第13話 餅つき大会を護らねば!前編(リン視点)
「ぺったんこしたいなの」
「ぺったんこ」
「私のお腹をぺったんこしても意味無いなの」
ランちゃんのお腹を軽くパンチする私。
ランちゃんはやれやれとあしらいながら私の手をどかすわ。
私達は餅つき大会の人に呼ばれて、餅つき大会の会場で営業中。
と言っても、餅つきでぺったんこした餅を使って色々作るボランティアも兼ねているわ。
餡子やきな粉諸々の材料は市から支給されているからじゃんじゃん作れるわよ!
「餡子をグツグツしながらかき混ぜるのに疲れたなの。お正月に皆楽しそうにぺったんこしてる中、何で私はぐるぐるしてるなの」
「ぐるぐる」
「リンが身体を回転させても意味無いなの」
「ぺったんこ」
「そのくだりはもうしたなの」
「まあ選手交代ね」
ランちゃんに変わって餡子をぐるぐるするわ。
これが地味に肩と腕にくるのよね。
「ランちゃん、休み次いでに餅つき楽しんでくれば?」
「私はリンとぺったんこしたいなの」
「ふふっ可愛いわねランちゃん」
照れたランちゃんが私のお腹をぺったんこしてくるわ。
そんなランちゃんに味見の餡子をフーフーして。
「はいあーんよ」
ランちゃんはちょっと照れくさそうにしながら、その可愛いお口を開けるわ。
「あーん……うん、美味しいなの。器に移してぜんざい配りするなの~」
「あ、全部はよそわなくていいわよ、ちょっと試したい事があって」
「なになになの」
「食パンの上にぜんざいを乗せて焼いた、ぜんざいトーストよ!」
「美味しそうなの! バターとかも合いそうなの。あ~ぜんざいトーストを思い浮かべたらお腹と背中がぺったんこしそうなの~」
お腹をぐぎゅうと鳴らすランちゃんも愛らしいわね。
「名ずけて贅沢三昧ざむらいよ」
「名ずけ無くていいなの、ぜんざいトーストでいいなの」
トレーに並べたぜんざいを運ぶ私達は、餅つきの休憩中のお客さんやぺったんこ真っ最中のお客さんに声をかけてぜんざい配りをする。
子供からお年寄りまで幅広い層で楽しめるこの大会はとても賑やか。
ぜんざいを受け取って嬉しそうにする姿に、私達も嬉しくなっちゃうわ。
そんなお客さんの中に、一際目立つグループ。
「オラオラオラオラアアァッハハーッ!!!」
「ひぃッ途中で笑い声を挟まないでよぉ! ただでさえ合わせるのに一苦労なのぉ!」
轟音を叩き出す銭湯姉妹達が餅つきをしていた!
大晦日銭湯で出会った姉の及川モカちゃんと妹の及川ミキちゃんに、今日六日開催の餅つき大会に是非来て欲しいとお願いしておいたの。
「餅をぶっ叩くのはボクにお任せあれ」と告げていた事もあって、これはぺったんこの域を超えた神業……流石だわ!
「リン、あいつらはほっとくなの、別世界にいる化け物なの」
「師匠ー!」
「「師匠!?」」
師匠が元々明るい顔をさらにパッとさせて言うわ。
「あ、あけおめさん~。ボクのことを師匠って呼ぶなんて変わってるね」
「おまえが言うななの」
振り上げていた杵を肩に置きニカッと笑う師匠が神々しくて眩しいわ。
紙吹雪を上からパラパラ撒いてアッパレしたいくらいよ。
「鰈崎さんはまだ来てないの?」
「お昼休憩の間に寄ってくとは聞いてたけど、まだ来てないのよね」
「……ふーん」
「マコちゃんにそんな会いたかったんだ~」
「ちちち違うしッ! 会いたいなんて思うわけないでしょ!」
緊張しているのか顔を真っ赤にしてそう言うわ。
おかしいわね、マコちゃんも餅つき大会に参加するって言った途端に嬉しそうにしてたはずなんだけどな~。
「安心しろなの、どうせ突拍子も無く現れるなの」
そんな私たちの後ろから、あっさりパトカーが近づいて来る……!
「あ、皆さんこんにちはー」
「わ! 突拍子も無く現れるななの!」
「鮭川ちゃんもいまーす」
「おばさんは黙れなの、ドキドキさせられないオバンちゃんなの」
パトカーの窓から覗くマコちゃんと鮭川ちゃん。
助手席に座る鮭川ちゃんはマコちゃんのバッグからカルパスを取り出しモグモグしてるわ。
「ええ!? お姉さん警察だったの!?」
呆気にとられるミキちゃん。
「ミキさんあけましておめでとうです。へへ~どうですかわたしの警察姿」
興奮気味な顔を両手で隠し。
「べべ、別にどうってことはないわ。ただその……かっこいいんじゃない?」
マコちゃんをまじまじと手の隙間から見つめるその姿は乙女そのものだわ!
この漂うふわふわ感、もしかしてミキちゃん……
「マコちゃん好きなの?」




