第40話 ビーチバレーを護らねば!(ラン視点)【夏の特別番外 中編】
サンサンと肌を焼きに来る太陽。
その下でこんがり焼かれる為に日向ぼっこしている人達はどうかしちゃってるなの。
肌をいじめてどうするなの。
「お客さん、日焼けしている人たくさんいたわね~。素敵よね、健康的って感じで! 私も少し焼いてみようかしら」
「そんな事したらリンの上に跨って日焼け止めを塗りたくってやるなの」
と、日焼けトークをする私達は、ビーチバレーしたがりなマコから貰ったスイカにかぶりついているなの。
海辺でのキッチンカー営業は四時頃を過ぎて、待ちに待った休憩タイム中なの。
「ぷっ」
私の口から放たれた黒い粒は、狙い定めたリンのお腹から右に逸れ、無惨にも砂浜に不時着した。
復興の目処は口の中にあるなの。
ちぇ、リンにスイカの種攻撃を仕掛けようとしても、上手く種を飛ばせないなの。
「私にスイカの種を当てたいの? どうぞ、好きな場所に当ててみて?」
黒粒の滑走路をここですよと言わんばかりに、身体をこちらに向けてくる善意100%リン。
スイカの種の的を全力で担う人間を初めて見たなの。「水着だからどこ当てられても問題ないわ」って言ってもそう言う問題じゃないなの。嫌がれなの。
「ぷっ!」
あちゃ~、今度は勢いよく飛びすぎちゃったなの。
リンの頭上を通り越して、こちらに歩み寄っていた者にスイカ種が顔面クラッシュするなの。
「いったあ!? いきなり何するんですかランさん!」
あ、リンよりも的に相応しい人間、マコがやって来たなの。
「格好の的だったからうっかりなの」
「う、うっかり……ま、お二人共お疲れ様ですね。私が申し込んでなんですが、ビーチバレー、無理せず次の機会にでも───」
「ビーチバレーするわ! 体力全・開ッ~~!!!」
スイカを食べ終わったリンは、うさぎもびっくりな跳ね方をする。
ぴょーんて、子供みたいにはしゃいで恥ずかしいなの。体力お化けなの。
あ、ドン引きしているのは私だけじゃない。マコにひっつき虫な、お友達のミキも私以上にドン引きしてるなの。
常識人が居るとなんだかホッとするなの。
「リンがするなら私もするなの」
「良し、決まれば早速バレーしましょ!」
ルンルンとステップを踏んでビーチバレーのコートにinする体力女。
これ以上体力アピールしても何も出ないなの。
「チームは淫乱女とラン。そして私とマコ。文句ないでしょ?」
「文句ないなの。あれ、ちなみにダジャレ女は今日来てないなの?」
チーム振り分けをしたミキにそう尋ねると、ミキは無言で海辺の方に指を指す。その先には、パラソルの下でスピーっと寝ているミキ姉の姿が。
あ~、流石ダジャレに命を賭けている女、モカなの。
口を閉じれば、あっさりマコと互角に渡り合える程に影が薄くなるなの。
その調子で日が沈むまで大人しく寝ているといいなの。
と思った束の間、ミキが姉を起こしに行ったなの。
眠い目を擦るダジャレ女に、ビーチバレーするから審判をして欲しいと頼んでいるなの。おー、グッジョブな判断。
これでダジャレを永久封印なの。
そうして役割分担、簡単なバレーの練習を終えたところで───
「ふふっ……ランちゃん、マコちゃん、ミキちゃん、準備はいいかしら?」
辺り一帯は海にはしゃぎ声を上げる若者ばかり。
しかしここビーチバレーという領域においては、妙な静けさを保っていた。……って、ビーチバレーの始まりってこんな緊張の詰まるようなピリピリ空間だったなの?
ただの有意義な遊び時間のはずなのに怖いなの。
リンの問に私達三人は、こくり……と真剣な表情で頷く。
私は準備とかピンと来ていなかったけど、必殺空気読みで恰も知っている風を装うなの。
サーブ?というコート外からボールを相手コートに打ちこむ最初の権利は、もちろんジャンケン王のリンが勝ち取ったなの。
今ちょうど、闘志をメラメラ燃やして打ち込もうとするところなの。
後頭部を押さえてねとリンが言っていたけど、これはどんな意味が───
「そぉれッ!!!」
リンの掛け声とともに渾身の一撃が炸裂したなの。
私の頭より高く、もちろんネットよりも高く、しかしコート目掛けて打たれたボールは、狙った先のラインギリギリのところに吸い込まれ、点をもぎ取ったなの。
こ、怖!
後頭部を押さえてって、頭を痛いボールから護れってことだったなの……これはビーチバレーじゃなくて最早殺人バレーなの。
リンの抜群な運動神経が娯楽なビーチバレーを破壊してしまったなの。
生まれた小鹿のようにプルプルと震える私に、「絶対当てないから怖がらなくても大丈夫よー」と後ろからリンの声が届くなの。
その信用はしているけれども恐怖は恐怖なの。
「凄いですねランさん! めちゃ良い音鳴ってましたよ!」
と、リンにバレーボールをポンと軽く打って渡しながら、マコは激褒めする。
リンはもうニッコニコでしょうがないなの。
サーブ権のあるチームが点を取り続ければ、サーブ権は相手に渡らないってリンが言っていたけれど、これ、リンが強すぎてサーブで試合が終わってしまうか心配なの。
「でらぁッ!!!」
リンによる全力で放たれるバレーボール。
破裂音にも聞こえてしまう程の音を置き去りにしながら、待ち構えるマコとミキの丁度真ん中に打ち込まれる。
とてもいやらしい位置なの。
でもこの一撃は二度目のサーブ。目が慣れたのか、シュッと着地点に素早く移動したマコが、螺旋を高速に描くボールを見事打ち返す。
「ミキさん!」
「は、はいっ!」
上がったボールをミキがマコに慌ててトスをするなの。
だけど試合はまだ始まったばかり。まだ温まっていないミキのトスは、マコにとってボールを打つベストな位置、その上を一直線に通過する。
そのままボールが場外になると私は踏んでいたなの。
目を離したつもりは無かった、ただ、マコの対応速度が早すぎて、一瞬マコがコート上から消えたように感じたなの。
斜め上をゆくボールの先、まるで既にそこで待ち構えていたかのように、天高く飛躍したマコがスパイクを打ち込んだ。
マコが腐っても警察官であるという風格を、肌で感じ取った瞬間だったなの。




