第17話 おじさんを護らねば!後編(リン視点)
一人で覚悟の抱きを燃やす私に、背後から声がかけられえる。
「これ一つ頼みたいんだけど」
はっお客さんの声!
振り向いた先にいるお客さんは、全身黒い服を着て、銀色のチャラチャラした装飾を纏った大型な強面大学生。
おまけに額から傷跡がチラ見えする!
威圧感ある風貌に思わず私は仰け反ってしまったわ。
眩しい……!
この輝き、映画スターになれそうな大学生ね!
私の目に狂いはないわ!
そんな映画スターな大学生はギロっと目をランちゃんに向ける。
「ん? この声は……」
あ、映画スターにおじさんラジオは好みじゃないのかしら?
「リアル逆バ美肉おじさんミュミュちゃんじゃないか!」
バ美肉!
バーチャル美少女受肉の略、外見は少女頭脳は別人なVTuberのことね。
「リアル逆?」
バ美肉の前の意味はよく分からないわ。
疑問な私に映画スターは嬉々とした表情をしながら熱く語り出す。
「知らないなんて勿体ない! リアル逆バ美肉おじさんは、前世が令嬢なおじさんが美少女アバターを使用することで、リアル逆バ美肉おじさんのバ美肉おじさんVTuberなミュミュちゃんって訳だ!」
……え、つまり、どうゆう事?
とりあえず面白い設定なおじさんということはわかったわ。
映画スターは面白い逸材を見つけるのにも優れているのね、流石だわ!
映画スターの熱狂的セリフに、ランちゃんが疑問を投げかける。
「ばび肉ってなんなの? 美味しいなの?」
つらつら喋る勢いのまま、バ美肉を愛する男は止まらない!
「バ美肉ってんはあれだ、中身が」
「ああああダメッダメよお客さん! そこは美味しいって言わなくちゃいけないの!」
手をブンブン振ってお客さんを威嚇するわ!
私とランちゃんを交互に見ながら、そこまで怒んなくても……と少し申し訳なさそうにする映画スターは渋々口にするわ。
「バ美肉は、美味しい?」
「バ美肉は美味しい! さあ、もう一度言うのよ!」
「バ美肉は美味しい!」
「そう! バ美肉は美味しい!」
大学の外でバ美肉美味しいを連呼するのは恥ずかしいけど、これもランちゃんの無垢を護る為!
バ美肉バンザイ!
そんなバ美肉美味しいコールをする二人に、ランちゃんは納得して笑顔で言うわ。
「へ~美味しいなの。じゃあキッチンカーフェスで売り出すメニューをバ美肉にすればいいなの、これはとても名案なの」
名案というより迷案ね。おじさんメニュー爆誕よ。
まあ、これで世界は救われたわね!
一件落着っと!
「という訳でお客さん、はい、贅沢三昧ざむらいですよ~」
「ぜんざいトーストなの」
お客さんは頼んだぜんざい入りサンドイッチを受け取ると、バ美肉ライフを楽しんで! と言い残して大学の校舎に行ってしまったわ。
映画スターを見送る私達。バ美肉ライフ……と呟く私に、ランちゃんは無垢な瞳で。
「リン、バ美肉美味しいんだったら一回食べてみたいなの」
とんでもないことを言い出したわ!
これはバ美肉の巧みな罠、とことんやられたわ!
私はお客さんにやったように、またも両手をブンブンと振りながら慌てふためく。
「なな!? 食べちゃダメよランちゃん!」
「え、美味しいんじゃないなの?」
「とくかく食べちゃダメよ! 食べるんだったら先に私から……いや、何考えてるの私はッもう、もうもう!」
私はランちゃんのお口に、おまけで振舞ったバナナ春巻きで余ったカットバナナを放り込むわ。
バナナ美味しいなの~と微笑むランちゃん。誘導作戦大成功よ。
それにしてもバ美肉……なんて恐ろしいのかしら。
ランちゃんの前でバ美肉は禁止ワードね。
そう肝に銘じた私は、今日も今日とてキッチンカー営業よ!
バナナ春巻きをせっせと錬成するキッチンカー。
BGMとして流れていたVTuber配信は、バ美肉ライフを楽しんでですわ~とおじさんの声で配信終了した。




