最終話 箱の中身を護らねば!(ラン視点)【番外編/完】
「ドンドンパフパフ! 箱の中身は何だろな開催よ!」
「開催なのー」
って、いきなりなんか始まったなの。
ドンパフじゃないなの。
「で、何箱に入れようから?」
口にした当の本人であるリンは、箱に入れるものを想定し忘れていたご様子なの。
行事破綻なの。
「知らないなの、行き当たりばったりなイベント告知をするななの。私も開催なのーってノったけど意味不明なの」
「今思い立ったイベントをなんとなく口にしたら、キッチンカーに並ぶお客さんも大盛り上がりしてるし問題無しよ!」
頭に過ぎったアイデアを脊髄トークするななの、呆れちゃうなの。
脊髄リンの言葉に、キッチンカーに並ぶお客さんが一斉にこくこくと頷いて、グッジョブしてるなの。
お客さんもリンのノリに慣れて来たんだなの。私は未だに慣れないなの。
「あ、ちょうどいいところに良き置物が!」
「なになになの」
リンは手に取ったものを即箱に入れて。
「はい、まずは一人目のお客さんからね!」
「目の前で箱に入れたら中身バレバレなの」
「まあまあいいじゃない!」
良くないなの。
これじゃ即答間違い無し、面白みのないクイズになっちゃうなの。
滴る汗の雫エフェクトなお客さんは、箱の側面にある穴に手を入れて、お触りし始めるなの。
雰囲気に飲まれずに頑張ってなの。
「どんな感触かしら?」
「えーと、硬くて、細い棒が何本か付いてるみたいな」
お客さんの反応に、リンは満足気に頷いてるなの。
リンはお客さんの困ったりする顔も可愛いな~と思ってるに違いないなの。困った小悪魔、いや、身長とお胸的に大悪魔だったなの。
リンの暴走は止まることを知らない。
純粋エンジン鳴りっぱなしでお客さんに言葉を投げかけるなの。
「痒いところはありませんか?」
「かゆ……え?」
「髪洗う時に言われて困るやつをここで言うななの、もっと困っちゃうなの。お客さん、無理せず答えを言っちゃえなの」
お客さんをこれ以上、純粋巻き込みさせるのは可哀想なの。
……関係ないけど、洗髪リンはちょっと憧れなの。髪をアワアワされながら、リンの癒されボイスを聞いて夢心地したいなの。
う、私は何を考えてるなの。
駄目だ、髪切ってる時に、リンの大きなお胸が私の頭の上に乗っかるイメージまでしちゃってるなの。
胸が重いから乗っけると楽ね~とか言いそうなの。頭に乗っけたら髪が切れないなのとツッコミがセットなの。
「言っちゃえじゃないわランちゃん! お客さんにはうんと頭を悩ませないとつまらないわ。もっと箱の中を触りまくって貰わないとね」
お客さんにウインクするリン。安心しろリン、リンの言動でお客さんは既にうんと頭を悩ませてるなの。
「リンの言葉に惑わされるなの、さっさと言っちゃえなの」
「まだ言っちゃダメ!」
「言っちゃえなのー」
「言っちゃダメ、ダメなんだから!」
この文言は一体なんなの。
お客さんがこの謎文言でお顔が真っ赤なの。
どうしたなの?
もしかしてお客さんもリンの洗髪シーンをイメージしちゃったなの?
リン洗髪をお客さんにはやらせないなの、リンのアワアワ囁きとお胸は私が独り占めするなの。
「は、箱の中身は、仏像ですね?」
困惑お客さんは、勇気を出して答えを口にするなの。
へへー私の勝ちなの。
「ブブー、正解は千手観音菩薩でしたー!」
手を交差してバッテンの形にするリン。
リンが勝ちに持って行こうとしてるなの。
負けず嫌いな足掻きリンなの。
「仏像も千手観音もカテゴリー的に変わらないなの。スパゲティじゃなくてパスタでしたーって言ってるようなものなの」
「ランちゃん、パスタカテゴリーの中にスパゲティがあるから、そこはパスタじゃなくてスパゲティでしたが正解よ」
話がそれちゃったなの、お客さんごめんねなの。
リンが袋をガサッとして。
「正解したお客さんには有難い景品! 生春巻きの皮よ!」
生春巻きの皮をぶらんとさせてお客さんにプレゼントするなの。
「もっとマシな景品にするなの、有難くないなの」
皮を前にしたお客さんはと言うと。
「ありがとうございます!」
お客さんが笑顔でそう言い、生春巻きの皮を受け取ったなの。
有難かったなの。
「あ、お客さん、頼んでおいた"おかえりなさいませご主人様"を忘れてるなの」
皮で満足してしまったお客さんは、キッチンカーを後にしようとしていたなの。
慌ててキッチンカーに戻って来たなの。
ちなみに"おかえりなさいませご主人様"は、ココアクッキー、チョコチップ、マショマロを加えた白黒シェイク。
リンの誕生日に新発売を開始しレギュラーになった人気メニューなの。
帰って来たお客さんにリンはぺこりとお辞儀して言うなの。
「おかえりなさいませご主人様」
「お客さんがご主人様になっちゃったなの」
お辞儀して閃いたリン。
エプロンの裾を両手で軽く持ち上げ一回転し、メイドっぽい? ポーズするなの。
「今度メイド衣装でキッチンカーしようかしら?」
「たまに来るコスプレ行事、メイド服に決定なの」
行ってらっしゃいませご主人様~と、キッチンカーを後にするお客さんもといご主人様に手を振るリン。
サービス精神旺盛なの。
続いて来たお客さんは、見慣れた顔をしたお約束人間なの。
「リンさんランさん、お疲れ様ですね! お客さんとして来ちゃいました」
そう、あっさりひょっこり警察マコなの。
警察のくせしてオシャレな服着てるなの。
マコは私に誕生日プレゼントとして貰った服が気に入ったらしく、そこからオシャレに目覚め、可愛らしい服を着るようになったなの。
あの頃の中学生みたいな虚無服が懐かしいなの。
「こんにちはマコちゃん~」
「警察服着ろなの」
「無茶言わないでください、休日は流石に普段着ですよ」
「カルパスくれなの」
「その挨拶久々ですね。もちろん持ってますよ、はいどうぞ」
急なカルパスくれにも即対応するマコ。
カルパス専用バックを持ち歩いてるだけあるなの。
「早速マコちゃんにも箱の中身なんだろなクイズして貰おうかしら」
「箱当てしろなの」
「待ってましたよ箱当てゲーム! 張り切っちゃいますよ!」
あれ、なんでマコは箱の中身当てゲームを知って……あ、もしかしてお客さん達が頷いてグッジョブしてた時に混ざって居たなの?
なんて影の薄さ!
これが究極の虚無虚無プリンマコなの。
リンはお友達マコが来てテンションアゲアゲ。
箱をガバッと持ち上げたかと思えば、自分の頭に箱を装着したなの。
……え?
装着?
「さあマコちゃん! 箱の中身を当てる為、箱に手を突っ込んで撫で撫でするのよ!」
箱の中から聞こえるリンの声。
バレバレってもんじゃないなの、モロなの。
きっとリンはただマコに頭を撫でて貰いたいんだなの。
マコのお腹をいつも撫でているんだから、たまにはお前も撫でやがれってことなの。
「え、え~と、なんだろな~」
空気の読めるお客さんマコは、箱に手を入れてリンの頭をさわさわし始めるなの。
「どんな感触? ねえどんな感触??」
箱の中から嬉しそうな声が聞こえて来るなの。
うう、ちょっとずるいって思ってしまったなの。
私もマコに頭撫で撫でして貰いたいなの。
けど、カルパスくれと同じ感じで軽く言うには恥ずかしいなの。
頭撫でろとか、お友達のマコにでもなの。私はそこまで純粋じゃないなの。
「髪がつっやつやですね。羨ましい……私にもこんな髪が欲しい人生でした」
「私の髪もつやつやなの」
別に撫でてとは言ってないなの。
「いいな~私もつやつやしたいです」
自分の髪を手でクルクルと遊ばせるマコ。そうじゃないなの、私の髪のつやつやを気にかけるなの。
「……もしかしてランさんも撫で撫でタイムしたいですか?」
キタなの!
マコ直々の撫で許可なの!
「仕方ないなの。撫でタイムしてやるなの」
「はいランさんもなでなでしてください」
マコは箱(装着リン)をどうぞと手で差し出すなの。
……撫でタイムってリンの頭を撫でるってことなの!?
この時に限ってマコの鈍感属性が効いてくるなの。
まあ、リンの頭を撫でることもあまり無いし、この機会に撫でておくなの。
箱のサイドの空いた穴から手を入れて、さわさわするなの。
「ひゃぅ! そこは耳よマコちゃん」
「マコじゃなくて私なの。箱の中身は黙って撫でられるなの」
リンの頭を撫でさわ撫でさわ。
確かにツルツルでサラサラ、ずっと触っていたいような心地良さがあるなの。
虜になっちゃう髪なの。
リンばかり撫でられて、ちょっとムスッとする気分なの。
箱リンを撫で回し、頬を膨らませていた私。プンプンしていると、頭にふわっとした感触を覚えるなの。
これは……マコの手?
「ランさんにも撫で撫でですよ」
振り返ると、マコが私の頭をよしよしと撫でながら微笑みかけているなの。
「き、急に撫でるななの」
「あれ? 嫌でしたか? 撫でて貰いたそうな顔してた気がしたのですが……わたしの勘違いでしたね」
私の頭から離そうとする手を、私は引き戻すなの。
「違うなの。その、撫でて、欲しいなの」
もう……調子狂うなの。
マコに撫でられると、安心するような、いい気分になるなの。
この光景をミキが見たら発狂しそうなの。
ふふ、想像したらおかしな感じなの。
「私の誕生日の時も、こうしてランさんに撫でてもらいましたよね。そのお返しが出来て良かったです」
そんなこともあったなあなの……やっぱりマコは撫でられてばかりなの、もっと私を撫でないと釣り合わないなの。
「へへ、ランさん、手に頭を擦りつけないでくださいよ。猫ちゃんみたいですよ」
マコにたくさんよしよしされていると、箱が何か言いたげそうに睨んで来るなの。
あ、いつの間にかリンが箱から出ちゃってるなの。正体を現したな! なの。
「私抜きによしよしし合うなんてずるいわ! 私もランちゃんよしよしする!」
「ちょっとリン、二人して撫でると髪がくしゃくしゃになるなの!」
揉みくちゃになる私達に、マコが笑顔になって言うなの。
「ははっ二人して髪がくしゃってますよ」
「「マコ(ちゃん)もくしゃくしゃにしてあげる」なの!」」
三人して撫で回す光景はカオスとしか呼べない異様なものだったなの。
箱の中身当てイベントは何処へやら、いつもの私達に戻っているなの。
……箱イベントも、いつもの私達だったなの。
おふざけして楽しんで。
こんな日常をいつまでも続けていたいなの。
「あ、マコちゃんに出すメニュー作ってなかったわ」
「そうだったなの! 大急ぎで作るなの!」
「そもそもわたしって何か頼んでましたっけ?」
「頼んでないなの! もう、撫でてないで頼んで次のお客さんに変わるなのー!!!」
……おふざけでお客さんを待たせてしまうのだけは、直しておきたいところなの。
ま、お客さんも笑ってるし、許してねなの。
~番外編 完~
ここまで本作をお読みいただきありがとうございました!
彼女らの物語はここで一度幕を閉じますが、また別の物語でお会いできれば幸いです。
本当に、ありがとうございました!




