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第四話 夢の言付け3

文字が凄く多いけど…中身はまだまだスカスカかな?

 

 おや?何かゴツゴツとしたところにわたしはいるのだろうか?

 岩?違う。岩より柔らかい物だ………土。そうだ、なんだか土の匂いがする。

 そういえばわたし、死んでいないんだよね?カルさんがそう言っていたから……


 わたしはそんなことを思いながらそっと目を開けてみた。黄金色になった大空が広がっている。


 あれ?おかしいな?わたしが気を失う前はまだまだお日様が昇ってまだ経っていないはずなのに、何故夕方なのかな……夕方?夕方って一体わたしはどの位気を失っていたの?


 わたしは起き上がった。しかし、起き上がった拍子にわたしに掛けられていた羽織りがパサリと落ちた。わたしはそれを見て辺りを見渡した。


 これは匠次郎さんのだ。あれ?匠次郎さんはどこにいるのかな?確か一緒に落ちたはずだし……わたしが助かっているのだから匠次郎さんも助かっているよね?

 でもどうして居ないのかな、っていやいや待てよ!わたしってどうして助かっているの?あの高さの崖から落ちたのに普通は死んでいるよね?


 わたしは口を開けて崖を見上げていた。下からだとちょっと低く見える崖だが上からだとかなり高い。わたしがずっと崖を見上げていると後ろから「小春さん」と声をかけられた。

  わたしは小さな悲鳴をあげた。そして、後ろを振り向いたわたしはそれが誰であるか分かった。

「匠次郎さん!無事だったんですね」

「ええ、まあ」

 彼はわたしに脅かしてすみませんと頭を下げて謝った 。


  うわー、驚いた。一瞬あの血が頭から垂れた女の人かと思った。

「それより匠次郎さん。わたし達ってどうしてあの崖から落ちたのに助かっているんですか?匠次郎さん何か覚えていませんか?」

「え?まあ……覚えていませんね」

 

 あれ?どうして目をそらすのかな……変なの。もしかして覚えているけど、あえて言わないとかそんなんでは無いですよね。

 でも、先程から必死に両手を裾で隠しているのが変なんだよな。

「匠次郎さん、わたしに何か隠していませんか?」

「いや、全然何も」

  やはり気になると思ったわたしは素早く彼の片手をとって裾をめくって見た。


「な、何を」

  焦った彼は手を裾でまた隠した。しかし、わたしは一瞬言葉を失ってしまった。 「しょ、匠次郎さん。その手の平の大量の血は一体」

 彼の手の平は手拭いで雑に巻かれていた。そこから大量の血が染み出て、その手拭いは真っ赤に染まり、一滴一滴と血が地面に落ちていた。彼の裾も血に染まっていた。


「気付いたらこうなっていたのです」

  彼は言い訳をするように言った。しかし、わたしはこれは嘘だっと思った。何故なら手の平の傷は深く“気付いたら”という問題ではなかったからだ。


  わたしに言えないことなのだろうか?昔は……昔はいろいろと打ち明けていたのに。

「すみません」

  何故謝るとわたしは思った。

 別に匠次郎さんは悪いことをしていないはず。でもどうして謝るの?その怪我は……本当はどうやって出来たの?本当のことを言って欲しい。


「それより小春さん、帰りましょう」

「え?」

「勝手に巻き込んでいて難なんですが日が暮れてしま───」

「ちょっと待って下さい!あの女性は、あの女性はどうなったんですか?」

 わたしが言うあの女性とは、頭から血を流した藍色の着物を着た女性のことである。わたししか見えなかったが彼はその女性を何度も夢で見たことがあったので、直ぐに分かったらしい。


「彼女は……今は静かに眠っています。ただし、成仏はまだ出来ていませんが」

「眠っている?それって一体どういう意味ですか」

「活動をしていないと言うことです」

 彼はスウーと崖の下を指で差しながら言った。

「あの崖の下に骨がありました。多分、彼女のものでしょう」

「骨?」

「はい、人骨です。かなり色褪せていましたが藍色の着物もありました」

 あれ?どうして落ち着いていられるのかな?変なの。普通は怖がったり一足早くここから立ち去ろうとするはずなのに、随時と冷静に話してわたしに説明していられるものだ。


「小春さん?」

「はぃ?」

 ボケーッと考え事をしていたら匠次郎に名前を呼ばれた。

 わたしはちょっと間抜けな声を出してしまったが……まあ、出してしまったのはしょうがないから良いとしよう。

「大丈夫ですか?顔色が良くないように見えますが 」

「大丈夫です 」

「気分が悪いとか──」

「大丈夫です!わたしより匠次郎さんの方が大丈夫……には見えないような気がしてきますね」

 彼の手は更に血が滲み出ていた。


「匠次郎さんが言いたい時に聞きます」

「え?」

「この怪我の訳をです。それまでわたしは無理に問いつめたりしません」

  実際にわたし自身もいろいろと彼に隠していることが沢山あるよな。などと思いつつもわたしは言わなかった。


「匠次郎さん、それよりその手拭いを換えましょう 」

 わたしはこの手拭いの代わりになるものはないかと辺りを見渡した。しかし、手拭いに代わる物などこの崖の下には無いのだ。


  どうしよう。代わりになるものが全然無い。わたしは手拭いなんて毎日持ち合わせていなから。匠次郎さんの手拭いは今の血だらけのだし……はて、どうしましょう。


「私はこのままでもいいですが」

「駄目ですよ。そのままにしておくと手が腐り落ちますよ」

 彼は苦笑した。多分大げさだと思っているんだろう。

 まあ、確かにわたしもさっきの言葉は大げさだと思いましたが。

「匠次郎さん、何か持っていませんか?布とか」

「そのような物は持っていませんね」

 うーん、それは困ったな。匠次郎さんは布みたいな物持っていないと言ったし。

 何か身につけているもので……あっ、肌着いや、肌着よりさらしの方が……いやいや、さらしは流石に駄目だな。恥ずかしい。だったら肌着を千切って傷に巻けばよろしんじゃ……うん、仕方ない。そうしよう。


「あの、匠次郎さん。少しだけ後ろ向いてて貰えますか?」

 彼は首を傾げつつ何も言わずに後ろを向いた。わたしは急いで引き裂いた。


ビリッ


 もう充分に引き裂いただろうと思ったわたしは彼に声をかけた。

「あの、もう良いですよ」

 わたしがそう言うと彼はこっちに向き直った。そして彼は不思議そうにわたしが握っている物を見た 。

「それは一体どこから?」

「これはわたしの着物の一部から引き裂いたものです」

 しかし、彼はまだ理解出来ていない様子だった。 彼はわたしが着ている着物を見てまた、首を傾げた。


「着物の内側ですから。外から見ると破けていないように見えるんです」

「そうですか。ありがとう御座います。今度来るときは、その着物の代え、持ってきますね」

 うん、余り詳しく追究しないのは良いが、着物の代えを持ってくるのはかえって迷惑。

「いえ、良いんです。どうせこれら古着だから」

 それに着物ではなく正確には肌着だ。ただ、こんな事は言えない。わたしが恥ずかしいから。


「わたしのことは気にせずに、両手を出して下さい 」

 彼は両手を出した。わたしはまず片方の手から取りかかった。真っ赤に血で染まった手拭いを外し、血を拭った。しかし、その傷の深さにわたしは目を見張った。


 浅い傷だろうと思っていたが違った。とても深い傷だった。グッサリっと、そんな感じだ。血もまだ止まってもいない。

  元々、血が苦手なわたしは今まで我慢していたが、これだけは意識が飛びそうになったのだ。

「かなり深い傷ですね」

  わたしは傷に布を巻ながら言った。しかし、顔が引きつっていたと思う。

「大丈夫ですか?何か顔色が悪いですよ。もし、血を見て具合が悪いなら自分でしますが」

「大丈夫です。平気です。そして、もう片方の手を出して下さい。次はそっちらです」

 もう片方の手もさっきと同じくグッサリだった。


 わたしの顔色はますます悪くなったが、わたしは我慢して布を巻いた。そして、終わった頃には魂が抜けた状態になっていた。

「無理をしてまで巻いてくれてありがとうございます」

「いえ、これくらい晩飯前ですよって」

「朝飯前ですね」

 サラリとわたしの間違いを正した。

「それより一つよろしいですか?」

「ええ、はい」

「あの、その……やっぱり良いです」

  あの傷の深さが気になってしょうがないが聞かないことにしよう。彼も言いにくそうだし……うん、でも気になるんだよな。

 あの傷の跡、まるで刃物のようなモノで切った感じだった。わたしはそんな物騒なモノ何て持っていないし、彼も持っていないだろう?


「小春さん。そろそろ帰りましょう。日が暮れてしまいます」

 彼にそう言われて初めてわたしは辺りが薄暗くなっているのに気づいた。

 おっとっと、本当に周囲が随分と薄暗くなっていた。でも、今日は色々と疑問がある。

 まずは、あの幽霊はなぜ消えたか?次にわたし達が崖から落ちたのに助かったわけ。そして、匠次郎さんの手の傷……うーん、明日にまわそう。


「小春さん?」

「はい」

 わたし達は立ち上がり、森の中へ入って行った。日が落ち、暗くなってからかなり歩いた時、徐々に村の火の明かりが見えてきた。

 ああ、皆心配している。

 わたしの予想通り、村人たちはわたし達を見つけると、喜びと心配がまじった何ともいえない顔になった。 


 村人たちは喜んだり、ちょっと怒り気味にわたし達を叱った。しかし、匠次郎さんの手の傷を見て村人たちは真っ青になった。

「これは大変だ!すぐに薬を塗らないといけねぇ!」  

 するとわたしの父が急いで家の中に入り小さな箱を持ちながら出てきた。

「これを」

「ありがとうございます」

  わたしの母、お春は彼のことを心配しつつ、わたしを抱き締めながら叱った。

「小春ったら何してたの!こんなに遅いからてっきりまたあの陰獣と言う奴に襲われたねではないか、と母さん、心配したんだからね」

「ごめんなさい」


 陰獣?そういえば夜だったのに陰獣とは一度も出会わなかったな?まあ、出会わないのが一番良いんだが。

「しかし、小春。お前何でこんなに遅かったんだ?……まさか」

 宗谷のとんでもない勘違いに、わたしは睨み付けながら言った。

「勝手に勘違いしないでよ?」

「え?何。違うの?」

  この人、体格は大人になってきたけが、中身は全然成長してない。


「違うに決まってるでしょうがぁ!」

  すると、横にいた母、お春が頬に手を当てながら言った。

「あら、母さんてっきりそうだとか思っちゃったわ 。残念」

「お母さんまで何変な勘違いしているの!あと、残念って」

「小春、それなら何故こんなに遅かったんだ?」

 父が匠次郎さんの手当をしながらわたしに聞いてきた。

「ちょっと、冒険心で山の中に入ったら足を滑らして崖から落ちました」

「まあ!小春。あんなに、危ないところには近づくなって言っていたのに小春ったら、ただの好奇心で危ない所に行き、匠次郎さんまで巻き込んだの?」

 うう、違うけど、お母さん怒り過ぎだよ。でも、仕方がないことだ。匠次郎さんは大事な御得意先の大店の息子さんだ。あと、一様他人だ。……お母さん昔から他人には迷惑かけるなってよく言っていたからな。うん。


「違いますよ」

「え?」

  これには、わたしだけでは無く、皆が驚いた。

  さっきまで黙って治療を受けていた匠次郎さんが言ったのだ。

「本当は、私が勝手に小春さんを巻き込んだのです。私が勝手に危ないところに入り、小春さんは私を引き止めようと、私のあとを着いてきただけです。ですから、彼女は何も悪いことなどしていません。悪いのは私なのですから」

「あ、いやいや、わたしですよって」

  慌ててわたしは言ったが、村人は皆黙っていた。


「ほら、わたし昔から悪戯好きの悪ガキだったではなですか。今日はちょっと昔みたいな悪戯をしたかっただけですよ?」

「悪戯にも加減があるだろうに」

 っと父が言って、村人の誰かが『昔はお前より宗谷の方が悪ガキだったからな』っと言った。

 あ、それは確かに。


「まあ、お前より彼の方が嘘つかないしな」  っと宗谷が「あ~あ」みたいな感じで言った。


 いやいや、お前こそわたしより大嘘つきだろうがっと思わず言いたくなった。

「とりあえず、今日は早く寝た方がよろしいじゃろに?夜は危ない」

  こんな呑気なことを言ったのは長(長老)だった 。

「明日、話し合えばいいことじゃないかね?」

「それもそうよね?もう辺りは暗いし、早く家に入った方が良いわね」

  誰かがそう言った。すると村人たちは『明日か。また、一段と忙しくなるだろうな』など言いつつ、ぞろぞろと帰って行った。


「小春、罰は明日あたえるから今日の所はゆっくりお休みなさい」

「え?は、はい」

  あれ?もしかしてわたしが悪いことになっちゃっている?

 父が匠次郎さんの脇に立ち、わたしに向いていった。

「小春。お前、今日は匠次郎さんを家に泊まらせるから……呉々も変な真似をしないように」

「何もしませんってぇ!」

  わたしってどれだけ信用されていないの?それより、そんな趣味全然無いですから。

 

「それより、お父さん。霪馬さんと鹿威さん知らない?」

 父はわたしの後ろを指で差しながら言った。

「ああ、お前の後ろで何かコソコソしているぞ」

 あ、居た。本当に影で何かコソコソしている。


 わたしはそーうっと彼らの後ろに立った。

「霪馬さんに鹿威さん。何コソコソしているんですか?」

「「ホッギャァァ!」」

 二人同時に叫んだ。自称神さまだと何だかか言っていたが、こんな情けない悲鳴を出すのだろうか?

「あ、いや、小春か。何だビックリするじゃないか」

 っと鹿威さんが顔を引きつらせながも言った。

 いや、びっくりするも何も、明らかにわたしから逃げようとしていて、わたしに見つかって驚いたのでは?


「あ…はははっ。な、何だ小春。何か俺達に用かな?」

「いや、あの、霪馬さんから貰った笛。あれ役立たずでしたよ。吹いても音出なかったし、霪馬さんたち助けに来ませんでしたよ?」

「え?何?マジで笛吹いたの?あれー、俺達には全然微かな音すら聞こえなかったな。なー、鹿威くん」

「うん、全然聞こえなかったよなー霪馬くん」

「でも、霪馬さん達『これ吹いたら俺達が助けに行くからな』とか何とか言っていたではないですか?」

「あれ?俺そんなこと言っていたか?」

「え?何お前。自分が言っていた事、覚えていないの?ブッ、お前って本物のおバヴゥ」

 多分鹿威さんは『本物のおバカさん』と言いたかったのだろう。まあ、言い終わる前に霪馬さんが肘ではらわたを殴ったが。ああ、鹿威さん痛そう。


「はっははは。覚えているに決まってるじゃないか!」

「お、お前……あ、待てよ」

「どうした?腹下したか?」

「ちげーよ。その笛、今日の昼間どっかで見たことがあるぞ」

 鹿威さん達がわたしが持っている笛を指差した。

「昼間?昼間はわたし、居ませんでしたよ」

「ああ、知ってる知ってる。ただ昼間見た奴は確かあの長老の屋根上で見た気がする」

「屋根上?そんな所、誰も上りませんよ」

「ああ。だが、昼間見た奴は確か鬼みたいな顔立ちしていたな。沢山居たぞって、ああーー」

「鬼みたいな顔立ち?何ですか」

 鹿威さんはわたしを無視した。


「霪馬分かったぞ。お前も分かったか?」

「ああ、何時俺の袖から本物と偽をすり替えたか知らないが」

「え?何。何が?」

「よし、霪馬」

「ああ、分かっている鹿威」

 鹿威さん達はまるで鬼のような顔立ちなった。そして───

「「ちょっくらあの家鳴りども絞めてくる」」

 っと二人同時に手をゴキゴキ鳴らしながら言ったのだ。


「え?家鳴り?家鳴りって本当に居るんですか………ってちょっと、鹿威さんに霪馬さん待って下さいよ」

 わたしは彼らの後を追いながら思った。


 そうか、彼らは“普通の人ではない”て言ったな。あれ?待てよ。確かわたしも“普通の人ではない”て彼らに言われた。なのにどうして家鳴りは見えなかったの?


 ああ、でもこうして見えない者が本当に身近に居るなんてわたし、思ってもいなかったな。

 そうだ、人ではない彼らに今日あった本当のことを相談してみようか……何か良いこと教えてくれると嬉しいんだが。

 今日は本当にいろいろなことがあった。明日は必ず今日の罰が下るけど、楽な物だったら嬉しいな。



何か変な所があったら言って下さい!


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