第37話 お花見を護らねば!後編(ラン視点)
「二番の人が七番の人にぺったんこするなの」
王様になった私が下す命令は、必殺ぺったんこなの。
餅つき大会でした、マコの白いお腹をぺったんこするやつなの。
「ハハッー! 二番はボクだな! ぺったんこってあれだろ、ミキがしてたお腹ぺったんするやつだろ?」
「そうなのー思いっきりぺったんこするなの」
そして七番は。
「なんでまたわたしなんですか!?」
お約束、ぺったんこマコなの。餅=マコは当然の結果なの。
非常食マコなの。
モカは自慢の腕を見せびらかすようにして腕まくりして言うなの。
「任せなッボクにかかれば豪快な音を響かせられるぞ!」
「ぜんっぜん任せられる雰囲気じゃありませんが!?」
マコ、大人しく任せられろなの。
「師匠頑張れー!」
「マコのお腹をぺったんこ出来るなんてずるいわ……お姉ちゃん変わってよ!」
「なんかおもろいなあ、ウチもぺったんこしたいなあ」
「汝の腕前、この邪眼で測ってやろう」
良かったねマコ、誰もマコの心配なんかせず応援してるなの。
マコなら大丈夫だろうと誰もが信頼を置いてるなの。
「行くぞーッ! ぺったんこだあああ!!!」
「うごぶあぁッ!」
マコの真っ白に引き締まったお腹を、モカは豪快ぺったんこを決め込むなの。
ミキのビンタを超えた迫力ある音色を、太鼓のように響かせるなの。
これには周りにいる人達も目を引かれるなの。
「あ……もう、もう許して……」
「良く頑張ったな! 前世は餅だったんじゃないか?」
「慰めになってないですよそれ……」
謎フォローをするモカ。
前世が餅だったマコはお腹を抱えながらひぃひぃ言ってるなの。
どうしたマコ、赤ちゃんでも生まれそうなの?
マコガレイ同様子持ちマコだったなの?
出産おめでとうなの。
「ペぇったんこしたことだしぃ……王様決めるぞお! うち、王様したいなあ!」
王様願望ダダ漏れ鮭×酒カスがまたもや仕切るなの。
おそらくこのおばさんは、グループのリーダーになることに悦を得る系の人間なの。
ちなみに面倒ごとを押し付けられがちな副長はマコに決まってるなの。
王様だーれだの判決はいかに……!
「うぇ~いぃ! うちが王様じゃああ!」
あ、鮭おばが王様なの。三十路の王様なの。
ビール缶をグビっと飲み干した泥酔野郎は、ヨダレを垂らし、両手をワキワキさせながら言うなの。
「さっそくぅ、五番と六番が……ぐへッ、すっぽんぽんにぃ……」
「「「「「「王様だーれだ!!!!!!」」」」」」
「……え?」
王様ゲームをしているイカれたメンバーは、王様になった鮭カスをガン無視してくじを引くなの。
誰もおばさんの命令は受けたくないなの、王様ゲームのルールを破ってまで拒否るなの。
「おや、我のところに赤き印……これが天使のイタズラか……」
ふふふと不気味に笑って呪文を唱えた包帯野郎。要するに王様になったなの。
宇宙人だった頃の銭湯モカと比べて、翻訳出来るのがまだ救いなの。
「我の裁きを下される者よ、熱き魂を震え上がらせ」
「いいからさっさと命令するなの」
この包帯野郎はいちいち呪文を唱えていないと気が済まないお年頃なの。
コホンと咳払いを挟む包帯女は、王様命令をするなの。
「我と六番は運命の野球拳をする! これは歴に刻まれた決定事項なのさ!」
……野球拳って何なの?
「野球拳は、ジャンケンで負けた方が服を脱いでくゲームね!」
「あ、リン、説明ありがとうなの」
そうか、結局ただただジャンケンしたいだけの哀れな人間なの。
脳みその九割はジャンケンで埋め尽くされてるなの。一割は変態なの。
運命とやらの六番は。
「お、六番はウチみたいやで」
リンにジャンケンで勝ってる関西なの。野球拳といい、嫌な予感がするなの。
「ジャンケンは、『ポン』と言ったら出すでいいな?」
「望むところ」
地面に亀裂が入って、空気がピリピリ震えて、雷がゴォッと落ちるエフェクトがかかるなの。いつの日かぶりに見たエフェクトなの。
お互いに構えのポーズから手を繰り出し。
「「最初はグー」《《ポン》》!」
やっぱりなの。
関西は最初はグーって言うタイミングで『ポン』発言して、パーを出したなの。汚い手で勝つ関西のお得意手段なの。
「ちょ、そんな方法が通るのか!?」
「ウチは嘘はついてないで~ちゃんとポン言うたんや。ウチの勝ちや! 服を脱いでもらおうか!」
はっはっはっ~と高笑いする関西、そして漆黒オーラに深みを出しながら、しくしくと服を脱ぐ包帯女。
すっぽんぽんとは言わずとも、結果的に鮭おばが叶いたかった少女の下着姿を拝められたなの。
良かったね変態鮭カス、泣く少女の下着姿を見て喜べなの。
……ま、これも包帯女が言ってた、歴に刻まれた決定事項なの。
始めから敗北は決まってたなの。
「厨二病ちゃん……ファイト!」
リン、必死の慰めは逆に傷つけちゃうなの。
ジャンケンでボコした本人からの無自覚な励ましはキツいなの。もうやめてあげてなの。
「もう飽きてきたあ~どうせうちが王様になっても命令聞いてくれないし~最後の王様誰だ~するよ~」
酒に酔って仕切るしか脳の無い鮭おばさんが、最後とか言ってるなの。
言い出しっぺの本人が飽き出したなの。
いい加減にしてほしいなの。
ラストを飾る王様は……誰だ~! なの。
「あ、わたしが王様ですよ!」
いつも受け身だったマコが王様になっちゃたなの。
最後もマコがボコされる展開になると思ったんだけどなあ、残念なの。
残念雰囲気な中、マコが王様になって大喜びな人間が一人。
「おめでとうマコッ私を指名して一緒に何かしましょ!」
マコ大好きファンクラブなミキなの。
「ミキ、指名はダメなの。番号でランダムで決めるなの」
「ちぇー」
そんなこと言っても、二度目のヒートをしてマコをビンタするオチになるに決まってるなの。
王様になったマコは、先端が赤くなったくじ棒を眺めた後、少し恥じらいながら口にするなの。
「あの……いつものお願いしてもいいですかね」
「命令は鮭おばを除いて絶対なの、好きにお願いするなの」
マコは、お言葉に甘えて……と小さく呟いた後。
「わたしのお腹を撫でて欲しいな……って。三番さんに」
あ~いつものってお腹なでなでだったのなの。
マコにも恥じらいがあったんだなの。
平気で人前で服従ポーズするものだから、警察官で無駄に鍛えられた精神力でどうにかしてると思ってたの。
「三番は私ね! マコちゃんのお腹を撫でられるなんてご褒美よ!」
満面の笑みでそう言ったリンは、すかさずマコの服を捲し立て撫で撫で開始するなの。
はあ、マコはマコでとっても嬉しそうに撫でられてるなの。
あ~さっきぺったんこされた可哀想な餅お腹に癒しを与えてるんだなの。撫でられるのも納得の理由なの。
服従ポーズになって撫でやすくなったマコと、慣れた手つきで撫でるリンに、黙ってない人間がいるなの。
「淫乱女が淫乱なことしてるわ! 私も淫乱する!」
やっぱりこの人、乙女ミキなの。
お腹撫でるのっていんらんだったなの?
いんらんしだした二人に。
「ハハッーボクもお腹撫でるぞ!」
「うちも撫でよかな、試食つまみ食いした仲だし」
「我の圧倒的撫で技をくらうがいい!」
王様ゲームメンバーが集まって撫で撫でタイムなの。
真っ白なお腹に群がる人間……まるで電灯に集まる蛾なの。
……へへ、私も混ざるなの~。
「じゃウチも鰈崎のお腹撫でる~」
お酒を嗜んでた鮭カスが寄って来るなの。
「三十路は混ざるななの。おばさんにお腹撫でられてもマコは嬉しくないなの」
「え、鰈崎、ウチに撫でられたら嬉しいよね?」
「……」
「なんで無言なの!?」
鮭おばはマコをぼっちで場所取りさせる悪い人間なの。
撫でる資格は無いなの。
ん~マコを撫でるのは楽しいけど、なにか物足りないなの。
マコのお腹じゃなくて、脇をこちょこちょくすぐるなの。
「アハッランさんッくすぐらないでッ」
身体をよじらせて喚くマコ。
ふふ、中々良い反応なの。
「な、なんて淫乱! 私もマコをくすぐる!」
「私もマコちゃんくすぐろ~」
私に続いて、マコを撫でていたリンやミキが命令を裏切るようにくすぐりまくるなの。
こうなったらもう止まらないなの。
「撫でたら次はくすぐりかッボクもくすぐりまくるぞ!」
「うちもこちょばしたろ~」
「我の手を恐れるが良い!」
全員がマコをこちょこちょし始めるなの。
涙ちょちょ切れながら笑い転げるマコ。
顔を赤くしたりひぃひぃしたり笑ったりと忙しいなの。
マコの周りには笑顔がいっぱい、虚無なマコだからこそ成し得る満足感なの。
私達のお花見は、桜を見るよりはしゃいで楽しむ、花より団子ならぬ花よりゲームだったなの。
リンの頭にひらっと一枚の桜の花弁が乗っかるなの。
そんなことに気づいてないリンは、純粋な笑顔を咲かせてるなの。
……花を見てないって間違いだったなの。
だって私の周りには、満開の花が咲き誇ってるからなの。




