第20話 誕生日プレゼントを護らねば!後編(ラン視点)
「ちょっとぉうわぁってなによ! へ~ちょうどいい所に居たよ鰈崎。うちのウィンドウショッピングに付き合ってちょうだいな♡」
三十路(二十七+三)警察官のウインクの攻撃!
私とマコに効果抜群だなの!
おばさんのウインク程気持ちの悪いものは無いなの。致命傷なの。
あっさりマコの顔でも見てリセットするなの、はあ~あっさりはやっぱり落ち着くなの。
香水臭いどこかの鮭より百億倍マシなの。
マコは私の視線を気にしつつ、おばさんにもう疲れましたので行けませんとはっきりお断りするなの。
「え~若者は体力無限大なんだから行けるってぇ。ささ、レッツゴー!」
無理やり引っ張ってマコを連れて行こうとする若者じゃない方。
嫌ですと泣きそうな顔をするマコを引き止めるなの。
「ちょっと待つなの」
「ああランさんッ助けてくれるんですね!」
「いや、しっかりおばさんのウィンなんとかに付き合うなの」
「……うぅ」
私はまだマコに贈らなくてはいけないことがあるなの。
私は息を吸って口を開いて言うなの。
「リンの誕生日プレゼント探し、手伝ってくれてありがとうなの」
「……………………………え?」
あっさり顔度が120%になったあっさりは、目尻だけ赤く染まって涙がポロポロするなの。あれ、なんか私したなの?
マコってすぐ泣いちゃうし、原因が分からないから困るなの。
「へえ~誕生日プレゼントっていいねえ。あ、鰈崎はいつ誕生日なんだ?」
「……………………」
抱っこされる猫みたいに、完全に脱力して軟体動物になるマコに驚くおばさん。ちゃんと支えてないと危ないなの、筋力まで三十路なの?
なんかよく分からないけど、私はマコに贈るものがまだあるなの。
手に持っていた白い紙袋を掲げて。
「はい、今日手伝ってくれたお礼なの。受け取って欲しいなの」
「……ふぐッ……ぅ……え、わ、わたしに?」
手で顔を拭って紙袋を受け取ったマコは、紙袋から服を一着出して見てみるなの。
「これは、白いブラウス……最初に試着したやつです!」
「そうなの、とてもマコに似合ってたからプレゼントなの」
リンの誕生日は気分が良いから奮発してやったなの。
さあ、喜びのあまりぴょんぴょん跳ねた後にカルパス寄越すなの。
白いブラウスをしまった後、私をまじまじと見たかと思えば、両手をガバッと大の字にして抱きついて来るなの。
「ふぐええええええええッランざんッー!!!」
「わわっ危ないなのっ……もうもうなの」
大の大人が泣いて喜ぶなんでどうかしてるなの。
けど……マコってあっさりしてる割には感情豊かだし、暖かくて心地良いなの。
仕方ないからくっついてやるなの。
背中をよしよしと撫でてる私に、空気を読めない老人が言うなの。
「うちも混ざりたい」
「黙れなの」
マコとのよしよしタイムを邪魔する者はリン以外誰であっても許さないなの。
もう少し……撫でてやるなの。
◇◇◇
「もうっ遅いよランちゃん! 心配したんだからね!」
目に薄く涙を浮かべてぷんぷん怒るリン。
まあまあいいじゃないですかとお客さんがスケットするなの。
マコを撫でていたら五時を過ぎてキッチンカー営業に遅刻しちゃったなの。
「……ごめんなの、次は時間に気をつけるなの」
「そうじゃないのっ! 私は……本当はランちゃんとお店回りたかったのに……」
リンがお客さんの前でいじけるのは珍しいなの。泣くのを必死に堪えてるなの。……なんだか最近珍しいリンをよく見る気がするなの。
「これ……た、誕生日プレゼントなの……ッ」
……あれ、なんか私まで涙が出てきちゃったなの。マコといいリンまで泣くからつられちゃったなの?
ああ、違うなの。
誕生日なのに、リンを泣かせちゃったからなの。
二人で一緒にショッピングすればいいものを、私は一人でマコと楽しんじゃった酷い人間なの。
「え、誕生日? ……私の誕生日って今日だったっけ? あ、完全に忘れてたわ! ご、ごめんねランちゃん! 泣かないでッ……」
二人して泣いてるのは初めてなの。あれ、これってもしかして喧嘩なの?
私はリンと仲直りしたいなの、友情を護らねばなの。
視線に気づいたリンは立ち上がってシェイクを作って渡すなの。
「ああ、ごめんなさいねお客さん……こちら"おかえりなさいませご主人様"ですよ」
「いやいや、こちらこそこんな時に」
お客さんの手の新発売のシェイク。
私は今日このシェイクを頼んだ二人組の女の子を思い出したなの。仲睦まじい光景を。
キッチンカーにある引き出しからストローを二本出して、丁寧に曲げて作り上げるなの。
私は未だに滴り落ちる涙を拭って、お客さんの対応を終えたリンに言うなの。
「リン、私とシェイクを飲み合いっこするなの」
「……ランちゃん……それは?」
「えと、ハ、ハートのストローを作ってみたなの。テレビで仲良しな二人がこれ使って飲むってやってたなの。だから……したいなの」
涙で潤っていたリンの瞳がキラッと光った気がしたなの。
涙のせいなのか、顔が赤くなっているリンは、新発売のシェイクと同じやつを作ってハートストローを差し込むなの。
立て札を一時的に裏返して休業中にしたリンは、私と一緒にキッチンカーの前に置いている組み立て式の椅子に座るなの。
「ふふっとても素敵な誕生日プレゼントね」
「これは誕生日プレゼントじゃないなの。それにまだリン袋開けてないなの」
「今開けちゃったら、私の気持ちがこれ以上持たないわ。後で開けようかな~」
「……まあ、好きにすればいいなの」
二人で飲むシェイクはとても美味しい味がしたなの。
ただ、マシュマロがストローにつっかえて飲みずらかったから、改善が必要なの。シェイクの試し飲みは、こうやってまた二人で飲みたいなの。
二月の冬の空は、まだ五時頃なのに、星がいくつか見えて綺麗なの。
リンの、夕暮れの色が反射する瞳もまた……
「……ランちゃん。誕生日プレゼント、ありがとう! とっても嬉しいわ!」




