だ?今の悲鳴」

「さあね、誰か何者かに襲われたのかしら?」

「あの声、霪馬や小春の声じゃねーな」

「だったら誰なのかな?」

 彼女は不思議そうにしているが、彼は大体見当がついた。

(彼奴等、何に変なことしてんだ?)

 っと思いつつも、彼等は鬼に見つからないように慎重に進んで行った。



色々と修正……

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