第41話 ビーチバレーを護らねば!(ラン視点)【夏の特別番外 後編】
いじられキャラなマコは、ぼっちだったり、敗北ポーズを取りながらお腹を撫でられたり、お餅なお腹をぺったんこされたり、ぼっちだったりする、何個か年上の仲良しお姉さんなの。
パトカーの窓から顔を覗かせては、キッチンカーの営業準備をする私達と雑談に花を咲かせたり、私が不貞腐れたら、わざわざパトカーから降りてカルパスを手渡すお人好しなの。
親近感の塊なマコはいつだって受身だったなの。
誰かを虐げることも無く、寧ろ自身を責める……弱音は吐いても愚痴は決して吐かない優しい人間なの。
能ある鷹は尻尾隠さず……あれ、なんか間違えてる気がする。
まあ、ともかくとして、そんなマコが私達に初めて受身でない部分を見せた瞬間だったなの。
「わっ! 凄いわねマコちゃん! まさかこんな特技を隠していたなんて、、驚きね」
流石のリンもおっかなびっくりって感じなの。
普段反撃して来ないサンドバッグが、急に牙を見せて来たようなものなの。
リンが私に、さっきのマコちゃんのプレー見た? とアイコンタクトしてくるなの。
私が「リンより威力が凄かったなの」とイタズラに言ってみると、少し頬を膨らませて悔しそうにするなの。
全く、負けず嫌いは困ったさんなの。
ダジャレも言わずに大人しくしていた審判のモカが、私達がアイコンタクトで意思疎通出来たことが羨ましかったのか、けたたましく目をパチクリとして来る。
声だけじゃなくて挙動までもうるさいモカに、
「ふふふっ、流石、今日も師匠の洒落はキレッキレね!」
謎に何かが通じたリンが笑いながらそう言ったなの。
アイコンタクトで洒落を表現出来るものなの?
世の中広いんだななの。
そんなアイコンタクトモカにはアイマスクで黙って貰いたいなの。
サーブ権を得たミキが、何やら落ち着きが無いようで、ふぅふぅと呼吸を荒くしながらコート外の位置に着くなの。
きっとマコの王子様ムーヴに大興奮なんだなの。
届かないボールを取るあの演出は、少女漫画でありガチな、手の届かない本を取ってくれる長身イケメンと合致するなの。
「どうしたのミキさん?」
「あいや、その、サーブの打ち方を教えて欲しいなって……」
心配して声を掛けた気配り上手な警察官。
お易い御用ですよと告げてサーブの打ち方を丁寧に教えるその姿、まるで紳士なの。
後ろ側から優しく包み込むようにしてミキに指導するマコは、無自覚という罪で腹パンの刑に処して置きたいなの。
自分がミスしたトスを綺麗に決めてくれた本人がそんな接近しては、既に魅惑されているミキにとっては鼻血案件なの。
あ、あの赤い筋は……案件が達成してしまったなの。
リンが打ったサーブと違い、下から上にポーンっと打つミキ。
リンとマコという化け物と打って変わって、なんて可愛らしいサーブ……親近感マシマシになるなの。
高く弧を描きながら降りて来るボールを、練習と同じようにしてリンにトスを上げる。
その直後に、バコッと鈍い音を置き去りにするリンの強烈サーブが打ち込まれるなの。
満面の笑みで打つリンは、サイコホラーで出てくるナイフの血を舌で舐めとる怖い人間みたいなの。
サイコホラーボールを平気な顔してレシーブをするマコもマコなの。
「ミキさん、バシッと行っちゃってください!」
一人でレシーブとセッターをこなす超人マコ。
完璧な軌道を描きながらも、初心者なミキに優しいスピードでトスされたボールが、今、ここで打てと言わんばかりに完璧な位置に来る。
「えい!」
しかし悲しきなの。
ミキのへなちょこスパイクは見事な空振りによって無きものになったなの。
砂浜にバウンドする寂しい音が響くなの。
安心、同じような仲間がいるという安心。たとえ違えたコート上の敵ではあっても、バレー初心者同士というだけで心がポカポカする。
恥ずかしそうにして震わせるミキの背中を、ポンと手を当ててやりたいなの。
「大丈夫ですよミキさん。まだ慣れてない頃なんてこんなものですよ」
私が慰めたかった背中を、よしよしと愛でる紳士マコ。
これ以上好感度を上げてどうするなの。
既に好感度MAXなの。突破して爆発しちゃうなの。
その溢れた好感度を寄越せなの。おまけにカルパスも寄越すなの。
そうして慰めに慰められたミキは、なんだか元気が満タンにチャージされたのか、満面の笑みで私にボールを投げて渡す。
サーブ権が回って来たなの。
「ランちゃん、ファイト!」
両手を閉めてグッと私にエールを送るリン。
ミキに負けないニコニコ顔なの。
「応援なくとも、私がマコを泣かしてやるなの」
「涙を流す程に感激されたいのね! 私もマコちゃんが泣けるよう支援するわ」
いや、そうゆうことじゃないなの。
サーブ権が私に、調子にノリすぎてあっさり味が消え失せたマコを、泣かせ泣かせと囁いているなの。
この好機に私の脳内分身の天使と悪魔が手を取り合いダンシングしてるなの。
さあ、私のつよつよサーブを喰らうがいいなの。
ジャンピング&バチコンなの。
リンやマコがしていたサーブを見よう見まねで打ってみたなの。
それは私が予想した威力よりも遥かに大きく……そして予想よりもズレた方向に吹っ飛んだなの。
「あいたっ!」
あ、あわわ、リンの後頭部に私のボールが命中してしまったなの!
「ご、ごめんなの! 大丈夫なのリン……?」
スイカの種も当たらなかった無敵リンに、どうしてバレーボールが吸い込まれるなの……
薄い涙を浮かべいているリンは、心配してオロオロとする私を元気付ける。
「全然大丈夫よ! 後頭部手で覆って守ってたし。威力は申し分無しよ、この調子でマコちゃんを泣かしてあげましょ!」
「……うん、マコをギャン泣きさせてやるなの」
弱い部分を見せないようにする、お姉さん気質な振りまいは、リンの優しさでもあり、脆い部分なの。
「マコ、リンが泣けなかった分を泣いてあげるなの」
「いや、その理論おかしいですから!!!」
「喰らえなの!」
スパンッ!
打ち放たれたボールが吸い込まれた先。
二度目になるリンの後頭部ダイレクトを決めるなの。
身内ルールで私のサーブ権をパスすることになったのは、勿論私が進んで決めたことなの。
その後は、リンが自慢のお胸でボールを跳ね返したりするお決まり展開をしたり、やっぱりミキは下手くそだったけど、珍しく強キャラに変貌したマコが圧勝。
勝利チームはマコミキになったなの。
負け惜しみにスイカの種をマコに、ペッと飛ばすプレゼントを贈ったなの。
「もう、スイカ攻撃はやめてくださいって」
と、どこか嬉しそうにするマコ。
天性のドMには関心の欠片も無いけれど、その笑みが好きだって言っていたミキの気持ちが分からなくもないなの。
そういえば、そんなミキ達と出会った温泉の日も、一年生を標識チョコで救った……マコと出会ったあの日も、気付けば半年が経ったんだなの。
「……? どうかしたんですかランさん?」
キョトン顔なマコがそう聞いてくる。
「ううん、なんでもないなの」
なんだかムッとしたから、目線を逸らしてプイするなの。
試合終わりの水分補給にスイカをシャリシャリしていた私。
急に後ろ側から、マコが微笑みながら回り込んで来たなの。
「え、えっ、マコの方こそどうかしたなの」
「ランさん、また来年も海に来ましょうね!」
不意を付かれた私は、その眩しいまでの純粋な笑顔に驚かされるなの。
そうか、思えばマコはリンほどじゃないけど純粋な部分があるなの!
「仕方ないなの。マコの純粋も護ってやらなくちゃいけないなのー」
「え、それはどうゆう意味ですか?」
「あ、護ってもらうのは私じゃなくてミキが良かったなの~」
「どうゆう意味ですか~!」
たまにはマコに花を持たせるのも悪くないなの。
でもやっぱり、マコは困り顔が一番似合うなの。




