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純粋無垢を護らねば!〜リン×ラン×キッチンカー日常〜  作者: おりみみ


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第16話 おじさんを護らねば!前編(リン視点)

「バナナのお布団三セットのやつを」


「はいこちら、"バナナのお布団"ですよ~」


 三つの春巻きが入ったバナナイラスト付きの袋を抱えて、お客さんはありがとうございますと言いながら去っていくわ。


 今日は昨日と同様に、大学の広場でキッチンカー営業中。


 元々ランちゃんの為に作ったバナナ入りのデザート春巻き、バナナのお布団を試しに売り出してみたら、思いの外好評のようでポンポン売れてくわ。


 バナナ春巻きを試食したランちゃんの、


「もっと軽く揚げて、出来上がったバナナ春巻きにチョコホイップをデコったら完璧なの!」


 と目を星にして言った助言を参考にしているわ。

 ちなみに袋のバナナの可愛いイラストも、ランちゃんがデザインしたもの。

 流石ランちゃんだわ!


 そんなランちゃんは今、バナナ春巻きを作りながらラジオを聞いてるわ。


 バナナを春巻きの皮に詰めながらランちゃんはボソッと呟く。


「おじさんの料理マナー講座は為になるなの」


 そう、ランちゃんが聞いてるラジオはおじさん!


 とても気になるわ……確かにラジオといえばおじさんが喋ってるイメージはあるけれど……ランちゃんが熱心に聞いてるおじさんが気になる……


 大学生のお客さんが一人やって来て。


「バナナのお布団……? 二をセットで」


 お客さんが指差すメニューの、バナナ春巻きの笑顔なイラストが、なんだかおじさんの笑顔に見えてきたわ。


「……おじさん」


「ええ、おじさんじゃないです、俺は大学生ですよ」


 おじさんに気を取られた私は、お客さんの言葉が右耳から左耳へ流れて行き貫通する!


 私は目をぱちくり。

 お客さんさんが、ぼーとしてた私にガッカリしてるわ。

 お客さんに弁解しなくては!


「ごめんなさいね、なんだか(春巻きのイラストが)おじさんに見えちゃって。あ、(イラストの色が)ハゲちゃってて余計におじさんに見えて来たわ!」


 お客さんは私の言葉が心に届いたのか、胸を抑えてフルフル震えているわ。

 言葉が出ない程にほっとしたのね!


 それにしても、そこまでこのランちゃんのイラストに愛着があったなんて……ここはサービス精神よ!


「お客さんに特別増量サービスしちゃうわ!」


「俺の髪の増量サービスなんていいですから! これ以上おじさんいじりしないでくださいよ!」


「おじさ、あ、間違えた、お客さん、はいこちら"バナナのお布団二セット+おまけ"ですよ~」


 先生をお母さんって言っちゃう感覚で、お客さんをおじさんって言っちゃったわ。"きゃく"と"じ"しか違わないし仕方ないわよね。


 春巻きを受け取ったおじ、お客さんは、涙混じりにお礼を言って走って行っちゃったわ。


 泣くほど嬉しいなんて……感激ね!


 よしよし、お客さんの足が途絶えたことだし。


「ランちゃんランちゃん、そのラジオ何聞いてるの?」


 おじさんラジオ詰問タイムよ!


 ランちゃんは春巻きから私に顔を向けてキョトンとしてるわ。


「何聞いてるって……おじさんラジオなの」


「そのおじさんラジオの内容が気になるのよ!」


 無垢なランちゃんにおじさんラジオはちょっと危ないわ。

 妙なワードを覚えてしまったら取り返しがつかないもの。


 少しムッとする私にランちゃんは、ラジオが流れているスマホの画面を見せて来たわ。


「お姫様の姿なおじさんが、料理したり食べ方のマナーを教えてくれてるなの。美味しいですわ~って言ってるだけでなんだか面白いなの」


 スマホの画面で動く可愛いお姫様アバター。口を動かす度に美味しいですわ~なおじさんボイスを繰り出すこれは……


 VTuber!


 ランちゃんが聞いていたこれは、ラジオじゃなくて生配信中のお姫様なおじさんVTuberだったのね。


 ランちゃんがおじさんの説明をし出すわ。


「餅付き大会の後、ミキがこのおじさんを教えてくれたなの。声がおじさんなだけで可愛いお姫様なのに、皆しておじさんって愛称で呼んでるなの。だからおじさんって私もしょうがなく呼んでるなの。おじさんですわ~なの」


 ミキちゃん……マコちゃん以外に好きな物があったのね!


 ん?

 もしかしてランちゃん。


「おじさんって本当はお姫様?」


「そうに決まってるなの、毎回自己紹介でお姫様名乗ってるなの」


「ランちゃん、VTuberって知ってる?」


 ランちゃんは首を傾げて。


「ブイ? なにそれなの」


 やっぱりそうだわ!

 ランちゃんはおじさんを実際にいるお姫様だと勘違いしてるんだわ!


 遊園地の着ぐるみの中身が、職員もとい人間なことを知らない子供時代……その感覚に近いあの現象が今、ランちゃん×VTuberで起きてるのね!


 ……護らなくては。

 ランちゃんのおじさんVTuberの夢を護らねば!

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